僕は名もない凡人でいたい

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山崎ナオコーラ『人のセックスを笑うな』 感想

2017年04月24日 | 本と雑誌
最初の数行で主人公は女だなと思ったら、一人称で「オレ」と語り始めたので驚いた。
解説を読んで、なるほどあの違和感はそういう事、と一応納得する。

  思えば、言葉は男性のものであり、感覚は女性のものであるとされてきた。だが、感覚が男性のものであって悪いのか(逆にいうなら、言葉が女性のものであって悪いのか)。
 「オレ」は半ば女性である。「ナオコーラ」が半ば男性であるように。そして、そのことが「救済」であるとこの小説は語っている。
    (解説・高橋源一郎)


私には「オレ」はどうしても女に見えてしまう。
生物学的にこうなんじゃないか、という私の想像だけど。
なぜ、主人公を男性にしたのだろう?
解説を読んで一応は納得するけれど、作者本人に聞いてみたい。

この本をすすめてくれたのは、我が大学の文芸の先生と学生で、どちらも男性である。
とにかくセンスが良いから、タイトルに驚かないで、と。

読みやすくて1時間位で読んでしまった。
著者名もタイトルも意表を突くが、内容は繊細で、文体はさりげなく詩のよう。

定期演奏会

2017年04月24日 | 観劇・コンサート
楽団の定期演奏会。
休団者宛てに送られてくる招待券は無駄にせず、いつも客としてこっそり聞いて帰るのだが、今回は当日券の売り子を頼まれた。
売れ行きは芳しくなかった。
しかし、売れても売れなくても構わないという気楽さで、他愛ないお喋りに花が咲く。

今回の演目は、ドヴォルザーク作曲『スターバト・マーテル』。
宗教音楽である。
「スターバト・マーテルってどういう意味ですか?」
と、予習不足の私。
するとボランティアの高齢男性が、
「ラテン語だよね。マーテルが聖母だから嘆きの聖母……とかそんな感じじゃない? よくわかんないけど。まあ、怒りの聖母ってことはないよね」
と言うので、笑ってしまった。
この方は終始、冗談ばかり言って私を笑わせてくれた。

スターバト・マーテルの意味は大体合っていた。
プログラムには「悲しみの聖母」と書かれていた。
激しさはひとつもない。
子(キリスト)を失う母の悲しみが連綿と広がるただそれだけの音楽……。
ドヴォルザークはこの曲を作曲する数年前、相次いで3人の愛児を亡くしていたという。
子を失った作曲家の悲しみを想起せずにはいられなかった。

音楽堂に向かう紅葉坂。
4月は新緑が美しい。
この場所は、今創作中の小説に登場する予定。