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「我が家のヒミツ」ネタバレあらすじと感想 奥田英朗

2016-01-06 | 小説・漫画他

大好きな「家日和」「我が家の問題」に続くシリーズもの3作目。
面白かったのだけれど、なんだか、奥田さん、ちょっぴり元気が無い感じがして、心配・・。4つ★半

このシリーズは、ほぼ同年代ということもあるし、よくある普通の人達を描いているのもあって、他人ごととは思えない内容なんですよね。
ユーモアあり、でも温かく、ちょっとしんみりする短編で、とても好きです。
ただ、今回はくすっと笑える部分より、しんみりしたり、ちょっと悲哀を感じる割合の方が多かった気がしました。

「虫歯とピアニスト」「正雄の秋」「アンナの十二月」「手紙に乗せて」「妊婦と隣人」「妻と選挙」の6つの短編が入っています。

以下、あらすじをネタバレ全開で書いているので、注意です!


「虫歯とピアニスト」
子供はいないながらも、幸せに暮らしている敦美は、自分の勤務するこじんまりした歯科医院に、ずっとファンだったピアニストの大西さんが患者としてやってきて、舞い上がる。ピアニストの大西さんであることを全く気がついていない様に、またファンであることを隠しながらも、予約のスケジュールを考えてあげたり、また自分しか知らない大西さんのプライベートをかいま見れる事に、ほくそ笑むのだった。

最終的に、敦美はコンサート会場で、大西さんに目撃され、歯科医院のあの子がいると見破られる(後日、病院で、ちょっと似た人を見ましてね・・・と言われる)
「大西さんの人生で諦めて来たことってなんですか?」と質問した敦美に「プランAしかない人生は苦しいと思う。プランB,Cを用意し・・・」というセリフが印象に残りました。
夫が不妊治療をすすめる義母に、ずばっと言ってくれてる処とかは、良い旦那さんだなあーと思いました。
あと、大西さんの、奇をてらわず自然体な演奏スタイルや人間性も好感を抱いたし、そういった大西さんを好きだという敦美とその旦那さんにも良い印象を持ったので、とても微笑ましく読みました。

「正雄の秋」
同期のライバル河島が、一つの席を勝ち取って行った。
正雄は仕事で実績は残して来たものの、ゴルフ接待やらゴマすりやらで世の中を上手く渡って行くような河島やその部下が嫌いだった。
今まで仕事人間だった正雄は、このたびの人事移動で、やることがなくなり、意気消沈してしまう。
妻と四国旅行中、河島の父がぽっくり亡くなったという知らせを聞き、河島の実家に赴く。河島の田舎や親せきのほのぼのした様子を見て、もういいや・・・という気持ちになるのだった。
営業畑の人の出世競争とかが、とてもリアルに描かれています。私も、正雄みたいなタイプが良いし、仕事で結果を出すのではなく、お偉いさんに取り入って、要領よく人生進む様な人は、あんまり好きじゃありません。
でも、その嫌なしたたかなヤツ河島も、故郷では・・っていうのは、凄く分かるわー。あの白い巨塔の財前も、おかあちゃんの前でのあの姿や様子を見ると、憎めなく感じるのと同様にね。

「アンナの十二月」
アンナは12才のとき、自分にはスーパーで働く優しい育ての父以外に、著名な脚本家の父がいることが解ります。実際会ってみたら、カッコよくて、のぼせあがってしまうというお話。
代官山の父の豪華な自宅、仕事場での見学、夢のようなセレブな父の暮らしぶりと比較し、現在の平凡な暮らしがみすぼらしく感じる様になる。そして前から行ってみたかったが資金が無くて諦めていた海外留学に、父からお金を出してもらって行けないだろうか?とたくらむのだったが・・・。

後半は、ちょっと、アンナ!調子に乗り過ぎーって思ったのだけれど、アンナの親友2人が、いい事言ってくれて、かなりジーンと来てしまった。良い友達を持ってるなあ!
アンナの父母が離婚した理由より、子持ちのアンナ母と結婚する決意をした現父との恋愛話のほうが、面白いはず!と言ったのもナイス。確かに。最後の〆は、特に恥ずかしいセリフも言わせず、アンナが現父の肩をもんであげて「109のセールに車で送ってくれる? ついでに家族4人で初詣に行こう」って流れが、とても良かったです。

「手紙に乗せて」
いきなり妻を脳溢血で亡くして以来、父はすっかり元気を亡くしてしまっている。それを心配する息子と娘。
息子は広告代理店でハードな毎日を送っており、かつて妻を亡くした経験のある上司が、やたらと彼と彼の父を気遣ってくれるのだった。
そして手紙を父に渡してくれと言い、父もそれへの返事を書いて、双方涙・・だった様子。何が書かれていたのかは解りません。
若い時は、気が付かない事が多い。(私もそうだなあ・・)
かつて中3の時の同級生の小林君に配慮の無い態度を取った亨だったのだ。
でも、付き合いがもうなくなっていたのに、母の葬儀に小林君は来てくれていて、後日電車で彼とばったり会い、2人は久しぶりに会話も弾んでまた一緒に飲もうという話になるのだった。

「妊婦と隣人」
隣に引っ越してきた謎の夫婦らしき人達。まるで潜んで暮らしているようで、全く行動が謎だ。
妊娠中の葉子は、気になって仕方がない。壁に聞き耳を立てたり、管理人さんと話したり、あげくのはてに、警察に相談?に行ってしまうのだった。結果、後をつけてみたら、中国の何やら怪しい人だったのだった。

昔、マドンナだったかな?忘れちゃったのだけれど、やっぱり奥田さんの小説で、誰かの生活を覗き見というか、ずっとストーカーまがいに見張って一喜一憂する可笑しいお話があったのを思い出しました。

「妻と選挙」
最終編だけは、3作で続いていて、奥さんの変化を楽しみにしているのだけれど、前回までは、健康食品にハマる主婦、マラソンに夢中になる主婦と、微笑ましいお話だったけど、本作では、まさかの選挙で、えっ?と少々びっくり。
普通の主婦の枠ではおさまらない人になってしまった様で、少々なんだか残念な気持ちも・・・。

あと、小説家の夫の仕事が陰って行って、あまり出版社から珍重されない様になっている様子等は、今も売れっ子で活躍中の奥田さんとは重ならないものの、明日は我が身かもしれない・・・と想像して描かれているのかな・・・。

また4年後、第4弾を楽しみにしています!その時、市議会委員になった妻はどうなっているのやら・・・。

我が家のヒミツ 2015/9/25 奥田英朗

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