水早 -mizuha- 神社と写真と一人旅。

カメラ片手にゆるり神社めぐり。
公共機関&徒歩での日帰り参拝記録をメインに綴っています。

切妻・妻入りの、舞殿タイプ拝殿-2

2015-08-23 | 尾張造り考察

 

 

拝殿調べつづき。

 

では、滋賀県の場合はどうかというと、見る限りすべて入母屋造りでした。

特徴としては、

 屋根=入母屋

 開放部分=方向 もしくは三方向

 妻入りが多いが、平入り開放も結構ある。

 基本は腰壁あり

 拝殿 → スペース → 祭文殿のような造りで本殿の周りには回廊(瑞垣)があり

   かつ回廊内の渡殿(渡廊下)を進み本殿まで行ける場合がある。(スゲーw(゜ロ゜)w)

 

対して福岡県福岡市西区・博多区、糟屋郡、糸島市など)の場合は、切妻が多い。

特徴としては、

 屋根=主に切妻で、入母屋は少し

 開放部分=三方向

 平入り開放が大部分を占める地域も多い

 基本は腰壁あり

 拝殿 → 短い渡廊下 → 本殿(本殿を囲む回廊はナシ

 地禄神社はもれなく開放型

 


(愛知県春日井市 松原神社)

 

今回調べてて一番うれしかったのは、

福岡県切妻・妻入りで舞殿タイプの拝殿」が結構ある!というのが分かったことです。

しかも雰囲気が非常によく似てる。

 

写真は勝手に拝借できないので載せられませんが、例をあげると

 ・糟屋郡-- 須惠町の宝満宮、須賀神社など (よく似ていて、とても多い。)

 ・福岡市博多区--立花寺の日吉神社など (ほか、月隈地域に多い。)

 ・福岡市南区-- 五十川八幡宮など

 ・福岡市早良区-- (腰壁あり)

 ・福岡市西区-- 元岡の八坂神社など (開放部が四方)

 ・福岡市東区-- (腰壁あり)

 ・糸島市-- (腰壁あり。入母屋も結構ある)

 

ほかに、太宰府市竈門神社なども、開放部は少し違うけど

見た感じがとてもよく似ている。

(須惠町宝満宮へは、ここから分霊されているそうです。)

 

なお、滋賀県の場合は、

 ・大津市、近江八幡市、草津市-- (非常に多い)

 ・高島市-- (多い)

 ・東近江市・野洲市・蒲生郡-- (いくつかある)

などなど。

 

※この記事をupした後で参拝した、滋賀県長浜市の湯次神社がこちら。

 

 

 

 

 

そんなわけで、

舞殿タイプ拝殿における「切妻入り」形式は、

今のところ愛知内と福岡内ぐらいにしか見当たりませんでした。

 

他は、みんな「入母屋入り」。もしくは「入母屋入り」です。

 

ただ、「切妻・妻入りで舞殿タイプの拝殿」 という形だけで言えば、

 長野県飯田市(愛宕稲荷神社)、

 京都市北区(上賀茂神社の境外摂社:久我神社、境内摂社:新宮神社)、

 山口県下関市(住吉神社)

などもそうでした。

(※見た感じの印象はだいぶ違いますが・・。)

 

なのできっと探せばきっとまだ他にもあるとおもいます。

 

全国くまなく調べるのはかなり時間がかかるでしょうけれど、

各地とどんな繫がりや共通点があるのか、考えただけで楽しくなります。

 

 

こうして視野を広げて見ていて、ふと気付きましたが・・

切妻・妻入りで舞殿タイプの拝殿」って、かなり お寺色が強い んじゃなかろうか。

 

しらみつぶしに検索していた時、神仏習合な部分が色濃くのこる神社が散見され、

そう思いました。

 


(愛知県小牧市 尾張神社)

 

だいたいこの姿・・。

舞殿や絵馬堂っぽくもあるが、一番近いのはお寺の鐘楼かなー

 

舞殿も絵馬堂も、入母屋だったり平入りだったりがほとんどのようだけど

鐘楼だったら、切妻も結構あるよね。

 

例:

安国寺(綾部市)、方広寺(京都市東山区)※入母屋、帯解寺(奈良市今市町)、

観音寺(大宰府)、清龍寺(浜松市二俣町)、妙福寺(東京都練馬区)※入母屋  などなど・・。

 

