4月19日、過労死企業名公表裁判がありました。若者の労働問題に取り組む私たちも、この裁判を傍聴させて頂きました。
この裁判は2010年から続いているものです。
最初に、本裁判のこれまでの争点を整理したいと思います。
【1】個人識別の可能性があるかどうか
過労死を出した企業名を公表する際に、過労死被災者本人の個人名を出してしまっていいものか、ということです。
もちろん、個人にとっては触れてほしくない人もいるわけですから、原告側は企業名のみを公表する、ということを主張しています。
【2】企業の「正当」な利益を害するおそれがある
そもそも、過労死=企業による殺人、ではないかと思います。殺人の罪を犯せば名前も公表されますし、刑事罰を受けることになります。ではなぜ、過労死を出した企業が、名前も公表されず、罰も受けず、何事もなかったかのような態度をとり続けることが許されるのでしょう。企業名が公表されれば、その企業の利益は減るでしょう。ですが、それは、当然の報いのはずです。人の命を奪っておいて、何ら反省せず企業活動を続けていけば、新たな犠牲者を生み出すことにもつながりかねません。
以上が今までの裁判の中での争点です。
今回の公判では、原告寺西笑子さんの意見陳述の可否が主な内容として予定されていました。寺西さんの意見陳述は「10分程度」ということで認められましたが、被告=国側も、新たな争点提起と、労働局職員の意見陳述書を提出してきました。
新たな争点とは以下のものです。
【3】労働基準監督署の労災事業に支障をきたすおそれがある
労働基準監督署では労災申請がなされると、事業所に対しても書類の提出を求めます。被災者と使用者双方の意見をもとに、労災の認否を決定するのですが、過労死を出した企業名が公表されるようになれば、事業所側が書類の提出を渋るおそれがあり、それによって、労災認否に時間がかかってしまう、ということです。
そもそも、過労死を起こした企業が書類の提出を拒むことそれ自体がおかしいことですし、過労死企業名が公表されない現在においても、企業は書類の提出を渋りますし、それどころか改ざんしてくる場合もあります。労災認否にかかる時間も、現在でも数年以上かかるのが普通です。今現在でも、労災事業はスムーズでないのですうから、むしろ、過労死を出した企業名を公表することで、過労死を出す企業が少しでも少なくなる方が、労災事業がスムーズになるのではないのでしょうか。
したがって、本裁判では【1】~【3】が争点になっています。
【3】の争点が提起されたことで、次回の公判では、寺西さんの意見陳述と、【3】への反論が主な内容になります。
また、国の出方次第でどうなるかわかりませんが、予定としては次回が結審です。
この裁判は、過労死を出した企業の名前を公表せよという、初の訴えをしています。これが認められれば、社会への大きなインパクトになることは必至であり、非常に社会的意義の大きい裁判であることは間違いありません。
次回期日は 7月12日(水)11:30~ @大阪地裁 です。
次回は結審になる可能性もありますし、本裁判の大きな山場となるところです。
京都POSSEとしても、次回も参加させて頂くつもりでおります。
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