東京昆虫記

東京の自然環境に棲む昆虫たちの生態写真
.My Real Insects Photo Style in Tokyo.

房総へ 最終章

2013年06月28日 | トンボ
時は正午前、そろそろモートンイトトンボの産卵タイムに突入という事で、モートンイトトンボが多産する湿地に案内していただいた。

モートンイトトンボ (交尾)

D700+AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED

ネアカヨシヤンマの羽化を観察した湧水湿地でもこのモートンイトトンボが多数見られ、この交尾個体はネアカヨシヤンマの羽化観察の合間を縫って撮影したもの。モートンイトトンボの交尾は早朝に行われる為、早起きが苦手なトンボ屋さんは残念ながら見る事ができないシーン。

モートンイトトンボ

D300S+AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED
小さくか細いトンボではあるがオスの体色は美しいく、毎年の発生時期には必ず見ておきたく、この美しいさゆえに人気を呼ぶ。

さて、産卵を撮影しようと湿地に浸かり込み、お地蔵さんになりすましながらメスの様子を伺っていると、西田さんからお声がかかったので、そちらに向かってみるとそこにいたのは...

モートンイトトンボ ♀(羽化直後)

D300S+AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED

小さなイトトンボなので羽化個体を探すのは至難の技。そこは流石の西田さん。淡い黄色ともオレンジ色とも言い難い美しい羽化色を堪能させていただき、再びモートンイトトンボの産卵個体を探し、湿地の中でお地蔵さんのフリをして産卵撮影にとりかかった。

モートンイトトンボ ♀(産卵)

D300S+AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED
メスの産卵はかなり神経質で、こちらの気配を察知されると直ぐにやめてしまう為、湿地の中で産卵しそうなメスを見つけ、その場でお地蔵さんのフリ。産卵を始めたところを見計らい、水面に波を立てないようにゆっくりと慎重にカメラを向けシャッターを切る。根気と集中力が必要とされるシーンである。

オオイトトンボ(連結産卵)

D300S+AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED
モートンイトトンボの生息湿地と隣り合わせにある、水面が浮草で覆われた池ではオオイトトンボが産卵の真っ最中。これを撮影して今回の房総遠征は終了とした。

最後に3人揃って記念撮影

左から西田さん、中央が僕、右が加納さん。今回の房総遠征ではネアカヨシヤンマの羽化観察を始めとして、案内していただいた場所の環境、湿地の状態は非常に素晴らしく、僕が東京で訪れている場所とは水量と植生の違いを理解でき、この先の活動に繋がる貴重な経験ができた。

PS:今回お誘いくださいました西田さん、加納さん、充分に楽しませていただいき素晴らしい一日でした。ありがとうございました。感謝しております。また誘っていたたければ嬉しいです。

撮影日:6月22日

撮影地:千葉県房総丘陵

房総へ その2

2013年06月27日 | トンボ
ネアカヨシヤンマの羽化観察を堪能したのち、山中を出て次に向かった先は人里にほど近い谷戸の溜め池。

溜め池

西田さん撮影。水質はあまり良くはないがアシと花をつけたカナダモが一部に見られ、開放水面が多く確保されている環境池。水面に浮いて見える黄緑色の物体はアオミドロ。そして、写真中央の水際でうずくまっているヤツは僕。何を撮影していたのかは後ほど。

この溜め池ではムスジイトトンボの姿が多数見られ、交尾や産卵の時を迎えていた。

ムスジイトトンボ (交尾)

D300S+AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED
都内でも沿岸部の池沼に多いとされ、その分布域からすると都立東京港野鳥公園内の池にも、ゴッソリと生息していてもおかしくはない種類なのだが、今のところ確認はできていない。

水際を歩きながら羽化個体でもいないか探していると、連結産卵をおこなう別種のトンボを発見した。

ホソミオツネントンボ(連結産卵)

D300S+AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED
水際でうずくまりながら撮影していたのがコチラ。写真はペアとなりイグサ科であるコゴメイの茎中に産卵をおこなっている様子。このメスは褐色の強い個体であるが、オスよりも少し薄い水色になるタイプのメスも見られる。越冬から覚め成熟した個体が、田植えの時期と同時に姿をあらわし、生殖活動をおこなうホソミオツネントンボ。房総の田植えはゴールデンウィークに行われ、すでに生殖活動期のピークは過ぎているものの、こうして産卵するペアの姿が観察できて嬉しい。殆どのトンボは幼虫(ヤゴ)の期間が長い種類が多い中、このホソミオツネントンボは成虫の期間が非常に長く、越冬期間を含めて10ヶ月以上この姿で生存を続けているタフなトンボ。細身ながらもそのタフな部分にも魅力を感じ、発見すると必ずカメラを向けたくなるお気に入り。場所によってはそろそろ次の世代が羽化を始める頃だ。

両種ともにオスは目を惹く美しいブルーを魅せる。ムスジイトトンボは池の中にある藻類を産卵植物として好み、ホソミオツネントンボは水際に生えるイネ科やイグサ科などの細く柔らかい植物を好んで産卵する。両種ともに抽水、沈水などの水生植物と密接な関係にあり、そういった水生植物との繋がりからトンボを知るのもまた楽しい。

