リンアイの高知日記

高知での生活をつれづれと…

○梨木香歩『村田エフェンディ滞土録』角川書店

2014年02月02日 | 読書&映画日記
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 第1次世界大戦前、若手研究者としてトルコに留学した「村田」の留学記。イギリス人の未亡人が経営する下宿に滞在し、同じくトルコに留学しているドイツ人やギリシア人との交流や、召使(ムスリム)とのやりとりなどが淡々と綴られている小説です。サラマンダーの妖精(?)みたいなものもちょっと出てきたりしてファンタジーっぽい情景も描かれていますが、当時のトルコの雰囲気を反映してか、全然不自然な感じがしません。

 第1次世界大戦が始まって皆様々な運命に分かれて行ってしまうのですが、一番最後、トルコから日本の村田に届けられたオウム(下宿で飼われてた)が一言「友よ」としゃべったのを聞いて、村田が留学していた下宿やそこの人々を一瞬にして思い出す、という場面がとても感動してしまいました。以前上海で購入した洗剤を使った時のことをブログに書いたのですが、思い出というものは写真やビデオよりも、このような五感に訴えられた時の方が鮮やかに甦るものなんですよね…

 結びの文言が「これが私の芯なる物語」 
 長い人生の中でたった数年(私の場合はたったの2年)の留学が自分の「芯」となる。
 これもその通りだな…と思います。帰国してからすでに十数年経ってしまいましたが、自分の根っこ(ルーツ?)が何時だったかと問われれば、上海留学時代だと答えると思います。

 「国とは一体何なのだろう」国も文化も宗教も違う人たちがお互いを思いやる姿は古今東西、今現在でも決して失われてはいないはずで、そこを忘れてはいけないと感じました。