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窪田写真事務所の「みどり通信」

窪田 誠の「視点」と「イベント情報」

「リニア中央新幹線計画」のいま

2013-11-11 21:48:33 | リニア中央新幹線
「リニア中央新幹線計画」のいま

)リニア計画と反対運動の歩み
 東京と名古屋・大阪を最短距離で結ぼうとするリニア中央新幹線計画は、1974年、当時の運輸大臣が国鉄に、甲府市・名古屋市付近で地形・地質調査をするよう指示したところから始まります。その後、オイル・ショックなどの影響を受け中断したものの、1990年には、解体された国鉄の後を受けたJR東海が山梨実験線の建設に着手しました。
 山梨県内では、この頃から「リニア反対」の声が上がり、現地見学や集会などが企画されていました。
 実験線の走行区間は、1997年に完成し、走行試験が開始されたのです。
 リニア計画に反対する動きは、2008年頃から注目されはじめ、翌2009年には、以前から反対の声を上げていたグループが、リニアについて検証し、それを問い直す市民団体「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」を発足させ、東京・神奈川・山梨・長野・千葉など、計画沿線の人々と賛同団体が参加するようになりました。現在では、岐阜・愛知の団体も新たに加わり、活動しています。


)リニア走行実験の再開
 2013年8月29日、山梨県都留市のJR東海山梨リニア実験線で、約2年ぶりにリニア走行実験が再開されました。
JR東海が1997年から始めた走行実験は、18.4キロメートルの区間で行われましたが、これを42.8キロメートルと、約2.3倍に延伸する工事のため実験走行を中止していました。この延伸工事が終了したため、今回の再開となったものです。
この走行区間延長により、これまでは4両編成で30秒間しか続けられなかった時速500キロ走行が、12両編成で1分半~2分間続けられるようになったわけです。
 この日は、華々しい「出発式」があり、JR東海の会長であり、リニア推進の旗ふり役でもある葛西敬之氏、太田国土交通大臣、さらに横内山梨県知事らが出席し、くす玉割も用意されるなど祝賀ムード満点のセレモニーが催されました。
マスコミ各社からの取材記者が100名以上も招かれ、空撮用のヘリコプターも飛んでいました。


)リニア新幹線と報道
 同日は、多数の来賓・見学者・取材陣とともに、「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」などのリニア計画に反対する市民団体も集まり、リニア実験線を見学できる、山梨県立リニア見学センター付近で、「リニア反対」のアピールを行いました。
 この行動を撮影したマスコミも多数ありましたが、結局、報道したのは地元紙の山梨日日新聞とNHKのローカルニュース枠だけでした。多くの取材記者がいながら、マスコミが取り上げたのは、「実験走行の再開」や「華やかな式典」、「試乗させてもらった感想」や「山梨県民の期待感」といったものばかりです。
さらに驚くのは、JR東海の広報発表をもとにしたのか、「地上に出た約7キロの区間では甲府盆地と山々の眺望が楽しめた」とか、リニアの走行姿を見たいという県民の声を反映させた、「少しでも見えるようにした方がいいですね」など、完成後は、地上部分が防音フードで覆われ、景色はもちろん走る姿さえ見えないという、事実を知らないコメントが報道されました。
 そして、現時点でのリニア新幹線の懸念される点、トンネルを掘った後の「残土処理問題」や「水涸れ問題」、9兆円ともいわれる「巨額な総工費」などはまったく報道されないのです。


)リニア新幹線計画の課題
 リニア新幹線計画は、東京~名古屋間、さらに大阪までをも直線で結ぼうという計画です。
私たちは、このような大規模な建設工事であるなら、そのメリット、デメリットをしっかりと検証してから進めるべきだと考えています。「夢の乗り物」といった期待感だけで歓迎するのではなく、地域の産業や観光などに、本当に役に立つのかを冷静に分析する必要があります。
 先に書いた問題点の他にも、東海道新幹線の3倍とも見積もられる消費電力は(JR東海がデータを公表しないので類推するしかありませんが)原発数基分ともいわれます。世界遺産登録を視野に入れる南アルプスに、中央構造線を横断する長大なトンネルを掘るという自然・環境への悪影響も懸念されます。電磁波対策も公表されないため、乗客や周辺住民への健康被害が心配されます。リニアは指令センターから操作される無人運転になるのですが、地震や火災などの事故対策も不安視されています。さらには、今後の人口減少社会のなかでの不採算性なども危ぶまれます。JR東海が赤字経営に陥り倒壊したなら、私たちの税金投入も予測されるのです。このように、問題点を数え上げればキリがないほどです。