 

結局のところ、神仏習合の面影に惹かれていたということになるのかも。

 

だって、

諏訪大社上社本宮神馬舎 とか、

勅使殿&五間廊 とか入口御門とか、戸隠神社宝光社拝殿 とか、大好きだもん。

 

極彩色で豪華絢爛な建築物じゃなくて、木の色だけの、ほぼ無色でシンプルなやつね。

 


(長野県諏訪市 諏訪大社 上社 本宮) 

 

 

長々と書いてきましたが、現時点での結論としては、

 

愛知県内の尾張地区は、

  ① 蕃塀が無い(または極少ない)知多地域などは、切妻・妻入り舞殿タイプ拝殿も無い」

  ② 逆に、蕃塀あり地域の場合は、

    「蕃塀は無いが切妻・妻入り舞殿タイプ拝殿である」 というケースが多い。

 

 

福岡は、開放部三方向で、切妻造り。見た目がよく似ている。

 

滋賀は、開放部四方向で、入母屋造り。社殿の作り(構成)などが似ている。

 

このような感じでしょうか。

 

今後、愛知県の東部(三河地域)をはじめ、国内の他地域も追々調べてみるつもりです。

 


(愛知県名古屋市西区 六所神社)

 

 

 

それから、

国内にある「切妻・妻入りで舞殿型の拝殿」の分布と由来が知りたくて、

何故こういう形状の拝殿を作ったのかを神社側に伺ったこともあります。

 

結果、「なんでだろうねー?当時の判断でそうなったんだろうからねー」というお答えを頂くことが

とても多かったです。 (というか全部そうだった。(^_^; )

 

そりゃそうだ。

「再建時に今までと同じものを作った」としか言いようがないですよね・・。

 

地域の文化財については、役所の教育委員会の文化課とかが詳しかったりするので

愛知、福岡、滋賀に問い合わせてもみましたが、

やはり詳細はわからず。

 

 

ただ、福岡県内のとある役所にお電話した際、

「この地域の神社の建て替えの際に出てきた古い資料に、筥崎宮の宮大工の名があった」

というお話を伺いました。

宮大工によってそれぞれ流派みたいなものがあったのかもしれませんねーとの事。

 

なるほどー そういう見方もありますね。

 

筥崎宮って、確かに 『切妻・妻入り吹き放し型』 だわ。

検索ついでに色々と画像を見てたら、宗像大社とかもそうだったわ。

 

糸島市の高祖神社の公式サイトには、

吹き放し妻入拝殿が、旧筑前国福岡県北西部によく見られる」 という旨の記述があったし。

 

ちょっともう、福岡ステキ。

日帰りで簡単に行ける地域なら飛んでいくのに。

 

 

社殿を再建するときは、それまでの形や様式を踏襲するのが一般的かと思いますが、

切妻・妻入りで舞殿型の拝殿」 にしても、同様でしょう。

 

切妻・妻入りで舞殿型の拝殿」 という特徴を、神社建築の観点で調べてみましたが、

こういった拝殿はやはり「仏教建築の影響」を受けているようでした。

 


(奈良県奈良市 唐招提寺)

 

 

「仏教建築」といっても

主要なお堂などの建物は入母屋か寄棟がほとんどで、かつ平入りですよね。

 

一方で、僧坊や庫裏などの付属的な施設は切妻であることが多く、妻入りなんだとか。

似てるなーと思った鐘楼なども、同様の括りでしょうか。

 

 

福岡県北西部には切妻・妻入り開放型が多く、

西日本地域に入母屋・妻入りが多いのは事実である様子。

 

問題は、「なぜそこにあるのか?」です。

 

が、これは調べても答えは見つかりそうにないな。たぶん。

しゃーないので、とりあえず地道に全国規模で探していこう。

そしたらヒントも見つかるかもしれない。

 


(長野県茅野市 諏訪大社 上社 前宮)

 

こんな超マニアックな好みで神社に接している自分ってどうなのよって思いますけど、

参拝テーマの「縁ある神社めぐり」に、「切妻・妻入りで舞殿タイプの拝殿さがし」が加わって、

まだしばらくは落ち着きそうにありません。

 

 

 


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