撮影日:6月22日

撮影地:千葉県房総丘陵

房総へ その1

2013年06月25日 | トンボ
久しぶりに都内を離れて千葉県の房総半島へと訪れた。どうしてもネアカヨシヤンマの羽化を観察したいと、トンボの生態写真家として高名である大先輩の加納さんと西田さんに志願をしていたところ嬉しくもお誘いくださり、房総の山中にある湿地帯へと案内していただいた。

ネアカヨシヤンマの生息湿地

D700+Sigma 15mm F2.8 EX DG Diagonal Fisheye
藪をぬけ出た先に広がる素晴らしい景観。ここは谷戸の地全面が湧水で満たされており、カンガレイをメインに多種類の水生植物が繁茂する湿地環境。まさか房総にこれほどまでに素晴らしい湿地が存在していたとは想像もしておらず感銘を受けた。

先陣を切る西田さんに次々と羽化個体を発見していただいき、撮影する事ができなかった種類も含め、ネアカヨシヤンマ、マルタンヤンマ、ギンヤンマ、オオシオカラトンボ、ハラビロトンボ、ヒメアカネが羽化の時を迎え、美しい姿を見せてくれていた。

マルタンヤンマ ♂(羽化直後)

D700+AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED
夜中には羽化を済ませ夜明けとともに飛び立ってしまうマルタンヤンマであるが、夜半過ぎまで降り続いた雨により羽化の時間が遅れたのか、嬉しくも翅が閉じている状態をカメラにおさめる事ができた。

では本命のネアカヨシヤンマ。

ネアカヨシヤンマ ♂(羽化直後)

D700+AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED
体色は黄色と少し紫色をおびた褐色が交互に並ぶ縞模様。まだ濁りのある淡いブルーの複眼を見せる羽化の姿。

同個体の数時間後

D700+AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED
だいぶネアカヨシヤンマらしい姿に変わりゆく時。


雲が浮かぶ青空を背景に広角撮影

D700+Sigma 15mm F2.8 EX DG Diagonal Fisheye
左側に写り込んでいるのは西田さん。何やら良いポジションを見つけた様子で、この位置から撮影されたものと、加納さんからも素晴らしい瞬間をとらえたものをいただきましたので掲載します。

撮影者:西田 時弘

SONY α99 SLT-A99V レンズ:135mm F2.8 [T4.5] STF
西田さんは背景の抜けたヤンマの側面、半逆光にカメラポジションをとり、ボケが世界一綺麗と言われている135mmのレンズで撮影。朝の光を上手くとらえた美しい一枚。

撮影者:加納 一信

Nikon D800+Sigma MACRO 105mmF2.8 EX DG
加納さんは羽化殻から離れて飛びゆく瞬間。成虫の複眼と羽化殻にピントが合致しているこれもまた見事な一枚。
流石、ベテランを感じるどちらも素晴らしい写真。僕にはどちらも撮れません。

ネアカヨシヤンマの羽化撮影を堪能したのち、別のトンボを求めて車を走らせた。

つづく...

撮影日:6月22日

撮影地:千葉県房総丘陵

樹木に群がる

2013年06月19日 | 
マイマイガの幼虫

D80+Sigma 15mm F2.8 EX DG Diagonal Fisheye+Sigma Electronic Flash Macro EM-140 DG

冬場に観察をしたマイマイガの卵塊が孵化を済ませて毛虫になり、ただいま成長中。異常なほどに発生していて園内の至るところで観察することができている。写真は大小色模様も様々な個体群が樹木に群がっていたところを撮影したもの。近寄って観ると綺麗なのだが、僕は毛虫が苦手。子供の頃、刺されてひどい目にあってから毛虫が嫌いになってしまった。この時期にいる野鳥にとっては格好のエサとなっているようで、ムクドリがごっそりとくわえている姿をしばし目撃できるようである。

撮影日:6月2日

撮影地:都立東京港野鳥公園

夏本番直前

2013年06月18日 | トンボ
オジロサナエ ♀(羽化)

D700+AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED
先日、撮影したヒメサナエと入れ替わるように羽化のピークを迎えていたオジロサナエ。羽化中の個体は体内に残る余分な水分を徐々に腹部先端から排出する。この画像はその排出された水分が水滴となり落下していく瞬間をとらえた画。腹部先端の数センチ下に写っている円形のものがそれである。
トンボの羽化は早朝に行われ早起きしないと観察が難しいと思われがちであるが、先日に撮影したヒメサナエやこのオジロサナエは正午を過ぎてからでも羽化を行なう個体が多く、早起きが苦手な人でも羽化の観察が安易。一度は自然の中でトンボの羽化シーンを観察してみたいという方にはオススメな種類である。

オジロサナエ ♀(未成熟個体)

D700+Sigma 15mm F2.8 EX DG Diagonal Fisheye
突然、虎縞模様で小型のトンボが現れて石に静止。何奴?と思い近寄って確認するとオジロサナエの未成熟個体。いまさっき羽化の観察をしたばかりなのに早くもここまで成長している個体がいるとは驚いた。羽化後どのくらい経過した個体であろうか。鮮やかな黄色い模様がものすごく印象深かった。

撮影日:6月9日

撮影地:東京都多摩川水系支流域