 JR東海は、これらの課題に答えるデータを公表する義務があるはずです。
山梨県のリニア推進課は、地域に及ぼす影響を公正に分析し、また、JR東海に対しては安全性や環境への影響を判断するデータを求めなければなりません。
 それらの調査報告が公開されてはじめて、私たちはリニア中央新幹線計画を受け入れるか否かの判断ができるのですから。


        生活クラブ生協(山梨)の月刊『万華鏡』2013年10月号に載せた文章です。
                   リニア・市民ネット 窪田 誠

シンポジウム「リニアは必要か?」報告

2010-10-03 19:25:50 | リニア中央新幹線
  9.26「リニアは必要か?」シンポジウム

 9月26日「リニアは必要か?」と題したシンポジウムが山梨県甲府市で開かれました。
主催は、リニア中央新幹線計画に反対している「リニア・市民ネット」(川村晃生代表)。参加者は60人です。

 橋山禮治郎氏(千葉商科大学大学院客員教授)椎名慎太郎氏(山梨学院大学名誉教授)舩木上次氏(「萌木の村」社長)清水絹代氏(都留市議会議員、無所属)の4人のパネリストが講演をしたあと、参加者とパネリストの間で意見交換をしました。

全国自然保護連合の中山敏則氏がリポートを寄せてくださいましたので、紹介します。


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      ないものねだりはやめよう
     ~リニア中央新幹線計画を問う~
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■いまもっている宝物を活かすことが大切 ~すぐれた景観や地下資源など~

 印象的だったのは、舩木(ふなき)上次氏の話です。
舩木氏は、山梨県北杜(ほくと)市の清里で観光施設「萌木の村」を経営しています。国交省による「観光カリスマ100選」の1人にも選ばれています。「観光カリスマ」というのは、日本の地域観光振興を目的に、特色のある観光地づくりに貢献している人を指します。

舩木氏は、中央アメリカのコスタリカを引き合いに出し、「山梨県はリニア中央新幹線を欲しがるのではなく、山梨がもっているすぐれた景観や地下資源を大事にし、それを活かすことに力を注ぐべき」と述べました。
コスタリカは、面積が約5万km2という非常に小さい国です。すぐれた環境を大事にしてたくさんのエコツアー客を呼び寄せるなど、豊かさを誇っています。憲法の規定によって世界ではじめて軍隊を廃止した国としても有名です。

■「ちょっと待ってくれよ、山梨県民」

 舩木氏はこんなことを述べました。
「リニアに期待している山梨県民に対し、私はこう言いたい。“ちょっと待ってくれよ、山梨県民”と。山梨になにもないのだったら、リニアに期待することもいいだろう。しかし、山梨は、豊かで恵まれた自然や水、美しい風景、すぐれた地下資源をもっている。山に囲まれていう点では世界一である。これらが山梨の魅力である。それを大事にしないで、なんでリニアなの? と言いたい」
「山梨がもっているものを大事にするということは、それを冒(おか)すものを持ってはいけないということだ。山梨は、狭いエリアの中にすごい景観とすごい水を持っている。このような自分たちの持っている宝物を基本軸にし、どういう価値をもってそこに住むのかということが大事である。そのときに、“リニアは必要なの?”となる」

●山梨をどういう県にするかという哲学が必要だ

 私は「山梨にリニアの駅はいらない」と公言している。
それは、新幹線や高速道路が通って豊かになったり、栄えたりしているところがどこにあるのか、ということである。終着駅が一時的に潤っているところはあるが。
新幹線の途中駅で栄えているのは東海道新幹線の掛川駅ぐらいではないか。ここはすばらしいリーダーがいて、駅を活用し、ソフト面のまちづくりに力を入れている。それが成功している。
それから、長野県の佐久平(さくだいら)も、新幹線の駅と高速道路のインターチェンジができてから人口が増えて、経済効果もでている。しかし、その中身をよくみると、そこに住んでいる人たちが潤っているわけではない。住民は土地を売って一時的に成金になった。しかし、群馬や東京から外部資本がどんどん入り込んでいる。また、周辺地域はどんどん衰退している。

