劇場でひとりごちてみる。

職業、ライター。趣味、観劇。というわけで、芝居の感想なぞをつれづれなるままに綴ってみました。

劇団ダンダンブエノ「砂利」スパイラルホール

2007-07-22 | ストレートプレイ
三津五郎がダンダンブエノに!? えっ、本谷有希子が脚本家で演出が倉持裕!? こりゃみなきゃだわ、と勇んで出かけたスパイラルホール。
……まず、会場がさ、観にくいよ。後方十列くらいは段差があるからいいけれど、私はセンターあたりだったので、ステージの下方はまったく見えず。ってことは、タイトルになった砂利もまったく見えず。え~っ?
しかも、私の前の席の女子(たぶん、彼女も見えなかったんだと思う)、前のめりになってみたり、横になったりと、もうあっちやこっちや動きまくって、観にくいのなんの。
しかも、途中で携帯電話がなったりして、結構、環境的にひどかった……。

これでもまあ、芝居がよければ全然いいのだけれど……あれ? あれれ? って感じでした。
なんだか、三津五郎さんちょっと気負ってる? なんだか芝居が自然じゃなくて気になりましたよ。
途中、片桐はいりさんが出てきてくらいからは、さすがおもしろくなっていったんだけれど、冒頭がすごくたらたらとしていて、ちょっと芝居に入り込むのが難しかった。
本谷有希子のホンも、思ったほどよくない。途中まではよかったと思う。イジメ、自分がやったといい続けているけれど、どうやら弟がやったことを自分のやったことだと思い込んでいるらしい、とか、なんとなく三津五郎さんの役の異常性が見えてきて、ちょっとゾクり。
しかも、義理姉(田中美里の姉という設定)がまったくトラウマを抱えていないことで、逆におかしなことになっていくあたりは、本谷っぽい、イヤ~なムードが漂って、どうなるのか楽しみだったんだけれど、その後の展開がマズイ。
だって、三津五郎が自分で「俺みたいな中身が空っぽの人間が~」とかいうシーン。それって、本人の口から観客に言うのって反則じゃない? それって、観客に気づかせてナンボじゃない? っていうか、観客がまずはそこに気づくくらいまで三津五郎のキャラクターを書き込んでおかないといけなかったんじゃない? あそこでああ言わせたことで、演劇って「そういうこと」になっちゃう場なわけだから、狡いよね。

本当だったら、弟の過去のトラウマを自分のものだと思い込む男→そのことに困惑する弟→それが弟の実体験だったことを誌って驚く妻(もしくは同居人たち)→なぜ?→男にはなにか自分を守るトラウマが必要だった→その理由は?→じつは中身が空っぽだったことを知っていて苦悩していた……っていうところまでの流れが必要なのに、間の経過をまったくすっ飛ばしてしまってたもん。
なんだろう、書きながら先をいそいでしまったんだろうか? もう、そうとしか思えない。
設定や、プロットとしては面白かったし、本谷ならそれくらい書けそうなだけに残念。ほんとに。

ダンダンブエノ、年に1度っきりだから楽しみにしているんだけれど、「砦」と今回と、ちょっとハズしてる。
次回のヒットを祈ります。

阿佐ケ谷スパイダース「少女とガソリン」ザ・スズナリ

2007-07-02 | 小劇場
開演15分前に劇場に着くと、当日券を求める人の列、列、列……。
この光景だけでも、いま長塚圭史さん、そして阿佐スパがいかに注目を集めているかがよくわかります。
1か月のロングラン公演とはいっても、スズナリですからねぇ……。
なぜこのタイミングでスズナリなのか、観るまではよくわかりませんでしたが。

スズナリに一歩足を踏み入れて、まず驚いたのは装飾。
入口の看板から不穏な雰囲気を漂わせてはいたけれど、真っ赤な装飾の階段には度肝をぬかれました。

物語の舞台は、寂れた田舎町・櫛田。
じつはこの街は、歴史的に周辺から差別を受け続けてきた場所。
そんな街に、老人向けのリゾート開発の手が入ることになり、櫛田で酒を造り続けていた『櫛田酒造』が閉鎖となった。
『櫛田酒造』の造る酒『真実(まこと)』は、酔うためだけに造られたような三流の酒。
しかし、そこで働いていた男たちは、労働者(プロレタリア)たちの疲弊した心を慰めるための酒を造ることに誇りを抱いていた。
リゾート開発を中止させ、櫛田酒造の復活を目指す彼らは、そのオープニングレセレモニーに、プロレタリアのアイドルとして応援していたリポリンが出演することを知る。
リポリン、そしてプロレタリアの魂、櫛田の心を守るため、リポリン奪取を企てるが……。

長塚さんらしい、暗くていや~な空気が漂う世界。
最初は、男たちの櫛田酒造や『真実』への強い思い入れからの開発計画への反対運動を描いているのかと思っていたけれど、それが次第に差別、そしてプロレタリア主義、圧制の方向へと向かっていく。
とはいえ、それを説教めいた方向へともっていかずに、ただただ暴走してゆく彼らの姿を綴っていくのが長塚流だ。
徐々に悲惨な状況へと加速してゆくなか、リポリンの異質感がいい。
下宮里穂子さん、これが初舞台だとか。
これだけ小劇場的な役者を集めながら、何にも染まっていない彼女をキャスティングしたセンスに脱帽。
とくに一本調子な「ありがとうございます」が最高でした。

