地図のいろいろ

半世紀も地図作りに携わっていましたので、この辺で振り返って地図を見直してみようかな~・・・。

海図の水深と標高

2009-09-30 14:54:36 | Weblog
海図の水深と標高

海図(Nautical chart)は、航海のために必要な水路の状況、すなわち水深、底質、海岸地形、海底危険物、航路標識などを、正確に見やすく表現しています。

海図の水深(m)は、地形図の平均水準面と違い、最低水面が基準面(すなわち0メートル)とされています。そのことを図示したのが上の図です。(財・日本水路協会の「海図の記号を覚えて、海を知ろう」より)

その訳けは、船が座礁しないためです。いくら潮が引いても、海図に記された水深より浅くなることはほとんどない、座礁することはないというデータです。

浅いところは、データが多く、しかも10cm単位まで表現されていますし、深いところ(100m以上)は、1m単位で荒く表示されています。

にもかかわらず、海図の海岸線は、最高水面(最大満潮時の水面)を描いています。(地形図は平均水面ですから、海図より低くなる場合があります。)

橋げたなどの高さも、最高水面からの高さを表しています。
それは、船のマストなどが、吊橋の橋げたや送電線などに引っかからないためです。

要するに、平常時では、海図のデータを尊重して、航行している限り、安全ですと言う地図なのです。

このほか、海図には灯台などの航路標識の位置、定置網などの漁具の位置、無線局の位置、沈船の位置、海流・潮流、港界(法律上の境界)、海底の底質などが図示されています。
これらも、船の安全運航には欠かせない情報なのです。
なお、これら陸地の標高は、地形図と同じ平均海面からの高さです。
〔等高線も然りです)

さて、これから扱う海図の種類 ですが、
「海図」、「水路特殊図」と「海の基本図」 があります。

○、航海用海図 : 総図、航洋図、航海図、海岸図、港泊図の5種類。
1. 総図 (General Chart) : 航海計画に。(400万分の1より小縮尺)
2. 航洋図 (Sailing Chart) :大洋航海に。(400万~100万分の1)
3. 航海図 (General Chart of Coast): 陸地付近を示す。(100万~30万分の1)
4. 海岸図 (Coast Chart) :沿岸や内海を航行したり、港湾の出入りをする時に用いられます。(30万~5万分の1)
5. 港泊図 (Harbour Plan) :港湾、錨泊地などの限られた区域を大きく拡大した精密な海図。(5万分の1より大縮尺)

○、水路特殊図 : 航海の参考になる地図。
1、「海流図」、
2「潮流図」、
3「磁針偏差図」、
4「大圏航法図」、「パイロットチャート」、
5「位置記入用図」、
6「天測位置記入用図」、
7、「漁具定置箇所一覧図」、
8、「測地系変換図」、
9「ろかい船等灯火表示海域一覧図」など

○、海の基本図
以上が航海のためにつくられた「海の主題図 (Thematic Map) 」のに対して、
「海の基本図」は、海の多目的な利用(海洋開発、環境保全、防災等)にされるための地図で、「海の一般図 (General Map) 」と言われている地図です。
例えば、
「大陸棚の海の基本図」(縮尺別に20万分の1、50万分の1、100万分の1の3種)
「沿岸の海の基本図」(縮尺別に1万分の1、5万分の1の2種)などです。

次回から先ず、航海用海図を取り上げてみましょう。


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