これは清里(山梨県)も同じである。清里は観光地化されて脚光をあびた。そこで、住民たちは民宿をはじめた。ところが、清里の人気がどんどん広がったら、経営を勉強したペンション業者たちが外部資本とともに乗り込んできた。その結果、40軒あった民宿は、いまでは1軒もないようになった。
いくら便利になっても、山梨県の人たちがそれを使いこなせるだけの能力をもっていないかぎり、その便利さは外部の人たちに利用されてしまう。
山梨をどういう県にするかという共通の哲学をもつことが必要だ。
その哲学をもたないでリニアの駅をつくっても、外部資本に利用されるだけだ。また、莫大な駅の建設費用は地元が負担することになっており、それが小さな山梨に大きな負担としてのしかかってくる。

山梨県知事に会った際、「リニアの駅が山梨県に必要だという理由を説明してほしい」と聞いた。そうしたら、「リニアが通るのだったら駅をつくらないわけにはいかないだろう」と答えた。
これが実情だ。リニアの駅が山梨にもたらす恩恵を納得できるように具体的に語れる人は一人もいないのである。

■スイスの人たちはリニアを望まない

「たとえばスイスに行ったとき、短時間で旅をする──。そんなことをするのは貧乏人だけだ。金持ちは、船に乗ってゆったりと旅をしているではないか。美しい風景で知られるスイスの旅はバスでゆっくりめぐるのがいい。スイスの人たちはリニアを望まないだろう」

「超特急のリニアを通すよりも、山梨県がもっているすぐれた財産を活かす知恵をだすことのほうがはるかに重要だ。ないものねだりをするのではなく、すでにあるものを大事にし、それを活かす。そういう発想をもたないかぎり、だれがリーダーになっても、山梨県民はコンプレックスをもちつづけることになる。交通の観点でいえば、リニアよりも在来の中央本線を整備したほうが山梨にははるかにメリットがあるはずだ」

 以上です。

なるほどと思いました。昨年8月の山梨県経済財政会議でこういうことを発言したら、ずいぶんと反響があったとのことです。

 また、翌日の山梨日日新聞にも珍しく記事が出ましたので、転載します。

2010年09月27日(月)「リニアは必要か?」市民団体がシンポ 環境や人体への影響で意見交換

 リニア中央新幹線整備計画の見直しを訴える市民団体「リニア・市民ネット」(川村晃生代表)は26日、甲府・県男女共同参画推進センターでシンポジウム「リニアは必要か?」を開いた。4人のパネリストが県民にとってのリニアの必要性や環境、人体への影響について意見を交わした。
 山梨学院大の椎名慎太郎名誉教授は「東京・品川駅から山梨に20分で着いたとしても(駅の位置によっては)甲府までの時間は中央線と変わらない。県民にとってメリットがない」と指摘。デメリットとして中央線が間引かれる可能性や、南アルプス貫通に伴う自然破壊の恐れを訴えた。
 「観光カリスマ」として知られる「萌木の村」の舩木上次社長は清里の観光開発を例に、「新幹線や高速道路が開通して地元の人が潤った例をあまり聞かない。まずは、どういう県にしたいのかという共通の哲学が必要だ」と、まちづくりの在り方を熟考する必要性を強調した。
 千葉商科大大学院の橋山礼治郎客員教授は電磁波が人体に与える影響を指摘。清水絹代都留市議は「地元に実験線があっても情報は少なく市民の関心は薄い」と、県全体で議論を深めるよう訴えた。
 山梨のほか、東京、長野のメンバーら約60人が出席し、パネリストの意見に熱心に耳を傾けていた。

以上です。


4人のパネリストがリニア整備計画の問題点を指摘したシンポジウム=甲府・県男女共同参画推進センター

リニア工事現地視察ツアーの報告

2010-08-09 17:15:20 | リニア中央新幹線
リニア工事現地視察ツアー
  ~2010年8月8日:IN 山梨~

 8日の日曜日、山梨県で「リニア・市民ネット」主催の「リニア工事現地視察ツアー」が行われました。
リニア計画沿線の、千葉・東京・神奈川・山梨・長野・岐阜の各都県、さらには大阪からも参加していただきました。
総勢43名、大型バスを借り切ってのツアーとなりました。

