@kurisann000のツイートまとめブログ

当ブログはリンクフリーです
http://kurikazu.blogspot.jp/
も見て下さい~

音無「浮気させてもらうぜ」 かなで「え?」改訂版(2)

2010年08月31日 | Weblog
今歩いているのは第一連絡橋。
手すりの下を見ると川原が見える。

太陽はまなく沈もうとしていて、真っ赤な夕日が川を照らしていた。
音無はそこに立ち止まり、夕暮れの風景を見ながらたそがれていたが、

「音無さん」 と遊佐の声。

「お、遊佐か。こんなところで会うなんて偶然だな」

音無が爽やかに応じる。他の娘には見せたことのない顔だった。

「はい。本当に。最近のかなでさんの調子はどうですか?」

遊佐は音無に隣に立った。

自然な動作で彼の腕に抱きつくが、音無は平然と受け入れた。
今の音無にとって遊佐は心のオアシスだからだ。

二人で川の流れを眺めながら話した。

「最悪だな。最近、ちょっと会わなかっただけでキレやがった。
あれは真性のヤンデレだと思う」

忌々しそうに言う音無。

「ふふ。危険な女ですね。怪我はしませんでした?」

遊佐はなぜかうれしそうだった。

「大丈夫だ。取り合えず適当に誤魔化せば何とかなる。
それよりゆりっぺ達はどうだ? 
俺の行動が感ずかれていないか?」 

音無が真剣な顔で遊佐を見た。

「問題ないです。今の戦線は天使と敵対しなくなってから
だらけてます。ゆりっぺさんも音無さんに夢中で
視野が狭くなってるし、ユイさんも現状では音無さんに
逆らったりはしないでしょう」

「ふふ。そうか。おまえは本当にいい子だな。
そんな遊佐だからこそ、俺は大好きなんだよ」

「あ…」

音無に頭を撫でられた遊佐は顔を真っ赤にしてしまった。

ところで、音無が遊佐と付き合うようになったのは
ずいぶん前のことだった。以前からそのロリロリでクールな
容姿は大好きだったし、巧みな情報収集能力で音無の浮気を
サポートしてくれたのもポイントが高い。

戦線のオペレーターとして前線と指令所の橋渡しをしていた
経歴を持つため、あらゆる環境の変化に機敏だし、
音無の下僕である直井を効果的に使った情報操作も行っていた。

かなで違って独占欲がないところも魅力的だ。
以前、『私は音無さんの一番じゃなくてもいい。音無さんが私を
好きでいてくれればそれでいいんです』と言った彼女はとても
寂しそうだったが、音無はそんな健気な遊佐嬢に心底惚れてしまった。

「遊佐…キスしようか」

音無が遊佐を正面から抱き寄せた。

熱っぽい視線で遊佐と目を合わせる。

「はい…」

遊佐は背伸びしながら音無の唇を求めた。
音無に抱きしめられ、温もりを感じるのが彼女の最大の喜びだった。
それ以外は何も求めていなかった。

「おまえのことが一番好きだよ。遊佐」

この世に存在する最悪の屑・音無は真剣な顔で言ったが、

「はい。たとえ嘘でもうれしいです…」

寡黙なる淑女・遊佐は達観した顔で目を閉じていた。

その姿は同年代のの少女達より大人びて見えた。
夕日の輝きが彼女のブロンドヘアーを赤く染めていた。

かすかに流れている風が髪の毛を揺らし、
彼女の心の不安と寂しさを表現しているようだった。

今まで様々な女の子と関係を持ってきた音無であるが、
実を言うと本命は遊佐であった。
それを遊佐に言っても信じてくれないが、いずれは
他の女達と縁を切って本格的に遊佐と仲良くなろうと思っていた。

その時である。

「何してるの結弦?」

かなでの声。

「「……!?」」

びっくりした音無と遊佐は勢いよく離れた。

どうやらキスを見られてしまったらしい。

「これは何? 私は悪夢を見ているのかしら?
どうして結弦が私以外の女と……?」

かなでの声は震えていた。
瞳の奥に深い悲しみと怒りを宿しており、
凄まじい殺気を放っていた。

すでに両手にハンドソニックを展開している。

(まずい……見られた以上は……)

