
3月28日、参議院議員会館で、「直ちに人体に影響がでるレベルではありません」に関する公開質問書についての厚生労働省との交渉と記者会見が行われ、参加しました。この公開質問書は168団体が連名で提出したものです。
http://www.liveinpeace925.com/action/gov_q110324.htm
交渉の結果は、恐るべき無責任と官僚主義によって多くの人々が被曝を強要され命が脅かされているという一語に尽きます。
「直ちに・・・」の質問書を福島瑞穂事務所を通じて提出してもらったところ、「これは空気についてですか、水についてですか、食品についてですか、土壌についてですか」などと聞かれたそうです。その対象によって回答する省が違うというのです。住民の受ける被曝はトータルなものなのでこれだと絞ることはできないと反論したそうですが、それなら受け付ける事はできないと突き返され、仕方なく食品に限定して提出先が厚生労働省になったそうです。住民の健康と命を守ることを最優先し総力を挙げて取り組むのではなく、この重大な事態を官僚の縦割り組織に当てはめて処理しようという体質は恐ろしいことです。
(1)「直ちに人体に影響が出るレベル」がどういうレベルか、厚労省としての見解ははっきしていない。
まず、「ただちに影響がでるレベル」とはどのようなレベルでどういう影響なのか質問しましたが、ああだこうだといいながら結局「厚生労働省としては直ちに影響がでるレベルがどういうレベルかはっきりしていない」と認めました。(担当者は個人的見解として100ミリシーベルトと言いましたが、これはガンの発生リスクが高まるレベルであって、急性障害がでるレベルではありません。被曝と障害の関係についてなにも分かっていないのではないかと疑念を持ちました。)
つまり、厚生労働省として何も具体的に放射線レベルを検討しないで、「直ちに人体に影響を与えるレベルでない」と繰り返しているということです。
(2)集団被曝線量は知らない。
さらに驚いたのは、晩発性障害、つまり「直ちに影響が出ない」被害を検討する上での指標となるICRPのリスク評価、「20人シーベルトで一人のガン死(1ミリシーベルトを2万人が被曝すると一人がガン死する、2ミリシーベルトなら1万人に一人)」という集団被曝線量を知らないと答えたことです。これを知らずにどうして「直ちに影響が出るレベルではない」などと繰り返してきたのか、信じがたいことです。
(3)現行の食品の暫定基準値は、1年で17ミリシーベルトもの被曝になる。
食品の放射能汚染に関する暫定基準について、全身被曝に換算してヨウ素が年間2ミリシーベルトとされているわけですが、ある野菜を食べた場合、ヨウ素だけが付着しているということは考えにくく、またさまざまな食物を口にすることになり、セシウムを追加すると年間7ミリシーベルト、さらにウランやプルトニウムを追加すると年間17ミリシーベルトになります。放射性物質の影響は合算されることが必要です。
ヨウ素年間2ミリシーベルトは他の元素も含めて結局17ミリシーベルトまで食べてよいとしているのが今の暫定基準であるということを認めざるを得ませんでした。
(4)食品の暫定基準値は、後になって健康影響がでるかも知れない。
曖昧な表現でしたが、全体として、後になって健康影響が出ないとは言えませんでした。担当者は集団被曝線量のことなどを知らなかったので、急性障害と晩発性障害の違いなどが理解させておらず、暫定基準が健康影響がでないとは言えなかったのです。
このような極めて緩すぎる暫定基準をさらに2倍~10倍緩和しようというのが最近の動きです。
28日の食品安全委員会ではヨウ素は現状維持することになりましたが、セシウムは先送りです。緩和反対と「基準を大幅に下げろ」という声が必要です。
※ヨウ素は現状維持 野菜や水の安全基準 食品安全委(朝日新聞)
http://www.asahi.com/national/update/0328/TKY201103280379.html
(5)内部被曝の規制を決めるときに外部被曝を配慮しているかどうかは「わからない」。
放射能に対する被曝の限度1ミリシーベルトの規制についてどこが責任を負うのかが質問されました。外部被曝もあり、内部被曝もあります。被曝は水もあり、牛乳もあり、野菜もあり、空気や土壌からもあります。厚生労働省が内部被曝の規制を決めるときに外部被曝を配慮しているかどうかは「わからない」。さらにその被曝規制の全体を統括するのはどこなのか聞きましたが、原子力安全委員会などとわけのわからないことを言って、結局答えられませんでした。
マスコミはドイツテレビ、CNN、ウォールストリートジャーナルなど海外メディアばっかりで日本は読売新聞と週間金曜日だけでした。ある参加者は海外メディアから「なぜNHKは来ないのか」と質問されたそうです。
今回厚生労働省から出てきたのは医薬食品局食品安全部の課長補佐という肩書きの人でしたが、今回の回答の恐るべき無責任は決して彼自身の問題ではなく、厚生労働省全体、さらには政府や官房全体の問題だと強く感じました。
「こんな政府に任せていたら国民は殺されてしまう」と真剣に思いました。
(ハンマー)