山梨県・大月駅集合で、最初は都留市にある「山梨県立リニア見学センター」に向かいました。

普段は閑散としている施設ですが、この日は夏休みの休日ということもあり、親子連れで賑わっています。

この写真は屋外展示されているリニア模擬車両内部です。
PRセンターは1階が売店、2階が展示、3階が展望フロアーになっています。

3階展望フロアー、中央奥の窓から見えるトンネルが実験線ルートです

2階展示フロアー

今回のツアーの概要、見にくいですが地図を参照してください

見学センターの次は、上黒駒トンネル掘削現場に向かいます。

写真右のトンネルは作業用のもので、実際のルートとなるトンネルはここのはるか左上方に掘られる予定だそうです

我々が知らないうちに着々と進められていく既成事実に一同驚きました

昼食のおにぎりをいただいて、次の見学場所へ


竹居高架橋工事現場 中央・手前の青いコンクリート橋梁が作られています

参加者全員集合 曇りで暑さも和らぎ見学には最適の日になりました

ここからは長距離移動、南アルプスの麓早川町まで移動です。

南アルプストンネル試掘現場 中央緑色の屋根のうしろ 岩の向こう側から左手に掘られています
目隠しは厳重でした

工事現場を避けて新たに作られた迂回道路上で説明を聞きました

今回のツアーに予定されていたものの 時間がなくてフォッサマグナは割愛
ここから約700メートルほどのところから露出面を見学できます。
いずれにしても、崩れ易い岩盤の近くです。
トンネルルート反対側の大鹿村現場といい、わざわざ地盤の悪いところを選んで掘っているような状態です。
信じられませんね。

ツアー参加の皆さんも、思いを新たにしたようです。
これからもいろいろな企画を考えていますので、よろしくお願いします。

3.28シンポジウムの報告

2010-03-30 12:04:27 | リニア中央新幹線
シンポジウム「リニア中央新幹線は必要か?」報告

「リニア中央新幹線は必要か?」と題したシンポジウムが 3月28日、都内で開かれました。主催は「リニア・市民ネット」(川村晃生代表)です。参加者は181人でした。
 五十嵐敬喜氏(法政大学教授・弁護士)が「公共事業の転換期を迎えて」と題して基調講演をおこなったあと、6人のパネリストからリニア計画の問題点が次々と指摘されました。
 たいへん中身の濃いシンポでした

   参加者の感想
「リニア中央新幹線が計画されていることは知っていたが、問題だらけであることははじめて知った」
「採算がとれないということがはっきりした。また環境破壊もすごい。中止させなければならないと思った」

■JR東海労に称賛の声
 このリニアシンポには、JR東海労働組合の組合員も多数が参加しました。同労組の鈴木富雄中央執行委員長もパネリストに加わりました。鈴木さんは、リニア中央新幹線計画にたいする同労組の基本的立場は「JR東海を第二の国鉄やJAL(日本航空)にさせてはいけない」「自然をこれ以上破壊してはならない」とし、従業員(労働者)が内部からみた計画の問題点を明らかにしてくれました。また、リニア計画の問題点を多くの人に知ってもらうために、他労組への働きかけや市民運動との連携強化も表明しました。
 JR東海労は、JR東海内の少数派組合です。しかし、リニア建設を強行すれば国民や従業員にしわ寄せがいくとして、中止を強く求めています。いまの日本では、このような労組は非常にめずらしい存在です。シンポのあとに開かれた懇親会(40人参加)でも、同労組にたいする称賛の声が相次いでだされました。

   新聞記事の紹介
  《リニア計画の問題点指摘相次ぐ シンポで専門家、住民ら》

 JR東海が東京―大阪で計画するリニア中央新幹線の必要性を検証するシンポジウムが28日、市民ら約200人が出席して都内で開かれ、専門家や地元住民らがリニア計画の経済的な見通しの甘さなどを指摘した。

 橋山礼治郎明星大教授(公共計画)は「1県1駅では乗る人も限られ、県内でも他の地域の人には何の影響もない」とリニアの利便性や経済効果に疑問を示した。電磁波環境研究所の荻野晃也所長は電磁波が人体に与える影響を指摘し「危険性が確定していない時は実施しないという予防原則の思想から、リニアは時期尚早」と強調した。