遊佐は冷や汗をかきながら、懐に隠していた
拳銃を取り出そうとしていた。

この状況では言い逃れは不可能。

最悪の場合は音無とセットで地獄行きの
ツアーに招待されてまうだろう。

(私がなんとか時間を稼げれば……)

遊佐は音無だけでも逃がしてやる算段を立てていた。
それだけ音無に惚れ込んでいたのだ。

「大丈夫だよ。遊佐」

音無が小声で言った。

「え?」と驚く遊佐の肩をそっと叩いた後、
かなでにこう宣言した。

「かなで。どうして俺が遊佐と抱き合ってたか知りたいか?
 理由は簡単だ。おまえのことが大嫌いだからだよ」

音無はかなでを強く睨んでいた。

「……………………!?」

かなでは音無が言ったことを理解しようとした。
しかし、脳がそれを拒否していたため、
出来るのは首をかしげることだけだった。

「俺はおまえより遊佐のことが好きになったんだ。
おまえの独占欲の強さにはもう飽き飽きしている。
毎日おまえの顔色を伺いながら過ごすのはもうゴメンだ。
そういうわけで、おまえとは今日でさよならだ」
 
音無は淡々と告げた。

「………………?」

かなでは何も言わずに立ち尽くしていた。
まだ自分の置かれた状況を理解していない、
というよりは認めたくなかったのだろう。

「じゃあな」

音無は短く別れを告げた。
遊佐と手を繋いでその場を離れていった。

二人仲良く歩くその姿は夫婦のようだった。

「……………?」

かなでは今もフリーズしたままの状態だった。
指先がわずかに震えており、頬を伝う涙が
アスファルトの上に落ちていった。


「本当にあれで良かったんですか、音無さん?」

遊佐は何度もかなでの方を振り返っていた。

「いいんだよ。これで対策を練る時間が出来た」

音無は早足で歩きながら言った。

「対策ですか?」

「ああ。いますぐ直井のところに行くぞ。
奴ならきっといいアイデアを思いつく」

校舎に向けて走りだす二人。

音無達は真っ直ぐに生徒会室を目指していた。

ところで、音無はこの世界でハーレムワールドを
作り上げたわけだが、その背後では直井の暗躍していた。

優れた頭脳と催眠術を持つ彼は、音無の腹心だった。

状況を理解したかなでが、いつ音無達を襲撃してくるか
分からない現状では、早急に対策を考えなければならない。

「直井! いるか? 大ピンチだ!!」

音無が生徒会室の扉を乱暴に開けた。

周囲を見渡すが、直井の姿はどこにもない。
あるのは複数のPCと、床に乱雑に置かれたエロゲーの箱だけだった。

「あれ?」

音無は呆けた。

最近の直井はエロゲーに熱中しており、
暇な時間さえあればこの部屋でプレイしていた。
しかも彼は攻略可能のキャラは全て攻略するという真面目な性格で、
授業をサボってまでゲームに没頭していた。

だから、音無は彼はこの部屋にいると確信していたのだ。

ちなみに音無は仕事の報酬として、
所持している全てのエロゲーを直井に下賜していた。

(それにしても、なんだこの匂いは?)