あと、中村まことさん、イケテツさん、中山祐一朗さんら、小劇場の個性派役者さんたちがいっぱい出てるだけに、ついつい彼らの面白さを前面に出したくなるものだと思うんだけど、今回はそういう遊びがなくてシンプルにストーリーを描いていたのが良かったです。
ま、スズナリだから、2時間半が限界、っていう言い方もあるけど(笑)。

あと、長塚さんの作品って、悲惨な世界のなかにどこかロマンシズムを感じさせるんだけど、これまでそこにちょっと甘ったるい感じがあったと思う。
『LAST SHOW』での永作さんが産んだ市川しんぺーさん(わからない人、ごめんなさい)しかり、ね。
なんというか、最後の最後に悲惨な世界を放り投げられない優しさというか。
今回は、ロマンシズムを感じさせながらも甘さがなくなって、もう少し引いた目線で世界を描いている感じ。
長塚さん、すごいなぁ~。おもしろかったす。

そうそう、書き忘れていたけれど、犬山イヌコさんをああいう役で使うのも新鮮だった。
やっぱりうまい役者さんなんだな、ということを実感。

関ジャニ∞(エイト)『えっ!ホンマ?ビックリ!! TOUR 2007』仙台・グランディ21

2007-07-02 | お芝居以外
エッ!? 観劇ブログじゃないかって?
ええ、そうなんですけれど、楽しかったんで少しだけ書かせてください。
これがね、ちゃんとエンターテイメントなんですから。

いやぁ、素直に楽しかったんですよ、これが。
日本三景(丸ちゃん的にいうと「日本大三景」ね。笑)の松島に行ってみたくて、旅行ついでなら一緒に付き合って観に行ってもいいよ~、くらいの気持ちで行ったくせに、気づけばうちわ買って、思いきり振ってました、私。

いやね、ジャニーズって、ただのアイドルのコンサートと舐めたらあきまへんで。ホンマすごいんですわ。
なにがすごいって、とことん観客を楽しませる演出がなされてますの。
例えば、通常のコンサートって、ステージに近い席は盛り上がれるけれど、ステージから遠い、たとえばスタンド席のような場所になると、スクリーンでしかアーティストを確認できないという寂しい状況に陥るワケです。
しかし、ジャニーズのすごいところは、会場のセットも、必ずどの席でも必ず一度は肉眼で彼らを見られるようにできているんです。
ディズニーランドに行って、ミッキーマウスに会うとなんか妙に盛り上がる気持ちになるのと同じで、せっかくコンサートに行ったんだったら、歌声だけじゃなくて、その姿を見たいっていうのが心情だと思う。
アリーナ席だってスタンドだって、払っている金額は一緒なんだしさ。
それが、取れたチケットの座席の運の善し悪しだけに左右されるのは、あまりに寂しい。
そういう、ファン心理(というかファンでなくても)をちゃんと汲み取ってくれていると思います。

てなことで、関ジャニです。
颯爽とバイクで登場した彼らですが、なんと我々の席、中央のステージからはえらい遠いけれど、アリーナの一番はじっこ、アリーナ席を取り囲む花道(っていうんだろうか)の真横で、目の前をバイクで走る、という状況に大興奮。
しかも、大倉くんがちょうど我々の前あたりで止まって、手を振るではないですか。
ああ、これがキュン死★ってやつかしらん。
この後も、なぜだか大倉くんがよく前を通る場所で、その美姿を目の前で拝見できて、眼福。
コンサート後半になると、疲労のピークなのかボーッとしてきている様子なのが見て取れる感じに。でも、それでも曲が流れればちゃんと振りをやっていて、そんな頑張りっこな感じが好印象でした。

エイトレンジャーのコントも、なかなかおもしろかった。
シメのセリフを噛んでしまい、グダグダのまま「ありがとう。」に突入しようとした横山くんに、会場中が「え~!?」と大ブーイング。で、曲を止めて、突如、兵隊さんコントなるものがスタート。
これ、隊長=横山君の投げ掛けるお題に対して、それぞれが「自分は~であります」って答えるという流れなのだけど、「結婚したらヨメはんにしてもらいたいこと」と「子供が産まれたら付けたい名前」というのが今回のテーマ。
個人的には、村上君の「娘が生まれたら、カエデとつけたい」というのが大ヒット。名字でばかり呼ばれてきたから、っていう理由もよかった。あとは、大倉くんの「子作りする気はありません」もおもしろかったけどね。

あと、特筆すべきは渋谷くんの歌のうまさ。音がちゃんと取れてる、とかそういうレベルじゃなく、本当にしっかり訓練された厚みのある声で歌い上げる。
いや、デビューが演歌だってのも頷ける。演歌を歌わせてもブレのない、いい声なんですの。
これにはびっくり&感心。アイドル=歌は下手でも愛嬌で勝負、みたいな時代はもう終わったのね~。

なんかさ、みんなすごく楽しそうだし、お客さんを楽しませようっていう気持ちが溢れてて、そういうところがすごくいいな、としみじみ。
それがエンターテインメントの基本、だからね。
えてしてコンサートって、アーティスト自身がやりたいことをやる、自己満足の場に陥りがちなんだけど、彼らにはそれがなくて本当にすごい。

ちょっと前まで、「アイドルなんて…」って思っていた私だけど、いや、いまのアイドルはすごいですよ。ほんと。
楽しんで楽しんで、騒いで踊って、心地いい疲労感とともに会場をあとにできました。
ついでに、会場から仙台駅に戻るシャトルバスも、びっくりするぐらいスムーズにシステム化されていたのも立派。
えっと、ホンマビックリしまくりの今回。いやぁ、関ジャニ、かわいいし楽しいしかっこよかった~。また、行きたいっす。