 長野県大鹿村で自治会長を務めるサイモン・ピゴットさんは、超音速旅客機コンコルドを例に「夢の飛行機と言われたが、騒音、設備維持のコストの高さ、経済性がないとの(運航中止の)結末だった」として、リニア計画の議論をより広く行うよう訴えた。

シンポジウムでは最後に参加者が「拙速な事業の推進に歯止めをかけなければならない」との集会宣言を採択した。
【『共同通信』3月28日】


  《リニア・南アトンネル「反対」市民団体、都内でシンポ 》

 JR東海が進めるリニア中央新幹線構想をめぐり、長野、山梨県などの住民らでつくる「リニア・市民ネット」(代表・川村晃生慶大教授)は28日、環境面や採算性などから必要性を議論するシンポジウムを都内で開いた。パネリストからは南アルプスを貫通するJRの長大トンネル構想に反対し、超電導リニア方式にも否定的な発言が相次いだ。

 両県や神奈川県、東京などから180人余が参加。「国民的な議論の中で方向性を決め、拙速な事業の推進に歯止めをかける」よう求める「集会宣言」を採択した。同ネットは今後、国の交通政策審議会鉄道部会に、意見を述べる場を求めていく。

 パネル討論では、南アルプスの地質に詳しい伊那谷自然友の会会員の松島信幸氏=下伊那郡高森町=が、南アの地中にはひずみが集中しているとし「掘削したトンネルがつぶれやすい」と指摘。トンネルからの出水が周辺の水枯れにつながる可能性も示した。

 JRが2008年、水平ボーリング調査を実施した下伊那郡大鹿村釜沢地区からサイモン・ピゴット自治会長が参加。「大都市の経済を優先させるために南アの自然が犠牲になってもいいのか」と発言した。橋山礼治郎・明星大教授(政策学)は「リニアは在来鉄道とのネットワーク性に劣るため、利用者の満足度が低く、収支悪化を招く」と述べた。
【『信濃毎日新聞』3月29日】

  JR東海の経営実態 ~JR東海労委員長に聞く~
■幹部報酬は年間10億円超

問 「東海道新幹線の非常に儲かっているイメージがある。しかしJR東海は、5兆円の借金をして旧国鉄から新幹線を買い取り、18年間でまだ2兆2000億円しか返済できていないという。それはなぜなのか」

答「そのウラには、幹部報酬や株主配当を高くしたりし、毎年の返済額を少なくしているということがある。JR東海の役員報酬は非常に高い。22人の役員で年間10億5000万円だ。1人平均で5000万円になる。これは平均であって、トップ連中の報酬は1億円を超える。また、株主配当の額も、一般の大企業よりも高い」
「幹部報酬は国鉄時代と比べ何倍も上がった。しかし、われわれ労働者の賃金は抑えられている。賃上げもずっとストップ状態だ」
「マスコミはそういうことをほとんど報じない。経営実態やリニア中央新幹線計画の問題点などを大新聞に伝えても、なかなか載せてくれない。たまに載せると、その記者はたちまち飛ばされてしまう。ジャーナリズム精神を持たない記者が多すぎる」

 いまの日本の病根を象徴するような話です。

役所と同じで、“公務員叩き”で一般公務員の賃金は抑制されていますが、幹部連中の給料はどんどんあがっています。中央省庁のキャリア官僚の生涯賃金は多い奴で8億円です。“わたり”(天下りを何度も繰り返すこと)によって、何度も高額退職金をもらったり、天下り先で高額報酬をもらったりするからです。都道府県の官僚も似たり寄ったりです。大新聞はそういう実態をほとんど報じません。




