短歌のご縁で親しくお付き合いをさせて頂いているFさんから、宮崎日日新聞の1月
20日掲載の宮崎市在住の歌人足立尚彦氏が書かれている「まがたま音信」の記事を
先日の碗琴コンサートでお会いしたときに頂きましたのでアップします。
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『作歌を持続させる場』
「笹井宏之が歌集「ひとさらい」を出版したのが2008年1月。歌壇の注目を集めつつ26歳の若さで急逝したのが
09年の1月、ちょうど1年前のことである。笹井は「未来」で加藤治郎に師事していたが、インターネット上のブログや歌会、
携帯電話の投稿サイト、地元の佐賀新聞の投稿欄でも活動した。
今、私は佐賀新聞での笹井宏之の活躍の全容を知ることができる。佐賀在住の友人が04年にまでさかのぼって資料を丁寧に
まとめ上げてくれたからである。佐賀新聞の文芸欄には本名の筒井宏之で投稿していたらしい。彼は選者の中の
塘健(つつみ けん)におびただしい数の作品を採られている。選評も面白いので一つだけ紹介しよう。
次の作品は06年3月20日付の塘健選歌欄で二席になったもの。
☆命より重たいものばかりの部屋できみはベーコンエッグをちぎる 筒井宏之
この作品に対して塘健はこう語る。「命より重いものはないと言ふ理想論の虚偽と、人命のたへられない軽さの現実世界への、
反語的な告発か。ベーコン・エッグを『霊魂の卵焼き』と訳せば、目前の生活に苛立ちながら、しかもその倦怠に浸つてゐる
日本そのものの姿が、ぬるりとした卵黄の食感と共に浮きあがる」と。
この歌は上句の韻律の悪さからか歌集「ひとさらい」には収められていないのだが、初期のころからこんなスリリングな歌を
作っていたのかと私は驚いた。また、根気よく読み続けた選者がいたことも、笹井宏之が作歌をやめなかった要因になっているのだと思った。
佐賀新聞ではほかの3人の選者にもたびたび採られている。
新聞の文芸投稿欄は勉強(こういう言い方は好きではないが、ほかに言葉が見つから
ない)の場として、作歌を持続させる場としても有り難い場所なのだ。」
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と書いてあるが、私も足立氏の仰るように「作歌を持続させる場として有り難い場所」という考え
方に共感を覚えた。私の場合怠け者なので、毎週締め切りが来るので作品の善し悪しは
二の次にしてなんとか作歌を続けることができているからだ。
☆たましひの重さだらうかわれの死後軽くなるといふ四十グラムが(洋子)
20日掲載の宮崎市在住の歌人足立尚彦氏が書かれている「まがたま音信」の記事を
先日の碗琴コンサートでお会いしたときに頂きましたのでアップします。
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『作歌を持続させる場』
「笹井宏之が歌集「ひとさらい」を出版したのが2008年1月。歌壇の注目を集めつつ26歳の若さで急逝したのが
09年の1月、ちょうど1年前のことである。笹井は「未来」で加藤治郎に師事していたが、インターネット上のブログや歌会、
携帯電話の投稿サイト、地元の佐賀新聞の投稿欄でも活動した。
今、私は佐賀新聞での笹井宏之の活躍の全容を知ることができる。佐賀在住の友人が04年にまでさかのぼって資料を丁寧に
まとめ上げてくれたからである。佐賀新聞の文芸欄には本名の筒井宏之で投稿していたらしい。彼は選者の中の
塘健(つつみ けん)におびただしい数の作品を採られている。選評も面白いので一つだけ紹介しよう。
次の作品は06年3月20日付の塘健選歌欄で二席になったもの。
☆命より重たいものばかりの部屋できみはベーコンエッグをちぎる 筒井宏之
この作品に対して塘健はこう語る。「命より重いものはないと言ふ理想論の虚偽と、人命のたへられない軽さの現実世界への、
反語的な告発か。ベーコン・エッグを『霊魂の卵焼き』と訳せば、目前の生活に苛立ちながら、しかもその倦怠に浸つてゐる
日本そのものの姿が、ぬるりとした卵黄の食感と共に浮きあがる」と。
この歌は上句の韻律の悪さからか歌集「ひとさらい」には収められていないのだが、初期のころからこんなスリリングな歌を
作っていたのかと私は驚いた。また、根気よく読み続けた選者がいたことも、笹井宏之が作歌をやめなかった要因になっているのだと思った。
佐賀新聞ではほかの3人の選者にもたびたび採られている。
新聞の文芸投稿欄は勉強(こういう言い方は好きではないが、ほかに言葉が見つから
ない)の場として、作歌を持続させる場としても有り難い場所なのだ。」
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と書いてあるが、私も足立氏の仰るように「作歌を持続させる場として有り難い場所」という考え
方に共感を覚えた。私の場合怠け者なので、毎週締め切りが来るので作品の善し悪しは
二の次にしてなんとか作歌を続けることができているからだ。
☆たましひの重さだらうかわれの死後軽くなるといふ四十グラムが(洋子)