"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

“春分のこの佳き午後に味噌仕込み”

2006年03月24日 16時38分39秒 | 主催する催し

 旧二月二十五日。彼岸の明けです。“暑さ寒さも彼岸まで”と言うとおり、今年は厳しい寒さからちょっと早く解放され、桜も開花いたしました。先日初めて浜離宮恩賜公園に行ってみたのですが、梅が散り、桜が僅かにほころび始め、ぼけ、れんぎょう、ハクモクレン、雪柳、眩しいばかりの菜の花・・・と春真っ盛りであることを実感しました。

 さて初の試みである“手前味噌仕込みの会”を無事3月21日火曜日に、お馴染みの渋谷の【居酒屋ニュー信州
で行いました。当日は春分の日=二十四節気の中でも天文学的に起点となる日、国民的関心事WBC決勝戦=初代王者の座をかけたキューバとの一戦の日、そして東京地方で染井吉野の開花宣言がされた日、と滅多にない身も心も浮き足立つ日でした。ご参加いただいた皆様、“王ジャパン”よろしく見事なチームワークで仕込みから酒宴まで、楽しいひとときを過ごすことができ、感謝しています。今日はイベントレポートを簡単にいたしましょう。

 まずは会の前日夜、お店が閉店する深夜0時頃に大豆を水に浸します。
一般家庭ではなかなか大変なのですが、大量(5.5kg)の大豆にも業務用の大鍋なら3つに分けて一気に煮ることができます。324daizu13時間かけてゆっくり水を吸った大豆を火に掛けます。ほどなく参加メンバーが集合しメンバーの紹介と簡単なガイダンスを。WBC決勝戦はお店の有線放送から流れるラジオ放送で。大豆は1時間ほどで食べられるようになります。皆でちょっと味見をしてみましょう。水で戻して煮ただけの大豆のなんと甘いこと。塩にからめたり、醤油に浸したりで、素朴なおやつに最高です。味噌にする大豆はもう少し柔らかく、あと30分ほどじっくり煮てゆきます。
(写真は左上から時計回りに~水に浸し~水を吸ったところ~そろそろ煮上がる~煮ただけの大豆の旨味にびっくり)

 大豆が煮上がると一気に味噌仕込みらしい労働の時間が待っています。各自少しずつポテトマッシャーで潰してゆきます。昔ながらの方法、巨大なすり鉢と擂りこぎも登場。多少大豆の粒を残して手造り感を出しましょう、とメンバーの総意で完全に潰さない大豆も残しました。324shikomi塩と米こうじを均一になるようによく混ぜ合わせます。そこに潰した大豆を一気に投入し、ここからがクライマックス、メンバー全員で大豆と塩とこうじを混ぜ合わせてゆきます。こうじや大豆はお肌に良いのでしょうか。温泉に入ったように手の甲がスベスベになります。さすが天然素材のコスメですね。混ぜ合わせた素材の堅さを確かめながら、大豆を煮汁を少しずつ加えていきます。この堅さがたいへん微妙なところです。仕上がりの味噌の水分をイメージしながら試行錯誤の上、調整してゆきました。そして各自の1升瓶に空気を抜いて詰め込み、表面に薄く塩を振り、ラップをかぶせ、落とし蓋をして仕込み作業は無事完了です。

(写真は左上から時計回りに~最もアナログなすり鉢登場~塩切りこうじを作ります~すべての材料をよく混ぜて~空気を抜きながら瓶に仕込みます)

 チームワークの良さで作業は予想より遙かに早く完了。正味2時間ほどでした。適度な力仕事で喉の渇きもピークです。WBCの祝勝ムードもあったのか第二部酒宴への支度も素早いこと素早いこと。
324miso4syuビールで乾杯し、まずは先輩味噌を味見してみましょう。ということで私の手前味噌一年もの、二年ものとお店で秘蔵している四年もの?と六年もの?(写真の一つだけ色が薄いのが一年もの)を、あさつき、胡瓜につけて食べてみます。続いてはお店からのお振る舞い【ふろふき大根の柚子味噌】【黒ムツの味噌漬け】が登場。さらに味噌と酒粕を使った料理レシピを店主の榎 慎一さんに教えていただき、お土産に佐渡の大吟醸酒粕まで頂いてしまいました。明るい時間にスタートした酒宴も、時計を見ればあっという間にもうこんな時間!参加メンバー、お手伝い頂き全ての写真を提供してくれた水野さん、お店の皆様のお陰様で楽しいイベントになった、と思い感謝しています。

324syuugou_1 なんだかとても思い出深い日になってしまった3月21日。半年後、あるいは一年後でしょうか。各メンバーのご自宅で見事飴色に熟成した手前味噌の味噌汁を味わうたびに、この日を思い出して頂ければ、幸いです。また、熟成する環境で味噌の風味にどんな変化が表れるのかも、興味深いところ。ぜひメンバー一同再会し、手前味噌自慢に花を咲かせましょう。