シンポジウム 集会宣言

2010-03-29 16:35:08 | リニア中央新幹線
        集会宣言
  ~シンポジウム「リニア中央新幹線は必要か?」~

 2007年12月、JR東海は突如リニア中央新幹線を単独事業として建設する意向を明らかにしました。そしてそれ以降、沿線自治体をはじめとする関係団体や住民の一部は、何かバラ色の未来が約束されたような錯覚に陥り、リニアをめぐる冷静な議論は棚上げにされ続けてきました。そこでは四国架橋や東京湾アクアラインなどをはじめとする大規模開発事業がこれまでことごとく失敗に帰したことなど全く顧みられることはありませんでした。
 本日、「リニア・市民ネット」と賛同団体は多くの市民とともにここに集い、おそらくはじめてのリニアに関する腰を据えた本格的な議論を行うことができました。そしてその結果、私たちはこれまで十分に議論もされず、また社会の中で共有されることもなかったリニアのさまざまな負の側面を明らかにすることができたと思います。それはたとえば、5兆1千億円(東京~名古屋間)と言う根拠不明の予算の問題であり、また人口や利用客の減少による採算の問題であります。それらはいずれ、負債の形をとって国民の側に投げ返されるのではないでしょうか。或いは電磁波による人体への影響という健康上の問題も、原発数基分が必要といわれる消費電力の問題も、また巷間活性化するといわれている地域振興の問題も、すべて未解決で疑問符がつくものであることが理解されました。
 そしてさらに、その美しい山容をもって知られる南アルプスをトンネルで貫くという重大事も指弾されなければなりません。この愚挙とも言うべき大事業は、結果として南アルプスの山霊を泣かしめ、また怒らしめ、いずれ私たちはその報復を受けねばならないでしょう。それが地すべり地のトンネル崩壊という形になって表れるか、或いは私たちには予測もつかない何か技術上のトラブルとなって表れるか、それは神のみぞ知ることです。そして一方で南アルプスを世界自然遺産にと願う人たちがいる中で、一方でトンネル穴を開けようという人たちもいる、この矛盾した状況に対しても、私たちは開発か自然かという社会全体の問題として議論をつめていかなければならないと思います。
 最後に、このリニア中央新幹線計画を遂行しようとするJR東海が、諸費用や環境などすべての面にわたって情報をいっさい公開しないという点も厳しく糾弾されなければなりません。鉄道の公益性という点に鑑みても、その情報は社会全体で共有されるべきであり、そこから導き出されるさまざまな問題は、国民的議論の中で方向性が決められていかねばならないと考えます。
 私たちは本日のこの議論をもとに、リニアが抱える本質的な問題をいっそう鮮明にし、拙速な事業の盲進に歯止めをかけねばならないと思います。そしてそのために私たちの力を結集して、次の行動に移していくことを宣言します。

 2010年3月28日
              シンポジウム「リニア中央新幹線は必要か?」参加者一同

3.28「リニア・シンポジウム」のご案内

2010-01-31 18:02:35 | リニア中央新幹線
シンポジウム
リニア中央新幹線は必要か?
(東京~名古屋~大阪)

財源は大丈夫? 自然環境を破壊しないか? 技術に不安はないのか? 電磁波など人体への影響は? エネルギーはどうする?

基調講演
「公共事業の転換期を迎えて」
五十嵐敬喜 法政大学教授・弁護士
コーディネーター
川村晃生 慶応大学教授(環境人文学)
パネラー
荻野晃也 電磁波環境研究所所長 元京都大学工学部講師
橋山禮治郎 明星大学教授(政策学)
鈴木富雄 JR東海労働組合 中央執行委員長
松島信幸 環境団体「伊那谷自然友の会」常任委員
サイモン・ピゴット 長野県大鹿村住民・自治会長
野沢今朝幸 山梨県笛吹市市議会議員

と き 3月28日(日)13時より開場12時30分
ところ 北トピア飛鳥ホール(JR京浜東北線王子駅下車2分)

〒114-8503 東京都北区王子1-11-1 03-5390-1100
参加費500円
主 催 リニア・市民ネット
賛同団体 ガウスネット/全国自然保護連合/みどり・山梨/JR東海労働組合/
       青い空の会/日本消費者連盟
          *賛同団体募集中賛同金一口1,000円
連絡先:〒400-0014 山梨県甲府市古府中町984-2 055-252-0288(川村晃生)
〒207-0016 東京都東大和市仲原3-10-1 C-201 042-565-7478(懸樋哲夫)

シンポジウムにご参加を!
「走るはずがない」と思われていたリニア中央新幹線計画が息を吹き返した。JR東
海と行政の話を聞けば、よいことずくめである。しかし金銭面でも環境面でも、いずれ
市民のお荷物になる可能性が十分にある。
美辞麗句に惑わされず、リニア計画について多面的にそして冷静に議論してみよう。
お荷物になってからでは遅いのである。
         リニア・市民ネット代表川村晃生