部屋中に凄まじい臭気が漂っていた。

不安と緊張で胸が苦しくなるが、

「音無さん。あれ…」

遊佐が部屋の隅の水溜りを指差していた。


ピチャリ ピチャリ ピチャリ…


これは何の音かと思って天井を見上げると、
首をつった直井の死体から糞尿が垂れていた。

「う…」

音無達はそれを直視できなかった。
猛烈な吐き気に襲われつつも、誰が直井を殺したのかを
考えたが、その必要はなかった。

「あなた達。一般生徒が生徒会室に無断で入るのは
感心しないわね」

出入り口にかなでが立っていた。

「それに可愛い女と不純異性交遊をしているみたいじゃない。
素行の悪い生徒には、お仕置きが必要かしら?」

鋭い目つきと独特の口調。

音無はすぐにこいつの正体がかなでの分身だということに
気がついた。以前と同じ。恐らくはかなでが音無に振られた
際に発生させたハーモニクスだと推測した。

その際に念じたのは、音無を遊佐から取りもどすこと。

複製された天子は、音無達がアクションを起こす前に、
その中核をなしている直井を始末したのだろう。

腹心が消えた以上、このままではジリ貧になる。

「……こいつ!!」

遊佐がいち早く反応して拳銃を撃つが、天使のバリアで
防がれた。弾はかなでから逃げるように明後日の方向へ飛ばされた。

すでにディストーションが発動されているようだ。

「抵抗したわね?」

冷たく言うと、天使は遊佐の胸を刺した。

ハンドソニックを勢いよく引き抜くと、
遊佐は血だまりの中へ崩れ落ちた。

ソニックはどす黒い血で染まり、天使は
にやけたまま顔についた返り血を舐めていた。

「結弦? これであなたを惑わす女は始末したわ。
私達と一緒に来てくれるかしら?」

いつのまにか、部屋の周りに複数の天使が出現していた。
皆ソニックを構えながらにやにやしている。
もはや音無に抵抗する術は残っていなかった。

「わかったよ……どこに行けばいいんだ?」

音無は全てを諦めた顔をしていた。

「地下よ。そこでオリジナルの私も待ってるわ」

そうして音無が連行されたのは、学園の地下だった。
音無はここに来るのは初めてだった。

天使に案内され、長い廊下を突き進む。
廊下の左右にはいくつもの牢屋が並んでいた。

空気は悪く、ほとんど明かりもついていない最悪の環境。
今ここにいるだけでも不快だった。

この薄気味悪い施設は何のために用意されたのか、
考えたくもなかった。

「こっちよ」

天使に手を引かれる。

廊下を突き当りまで進むと、一際大きな部屋にたどり着いた。

鉄製の頑丈な扉を開けると、笑顔のかなでが迎えた。

「待ってたわ、結弦」

部屋についた瞬間、音無は両手を塞がれた。

「おい、何だこれは?」

「手錠よ。あなたが変なマネを起こさないために」

「……」

唖然とする音無だが、かなでの目は真剣だった。

「今日は色々とごめんね? 
結弦と喧嘩するのは初めてだったから動揺したの」

かなでは顔を赤く染めながら言った。

「あの女に騙されてたから、あんな嘘を言ったんだよね?
結弦が私のことを嫌いになるわけないもん」

両手を合わせてもじもじ話すかなでは小学生のように幼く
見えたが、音無は気絶しそうなほどの恐怖を感じていた。

(こいつ……認めないつもりか……)

