Aquascooter Maintenance for Spearfishing アクアスクーターで魚突き 全76回

使いこなそう、アクアスクーター整備ノートby KosakaNatsuki

**全76回で終了済み**

Blog 第56回 強風で水没し、簡易整備=小坂夏樹=Flooded by High Sea

2017年06月25日 | マニュアル
強風と波とで水没
陸上でも19mの最大風速となった前回の遠征最終日に、錨を打っておいた本機が水没してしまった。
スノーケルに取付けた旗が海上の強風で煽られ、波も高くなってスノーケル先端を何度も水に突っ込んでしまったようだ。錨で本体は曳き止められ、スノーケル・赤旗・排気ホースに掛かる風圧で全体が前方回転気味だ。


何かヒントになるかとこんな状態で写真を撮ってみたが、空気室、燃料タンク内の空気量でバランスは変化する。水面で試さぬと何の意味も無いようだ。

この時は錨を打った周囲でアカハタを狙っていたが、錨を使わねば風で本機と共にあっという間にポイントから離されてしまう状態だった。
急激に強まった風・波に恐怖を感じ、本機に戻ると既に前傾して沈込み、更に風に煽られている。慌ててボードに載せて日光に透かして見ると空気室半分以上に浸水していた。排水し、駄目元でロープを引いてみたが、やはり始動はしない。
それ以上の作業もできないので本機を載せたボードに上半身を預け、正面からの風波に叩かれもみくちゃにされながら500m程の距離をやっとのことで戻った。岸寄りで短距離だったので助かった!

強風時はそもそも入水を避けるべきだが、敢行するなら今後は旗をスノーケルに取付けず、ボードに独立した状態で取付けようかと考えている。ボードに倒して載せて置けば風の抵抗は減るし、安全の筈だが、波があるとすぐに落されてしまう。かと言って、縛り付けるとボードごと引っ繰り返ってしまう。

独立した旗としては、棒に梵天を挿して下に錘を付けるのが普通だ。しかし梵天無しで棒の適当な位置に紐を縛っておき、曳航する梵天やボードに引掛けるだけでも構わない。邪魔と感じたらフックを外しボードの上に倒して置くことも簡単だ。

これは釣用の錘をゴルフシャフトに挿し込んで接着しただけのもの。見辛いが2カ所に紐輪を固定してある。銛と一緒に携帯するのも簡単だ。強風でもこれがぶらぶら揺れるだけで済み、本体やボードには影響しない。

梵天やボードなどの嵩張る道具は常宿に預けてあるが、他地域への遠征の場合には私はゴムボート式のダイビングフロートを使う。空気充填が必要など少々面倒で、また保管にも気を使わねばならない。そして風の抵抗が大きい。しかし本機を立掛けたまま安定して載せておける上、魚を放り込んでおけるなど有利で、もっと使おうと云う気もある。波が打付けている海岸から出入する場合も、これに本機を載せておけば岩にぶつけることもなく安心だ。



他の方法としては、カタログに載っている Comer純正の風船の様なものをスノーケルに挿すか、根元或いはタンク前端に梵天を追加する手もある。


なお、梵天無しで本機だけを錨で停めて置く場合は、流れが強いとその抵抗で本機が押し沈められることがあるというから、こちらも要注意だ。錨で本体が後ろ斜め下に引かれているところへ潮流の力が水平に前へ押す。ベクトルの合成で下方への力が掛かるという訳だ。梵天を介在すれば後ろ向に引く力は水平になるからこれは防げる。
大物に引込まれて浸水と云うのも諸兄が経験しているようなので、梵天などの併用は必須だ。

スノーケルには延長パイプが付属しているが、私は殆ど使ったことはない。波だけが高い場合はよいが、強風時は却って心配になるからだ。今回の場合、長くした上で赤旗は低い位置に付けていたなら有効だったかもしれない。


上陸後すぐにクランク室から大量の排水をし、プラグを替えて再始動はOKとなったので、場所を変えて1時間ほどは使用した。

こんな浸水の場合はすぐに手入れをするべきだが、しばらく運転したので内部の排水は進んだ筈だと思い、また遠征の疲れでそのまま持帰った。2日後になって混合用のオイルをプラグ穴から注入し、更に数日たってからやっと整備に取掛った。


簡単に後始末整備
これまで何度も苦い経験をしたので、キャブレタは点検のため取外した。露出した吸気ポートに細いファイバースコープでも使えばクランク室の状態が分かるかもしれない。そんなことを考えながら、本体を回転して吸気ポートから注入しておいたオイルを排出した。見れば特段水の混入も無く、コンロッドもきれいに見えるのでそのままで使うことにした。

ガスケットは分解時に破れてしまったので、削り取ったが、ゴミが入らぬようティッシュペーパーでポートを塞いで作業した。予めガスケットにシリコーングリスを塗布しておくと、こびりつかず、殆どの場合再利用が可能だ。


キャブのポンプ部はきれい


上部燃料溜りも問題ないようだ。


しかし流量調整膜の大気圧側は、空気室から海水が入ったと見えて僅かだが塩が析出し、上の写真下端の如く蓋の内側にもごく薄っすらと付着していた。

この膜/ダイアフラムは輪状の溝が消え全体にたるんで、ボケた様な状態なので交換したくなったが、調子は良かったので再使用した。簡単に水洗したが、塩は僅かに付着したままだ。

これまではしわが寄ったり凸凹と変形している場合が多かったが、全体にたるんだ方が調子は良いような感触がある。保管中の姿勢、キャブの残燃料の質と量とで変化があるか、比較試験をすれば何か得られるかもしれない。


こんな程度に軽く整備しただけで、今回の作業は終りとした。


加圧確認
液体ガスケットをエルボなどに塗布しつつ完全に組立を済ませ、自信!を持って加圧浸水試験をしたところ、何と吸気ポートから激しく泡が漏れる。
慌てて分解すると、自作ガスケットが不良だった。前回悩まされたスタータケース周りと干渉しそうに感じてガスケットの一部を切取過ぎた詰らぬ失敗だ。
最近は必ず簡易ポンプで加圧して漏れを確認しているが、いじったら必ず確認したい。

すっかり無駄な作業になってしまったと反省し、その後はこの写真の様に、キャブを取付けた段階で先ず加圧試験をした。チューブ類は適当なもの(ここでは時計ドライバ)を挿して塞ぎ、キャブは親指で押さえている。


今度は漏れも無かったので、再度完全に組立して加圧試験を無事済ませた。

キャブを分解しただけでいじってはないので、始動性はこれまでと変わらぬ感触だ。
以上

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