講師・コーディネーター・パネラー紹介
五十嵐敬喜( いがらしたかよし)
法政大学法学部教授。弁護士。専門は立法学、公共事業論。「公共事業チェック機構を
実現する議員の会」オブザーバー。自宅にて、住民法律センターを開設。著書『図解公
共事業のしくみ』ほか。

川村晃生( かわむらてるお)
慶応大学文学部教授(環境人文学)。文学から自然や環境問題を考察する。リニア・市
民ネット代表。全国自然保護連合代表。みどり・山梨代表。著書『壊れゆく景観- 消え
てゆく日本の名所』『日本文学から「自然」を読む』など。

荻野晃也( おぎのこうや)
電磁波環境研究所所長、元京都大学工学部原子核工学講師、理学博士。電磁波による
健康被害の問題での日本における第一人者。著書に『ガンと電磁波』『健康を脅かす電磁
波』『危ない携帯電話』など。

橋山禮治郎( はしやまれいじろう)
明星大学経済学部教授、アラバマ大学名誉教授。経済政策、公共計画、都市・地域論
などを専門に研究し、巨大公共プロジェクトの失敗例を考察、リニア問題にも長年にわ
たり取り組み、発言してきている。

鈴木富雄( すずきとみお)
JR東海の四つある労働組合の内の一つ「JR東海労働組合(略称JR東海労)」(組
合員約450名)の中央執行委員長。JR東海で唯一、リニア中央新幹線に疑問を投げかけ、
定期大会で「反対」を決議。

松島信幸( まつしまのぶゆき)
環境団体「伊那谷自然友の会」を発足させ25年目(現会員数1200名)。専門は地質学(理
博)。南アルプスと中央アルプスの成立と伊那谷活断層帯の発見、中央構造線の地震履歴
を解明する。著書に『伊那谷構造盆地の活断層と南アルプスの中央構造線』(共著)など。

サイモン・ピゴット(Simon Piggott)
長野県大鹿村住民で自治会長。翻訳家。2 0 年来、日本での山暮らし。リニアが通過
すれば、1 4世紀からあったここの集落は存続できなくなるとの危機感から、地域の声を
代表しJ R 東海に説明を求めている。

野沢今朝幸( のざわけさゆき)
山梨県笛吹市市議会議員。元芦川村村長。みどり・山梨副代表。市民派議員として独
自の政治スタンスで活躍中。数少ないリニア反対派の議員でもある。


え~ 世界遺産候補の南アルプスに穴あけていいの?

2009-03-10 16:41:39 | リニア中央新幹線
    夢の乗り物?「リニア新幹線」のホント

今、山梨・長野で話題になっている「リニアモーターカー」というものを知っていますか?

JR東海が、東海道新幹線のバイパス機能をもたせるために、リニアモーターカー(通称リニア)の新幹線で東京~名古屋間を50分で結ぼうとしているのです。
現在の東海道新幹線沿いに走らせるのではなく、東京から神奈川・山梨・長野・岐阜をまわって名古屋に至るルートです。
中央リニア新幹線といわれ、建設費は5兆円を見込み、南アルプスにトンネルを掘って通そうという計画です。

山梨では早くも駅の誘致運動が始まっていますが、このリニア新幹線がどんなものなのかは検討されていません。
現状は「オラが町に電車が通る」くらいの感覚でしかないようです。
「リニア」は必要性はもとより財政的・技術的課題、環境破壊、電磁波の影響など、さまざまな問題があることが指摘されています。
これらの問題が解決されなければ、私たちや未来世代にとって大きな負担、マイナスになってしまいます。

ここでは簡単にそれらの問題点を挙げてみたいと思います。

(1) 建設費
JR東海では、5兆1,000億円の建設コストという予算を出しています。
しかし、公共事業というのは当初見積もり予算の平均3倍かかって完成する事業といわれていて、実際には15兆円は必要になると思われます。
しかもこの数字は、15年も前の資材費用見積もり額からつくられていて、現在価格と大きな開き(不足額)があると思われます。
さらに、万が一経営破綻した場合は公共交通のため、税金の投入は避けられません。
莫大な費用のかかる(長大な引き込み線などのために)中間駅の建設費は地元の負担ということですから、自治体の破綻も考えられます。