かなでの目は気味の悪い色で濁っていた。
そこからどす黒い感情が見え隠れしており、音無は
もう自分が逃げられない所まで来てしまった事を実感した。

「今日からここで一緒に暮らしましょ♪
そうすれば結弦も目を覚ましてくれるはず。
ここには結弦を楽しませるものが一杯あるよ」

嬉々として音無を監禁することを告げるかなで。

音無が改めて部屋を見渡すと、広さは十四畳ほどで
システムキッチンから冷蔵庫、バスルームまで備えてある。

さらには大きな棚には書籍や音楽CD、部屋の隅には
大型の液晶テレビからPCまで揃っていた。

その周到さにあきれるばかりであるが、
なぜ学校の地下にこのような娯楽施設があるのかを
かなでに聞いてみると、

「ここは素行の悪い生徒さんたちを監禁して拷問する 
お仕置き施設なの。この学校の生徒会が有する
特殊施設だから、他言無用でお願いね♪」

かなでの話しによると、今いる部屋は生徒会長のみ
入ることがが許された部屋であり、牢屋に閉じ込められた
生徒達をモニターで監視することが出来るという。

驚嘆の事実の連続。音無は胃が痛くなってきた。

「結弦? さっきから暗い顔してどうしたの?
もしかして、私といるのがつまらないとか?」

かなでの目から感情が失われていった。

「い、いや! そういうわけじゃないんだ。
ただちょっとびっくりしちゃってさ!!」

慌てて音無が言い訳する。

「……そうなの?」

「ああ。本当はかなでと一緒にいてすごくうれしいんだぞ!!」

「よかった…私もとってもうれしいわ」

かなでは音無に抱きついてくる。

音無は両手を拘束されているので、
それを拒むことは出来なかった。

かなでは満足そうな顔をしてデレデレしているが、
音無は聞きたいことがあった。

「な、なあ、かなで。聞いてもいいか?」

「何?」

「その……遊佐はどうしたのかなって…思ってさ…」

音無は大好きな遊佐のことが忘れられず、つい質問してしまった。

ここは死後の世界だ。

死は一時的な状態であり、時間経過と共に復活する。
ゆえに、もうとっくに遊佐は生き返っている頃だと思うのだが、
その後の詳細が分からなかったので聞いてみたのだ。

だが、  

「……まだあの女のことが気になるの?」

かなでは両手で締め付けてきた。

「ぐ…ぁ……」

音無があげたのは蚊の鳴くような音量のうめき声。
抱きつかれた体制のまま、背骨をへし折る勢いで
締め上げらているのだから無理もない。

エンジェルプレイヤーで製作されたオーバードライブ。

それはかなでに常人をはるかに超越した怪力を授けていた。

「そんなに気になるなら教えてあげる。あの女なら
牢屋で拷問してるわ。死なない程度に切り刻みながらね。
今頃、私に歯向かったことを後悔しているでしょうね」

音無は悪寒に襲われた。

危機的な状況でも自分をかばったあの子は、
今の自分以上に酷い目に合わされているのだ。

音無は変わってやりたいと思った。

今も苦しんでいる遊佐の顔を想像すると、
胸が締め付けられて仕方なかった。

「もう二度と私の前で他の女の話をしないって約束できる?」

「……ぁぁ……約束……するよ……」

「よかったぁ!」

かなではパァッと明るい顔をして締め付けを解いた。

話された瞬間、音無は咳き込むが、
かなではそれに構わず口付けしてきた。

「これはご褒美だよ? もし約束を破ったら、
地獄の苦しみを与えてやるからね」

音無がゾッとする様なことを
歌うような抑揚で言うのだった。

「……」

音無は目をつむってこの時が過ぎるのを待った。
されたのはソフトなキスで、まもなくして唇を離された。

「うふふ♪」

かなでは満足すると、キッチンで料理を始めた。

「もうすぐ夕食の時間だし、お腹すいたでしょ?
 すぐに何か作るから待っててね!」

いつになく上機嫌だった。

(あいつ、以前とはまるで別人だな)

すでにかなでは別の何かに変わってしまったのだ。

音無がこの世界に来てからハーレム世界を目論んだように、
彼女も音無を病的に愛し続けるのだろう。

この死後の世界には、人を変えてしまう不思議な
力があるのかもしれない。

「できたわよ!」

かなではカレーの乗った皿を配膳した。
テーブルに二人で寄り添い、ラブラブの食事が始まる。

「あーんして」

「……ぐ!!」

かなでに食べさせられたのは激辛カレーだった。
スパイスが効き過ぎて味がほとんどしないほどだった。
しかもこの味は和風テイストではなくインド風だった。

「お味はどう? 今日のは自信作よ」

かなでは邪気のない笑顔で聞いてくる。

「ああ、こういう味も悪くないかな…」

音無はいますぐ水を飲みたいのを我慢しながら感想を言った。
舌と唇がヒリヒリして目から涙が出そうだった。
この料理を全て食べきる自信はないが、断れば
かなでが激怒する。

こして味覚障害になりそうなほどのこの料理を
毎日食べさせられることになるのだった。

日によってキムチや、タバスコ入りのパスタ、
ピザなどが振舞われた。

それぞれの料理の味は決して悪くはないのだが、
激辛メニューで統一されてたのが最悪だった。

一週間後、さすがに我慢の限界がきてしまい、

『かなで、たまには辛くないものが食べたいんだが』

と勇気を出して言ってみたら、普通の定食を作ってくれた
ので感動した。あの時のとんかつの味は今でも忘れられない。

ただ、

『今日は口移しで食べさせてあげるね。
私と結弦は夫婦なんだから恥ずかしくないよね?』

これさえなければ最高だった。

突っ込みどころは色々あるのだが、かなでの中では
いつまにか夫婦の関係になってしまったらしい。

『ん…』

食べ物を口に入れたかなでが迫ってくる。

(ちくしょう!! もうどうにでもなれ!!)

かなでの唾液交じりのものを咀嚼する。

(まずい…)

とは口が裂けても言えなかった。

とは言え、かなでの手前、嫌そうそうな顔も
出来ないので、 『お…おいしいよ』
と苦笑いしながら言うしかなかったのだ。








音無「浮気させてもらうぜ」 かなで「え?」改訂版(1)

音無「浮気させてもらうぜ」 かなで「え?」改訂版(2)


音無「浮気させてもらうぜ」 かなで「え?」改訂版(3)

 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