若草幼稚園 岡林道生 園長にご相談して、「高知ファンクラブ」でも連載させていただく事にしました。
高知市若草南町にある若草幼稚園は、幼稚園が所有する「すくすくの森」を活用した体験教育を早くから実施している事で有名です。
いま全国的な盛り上がりの中で、高知市神田の「アジロ山自然の森」をはじめ、県下でも「森のようちえん」に関する取り組みが高まって来ています。
この盛り上がりを一過性のブームに終わらせないで、
森林率84%で全国一を誇る、"森の国・高知"ならではの、「かしこくてたくましいこどもを育てたい」という、親をはじめとする、みんなの共通の願いを実現するための、取り組みの大切な一つとして、「もりのなかでこどもはかがやく」を応援していけたら・・・と考えています。
先進の「若草幼稚園」と連携しながら、高知にふさわしい「森のようちえん」について、今後特集しながら、みんなで考えて行けたら・・・と思っています。
すくすくの森で、焼いもイベント・・・若草幼稚園児に同行しました
「すくすくの森」と子どもたち~21年の歩み~
若草幼稚園 岡林道生
1 なぜ子どもたちに森を
(2) 社会の変化と子どもの問題
高度経済成長とともに、子どもたちの遊び場が失われていったことは周知の事実です。所々に公園が設置されていても、もはや子ども一人で自由に行ける場所ではありません。そして今の子どもたちは、戸外で友達と遊ばなくても十分に楽しめて夢中になれるテレビやビデオ、ゲームなどで多くの時間を費やすようになりました。
今から、32年前のことだったと思います。3歳で入園してきたAくんは、幼稚園にいる間中、ガッチャマンのポーズをとりながら「ガッチャマン、ガッチャマン、」といって走り回り、何を聞いても「ガッチャンマン」としか答えませんでした。お母さんに聞いたところ、赤ちゃんの頃からガッチャンマンのテレビが大好きで、それを見ていればおとなしくしているので、起きている殆どの時間をそれで過ごしていたのです。また、そのことにお母さん自身もまったく問題を感じてこなかったようでした。
Aくんの姿は極端な例であるにしても、戸外で群れて遊ぶ条件を失うことで、子どもたちが段々変わってきていることが肌で感じられました。自ら戸外に出て身体を使って遊ぼうとしない子ども、汚れることが嫌いな子ども、暑さや寒さに弱くなり、ちょっとした環境の変化に戸惑い、泣く子どもが多くなりました。
また、自分の気持ちを相手にうまく伝えられなかったり、すぐにあきらめたり、衝動的なふるまいをする子どもも増えてきたように思いました。気になる子どもが目にとまるようになり、何かがおかしいと感じるようになりました。
河合雅雄氏は「子どもと自然」のなかで、「私がことあるごとに自然に親しもうと呼びかけてきたのは、密室から出て物との対話から離れ、いのちあるものとの対話の日常を親しむようにしないと、感性は潤いを失って無機質になり、やがて萎縮してしまうのを恐れるからである。」(注)と述べています。
この本には後年出会い、多くの示唆を受けたのですが、自然の中にいる子どもたちは、水を得た魚のように本来の力を発揮し、生き生きと活動します。もっと、子どもたちを自然の中に連れ出したい、生命のあるものに触れる生活をさせてやりたい、このような思いをのせて、森探しが始まりました。
(文中の画像は、若草幼稚園より提供していただいたものを中心に、編集者が選んで挿入したものです)
〔『保育の実践と研究』(第15巻第2号)より転載〕
HN:ちるどれん
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