とりあず、この夏の北極圏 (sub-arctic) での活動報告は前回の記事で終わりです。
この記事は、番外編として今回の研究活動中に感じた事を幾つか書きます。
雑感1
今回の研究活動は、ケベック人と一緒に仕事をする始めての機会だった。
うちの研究室は基本的に「完全自己裁量制」で運営されている。つまり、すべて個人の責任にまかされている形となっていて、さらに同じ研究室内に「似た研究」をやっている人というのがいないため「誰かと一緒に仕事する」機会というのはこの一年と数ヶ月の間一度も無かった。
で、今回始めてケベック人の皆さんと「チームで」仕事する事になったのだけれど
仕事、しにくい
「何がどうやりづらいのか?」をはっきりと説明できるほど周りを観察する余裕は無かったので、上手く解説できないのがもどかしいけれど、2週間を通して個人的に非常に動きづらかった。
僕がフランス語が全くわからない、というのも大きな原因の一つなのだけれど、それ以上に仕事に対する姿勢と言うか、物事の優先順位の付け方が日本人ともアメリカ人とも微妙に違うので、どこかでいつもかみ合っていなかった気がする。
個人的な感覚で言うと「合理主義」の権化のアメリカ人の方がまだ理解しやすかった気がする。
雑感2
今回、僕のアシスタントを務めてくれたトミー君だけれど、物凄く優秀でとても助かった。
彼の英語力はかなり低くて、所々コミュニケーションを取りづらくてイライラする事もあったのだけれど、きらりと光る人柄の良さと、おそらく1000人に1人というレベルの頭の良さですべてをカバーしてくれた。特に素晴らしかったのは、物事の2手3手先を読みながら働いてくれる点。おかげで、大抵のことはスムーズに進んだし、本来なら学部生のアシスタントに任せきるなんて事が出来ない部分も任せてしまう事が出来たので、全体的に本当に楽をさせてもらった。うちの御大も、トミー君の活躍ぶりが気に入ったらしく、来夏から修士の学生としてリクルートしてしまった(教授としては、「本当に優秀な学生」は中々手に入らないものなので、もし見つけたら意地でも確保したいもの)。
ただ、一つ思ったのは
あんまりにも賢いのも考えもんだな
ということ。
というのも、トミー君は物凄く飲み込みが早くて、ちょっと仕事するとすぐに要領をつかんでしまう。それはとても良い事なのだけれど、その反面「すぐに飽きてしまう」のが問題。
大体、普通の人が仕事にやっと慣れてきて「さぁ、要領よくがっつりと働こうか!」となる頃には、トミー君の中では「すべての行程が頭に入ってしまい、さらに可能限りの創意工夫も終わってしまっている」段階に突入している。改善できるところはすべて改善してしまっているから、あとは完全なルーティーンになってしまっているのだ。しかも、物事の2手3手を読める力を持っているから、ルーティーン突入すると「わかりきっている手順をこなすのがダルい」状態になっている。
だから、みんなが仕事にも慣れて、最後の詰めに向けてエンジン全開になっている最後の二日間ほどは、トミー君は露骨に退屈そうだった。
この辺、妙に賢いと「知らなくていい退屈」を味わわなければならないのがちょっとかわいそうと言うか、不憫に思えた。
雑感3
どこまで締めて、どこを抜くのかと言う問題。
チーム内に中ボスというかお局という感じの立場の人がいて、この人は普段自分の周りの人に物凄く厳しく、信じられないくらい細かい指摘をする。
僕は、どちらかというと絶対にハンパは出来ない部分以外は「ま、少々のミスは黙認しようよ」「どうせ、出る結果はそんなに変わらないべさ」と考えているいい加減な人間なので、あまりに細かい点まで文句を付けてくる態度に辟易していた。
で、今回の研究活動中に、その人の仕事ぶりやら生活態度をつぶさに見る事が出来たのだけれど、
自分に甘めぇんじゃねぇかよ、てめえ!