(2) 環境問題
リニア新幹線のウリはスピードで、時速500㎞以上。当然カーブのない直線路線が望ましいため、南アルプス直下をトンネルで通過するルートを予定しています。
南アルプスはその奥深さもあって自然が豊かに広がり、貴重動植物の宝庫です。地元の人たちにより、世界遺産登録に向けての準備も進められています。
また、ここには有名なフォッサマグナ(糸魚川~静岡断層)があり、トンネル掘削となると大工事というだけでなく、水脈の変化や生態系の破壊が危ぶまれます。
このような環境に大きなダメージを与える工事は、世界遺産登録はおろか環境保全の面からも再考の必要がありそうです。

  

(3) エネルギー問題
リニア新幹線についての電力容量は未発表です。
試算するしかありませんが、1両に100人座るとし、1列車が(16両として)32万キロワット。
少なく見積もっても1日にのべ150本以上の列車が走るとすると、同時に8~9列車が動いていることになり、これは新たに原子力発電所3基は必要になります。

原子力発電は、廃棄される放射性物質を数十万年にわたり管理しなければならないもので、その間のコスト・危険性を考えれば決して安くも、クリーンでもないエネルギー。
本来なら古いものから廃炉にして、自然エネルギーに転換するべき時代の流れです。

(4 )電磁波問題
JRのリニアモーターカーというのは超伝導磁気浮上式といって、簡単にいえば磁石の反発力を応用して動かすものです。
とはいっても、列車のような重いものをしかも高速で動かすのですから、私たちが想像する以上の磁力を発生させなければなりません。
携帯電話や電子レンジからの電磁波の影響が言われていますが、リニア新幹線はその比ではありません。
また、心臓ペースメーカーの使用者は乗れない、などの話もありますが、人体への生理的影響はいまだ不明になっています。

(5) 人口減少と需要問題
日本はこれから人口が減少していきます。
現在の東海道新幹線の利用状況から換算した利用予測では正確さは期待出来ません。
さらに重要なのは、東京~名古屋(大阪ではなく)間ですから大阪へは乗り換えが必要になり(大阪~名古屋を新幹線で利用する人いるんでしょうか?)利用者は激減しそうです。

(6) 沿線都市の衰退問題
これは、かなり重要な問題になります。
(2)でも触れましたが、リニア新幹線はそのスピードが売り物です。
駅が多ければ、加速する間もなく減速という繰り返しで、何もメリットがなくなります。
速さ・建設コストを考えれば、中間駅は少ないほど利便性があるわけで、沿線都市との矛盾です。
沿線都市に駅ができたとしても、駅に行くまでの時間はかなりかかると予想されます。

高速移動を求める起点・終点都市の利用者にとっては便利かもしれませんが、それ以外の都市は単なる通過都市(道路なら下車もできますが高速列車では途中下車は少ない)になります。
高速道路の例を引くまでもなく、沿線は衰退する可能性が高いのです。


以上、問題点を6つに分けて考えてみました。
これらの問題がクリアーになり、多くの人たちに議論していただければ、リニア新幹線をどのようにすべきかの結論も出せると思います。

リニア学習会 (2009.2.7)の報告

2009-02-08 09:13:45 | リニア中央新幹線
   「リニアは夢の乗り物って ホント?」

2月7日山梨でJR東海のリニア中央新幹線計画について考える市民団体「リニア問題を考えるネットワーク」が生まれました。
この学習会には、山梨・長野・神奈川・東京・千葉から市民や議員約30人が集まり、伊藤 洋氏(山梨県立大学学長)による講演の後、意見交換があり結成されました。



講演では、リニアモーターカーの原理から始まり、その必要性・財政問題・電磁波の影響・環境破壊などさまざまな問題が指摘されました。
これを受けて、参加者の意見交換から、リニアが私たちや未来世代の生活と深く関わるものであるため、関心をもつ人たちのネットワークをつくりながら、その問題を多くの人に知ってもらう必要があるということになりました。

今後「JR東海の中央リニア新幹線」という言葉や単語を耳にすることがあると思います。
そんな時は、この報告あるいは「リニア問題を考えるネットワーク」を思い出してみて下さい。
また、多くの人に“夢の”ではなく本当のリニアの姿を知って頂きたいと思っています。

問い合わせ先 みどり・山梨 055-252-0288
                  または             
              055-224-4090(窪田)

なお、3月8日に近隣5都県の有志による、第1回のネットワーク会議が甲府で開かれます。