なんかね、こまごまと緻密には作業をしている。その辺は普段の言動と違う部分は無い。でもね、「それはダメだろ、オイ」という致命的な部分でミスしたり、「なぜ、それを持ってきていないんだ!」と思うようなものを忘れてきたりしていた。
なんつうか、いろいろと気が付くのは科学者をやるには重要な資質だとは思うのだけれど、「自分が出来ない事を他人に厳しく要求する」態度っつうのは、求心力というか信頼の度合いというかを一気に低下させるなぁと思った。今後、自分は彼女の細かい指摘に耳を貸さないと思う。
ただ、ここで難しいのは、自分みたいに大局に影響を与えない細かいポイントにかんしては「見なかった事にする、聞かなかった事にする」という奥義を多用するスタンスを貫きすぎると、それはそれでメンバーの士気を殺し、研究の本当に重要な部分での緻密さも失わせてしまう可能性があること。
今後、アシスタントの学部生の面倒を見たり、入学したての大学院生の世話をする機会も増えると思うけれど、その辺のコントロールはしっかり考えながら身につけて行かないとダメだなぁと思った。
嫌がられない程度に締める。 難しいなぁ。
まぁ、こんなところか・・・・・
この記事は、番外編として今回の研究活動中に感じた事を幾つか書きます。
雑感1
今回の研究活動は、ケベック人と一緒に仕事をする始めての機会だった。
うちの研究室は基本的に「完全自己裁量制」で運営されている。つまり、すべて個人の責任にまかされている形となっていて、さらに同じ研究室内に「似た研究」をやっている人というのがいないため「誰かと一緒に仕事する」機会というのはこの一年と数ヶ月の間一度も無かった。
で、今回始めてケベック人の皆さんと「チームで」仕事する事になったのだけれど
仕事、しにくい
「何がどうやりづらいのか?」をはっきりと説明できるほど周りを観察する余裕は無かったので、上手く解説できないのがもどかしいけれど、2週間を通して個人的に非常に動きづらかった。
僕がフランス語が全くわからない、というのも大きな原因の一つなのだけれど、それ以上に仕事に対する姿勢と言うか、物事の優先順位の付け方が日本人ともアメリカ人とも微妙に違うので、どこかでいつもかみ合っていなかった気がする。
個人的な感覚で言うと「合理主義」の権化のアメリカ人の方がまだ理解しやすかった気がする。
雑感2
今回、僕のアシスタントを務めてくれたトミー君だけれど、物凄く優秀でとても助かった。
彼の英語力はかなり低くて、所々コミュニケーションを取りづらくてイライラする事もあったのだけれど、きらりと光る人柄の良さと、おそらく1000人に1人というレベルの頭の良さですべてをカバーしてくれた。特に素晴らしかったのは、物事の2手3手先を読みながら働いてくれる点。おかげで、大抵のことはスムーズに進んだし、本来なら学部生のアシスタントに任せきるなんて事が出来ない部分も任せてしまう事が出来たので、全体的に本当に楽をさせてもらった。うちの御大も、トミー君の活躍ぶりが気に入ったらしく、来夏から修士の学生としてリクルートしてしまった(教授としては、「本当に優秀な学生」は中々手に入らないものなので、もし見つけたら意地でも確保したいもの)。
ただ、一つ思ったのは
あんまりにも賢いのも考えもんだな
ということ。
というのも、トミー君は物凄く飲み込みが早くて、ちょっと仕事するとすぐに要領をつかんでしまう。それはとても良い事なのだけれど、その反面「すぐに飽きてしまう」のが問題。
大体、普通の人が仕事にやっと慣れてきて「さぁ、要領よくがっつりと働こうか!」となる頃には、トミー君の中では「すべての行程が頭に入ってしまい、さらに可能限りの創意工夫も終わってしまっている」段階に突入している。改善できるところはすべて改善してしまっているから、あとは完全なルーティーンになってしまっているのだ。しかも、物事の2手3手を読める力を持っているから、ルーティーン突入すると「わかりきっている手順をこなすのがダルい」状態になっている。
だから、みんなが仕事にも慣れて、最後の詰めに向けてエンジン全開になっている最後の二日間ほどは、トミー君は露骨に退屈そうだった。
この辺、妙に賢いと「知らなくていい退屈」を味わわなければならないのがちょっとかわいそうと言うか、不憫に思えた。
雑感3
どこまで締めて、どこを抜くのかと言う問題。
チーム内に中ボスというかお局という感じの立場の人がいて、この人は普段自分の周りの人に物凄く厳しく、信じられないくらい細かい指摘をする。
僕は、どちらかというと絶対にハンパは出来ない部分以外は「ま、少々のミスは黙認しようよ」「どうせ、出る結果はそんなに変わらないべさ」と考えているいい加減な人間なので、あまりに細かい点まで文句を付けてくる態度に辟易していた。
で、今回の研究活動中に、その人の仕事ぶりやら生活態度をつぶさに見る事が出来たのだけれど、
自分に甘めぇんじゃねぇかよ、てめえ!
なんかね、こまごまと緻密には作業をしている。その辺は普段の言動と違う部分は無い。でもね、「それはダメだろ、オイ」という致命的な部分でミスしたり、「なぜ、それを持ってきていないんだ!」と思うようなものを忘れてきたりしていた。
なんつうか、いろいろと気が付くのは科学者をやるには重要な資質だとは思うのだけれど、「自分が出来ない事を他人に厳しく要求する」態度っつうのは、求心力というか信頼の度合いというかを一気に低下させるなぁと思った。今後、自分は彼女の細かい指摘に耳を貸さないと思う。
ただ、ここで難しいのは、自分みたいに大局に影響を与えない細かいポイントにかんしては「見なかった事にする、聞かなかった事にする」という奥義を多用するスタンスを貫きすぎると、それはそれでメンバーの士気を殺し、研究の本当に重要な部分での緻密さも失わせてしまう可能性があること。
今後、アシスタントの学部生の面倒を見たり、入学したての大学院生の世話をする機会も増えると思うけれど、その辺のコントロールはしっかり考えながら身につけて行かないとダメだなぁと思った。
嫌がられない程度に締める。 難しいなぁ。
まぁ、こんなところか・・・・・