kochikika ノート

旧「こちら某中堅企業企画室」。リーマン話、時事の話、パリーグ話など。ぼちぼちやってます。

日経主催M&Aセミナーでの話

2005-07-11 23:14:57 | 仕事関連
本日は日経主催のM&Aセミナーに行ってまいりました。
中身は半ば共催のデロイト・トーマツさんの宣伝みたいなものでしたが(無料でしたからね)、それはそれでためにはなりました。
後援が経済産業省でしたから、国も望んでいるのですね。

中でも面白かったのは、最後のパネルディスカッション。
登場のパネリストは、商法関係ではよく名前を聞く弁護士さんと、某大手印刷会社の経営企画担当の常務さん、そして㈱アドバンテッジ・パートナーズ(以下ア社)の代表の人。

このア社って知らなかったのですが、国内の再生が必要な会社を買収、再生し、転売するファンドを運営しているとのこと。
何でもダイエーの再建にも関わっていて、あの林CEOを連れてきたのだそうで。丸紅だけは印象に残ってたんですけどね。

ファンドの利回りは公表してないそうですが、「勝率」は7割を超えるのだとか。
まあこれだけ聞くと「ハゲタカ」になるんでしょうが、どうしようもない状況にあった会社を7割の確率で再生させたのは事実ですから、拒否反応を示す人もこれは素直に評価しなけりゃいけないんじゃないかと思います。

で、ア社の中の人から興味深かったコメントをいくつか。

コメントその1
「今まで再生を手がけてきた会社について共通点がある。それは株主から様々な制約を受けていることだ。その制約は資本の内外を問わず存在する。我々が株主になるとその制約からフリーになる。それが買収企業を成長させる」

…事例として、ある外資系の粉ミルク製造会社の例を挙げておられました。この会社は米多国籍企業の日本法人だったのですが、親会社の方針により、設備投資と広告宣伝が認められていなかったそうです。

前者の理由は、日本法人が全世界の現地法人の中で最も衛生度の高い品質のものを製造していたからで、親から言わせれば、世界で一番のものを作っているのだから、新たな投資は必要ないという理屈でした。しかし、その企業グループの中では一番の品質であっても、日本の他メーカーに比べれば一番ではなかったそうです。

後者は、WHO(うろ覚え)の「乳児は母乳で育てることが理想、だから粉ミルクは好ましくない」という方針を製薬会社でもある親会社が守ったからでした。
それまではお医者さんやお母さんの口コミでやってきたそうです。

で、ア社が買収後、これら二つの制約から解き放ち、設備投資を行い衛生度を他の日本のメーカーに負けないくらいにし、若干の広告宣伝を行ったところ、それまで何期も続いていた赤字が黒字転換になったそうです。

コメントその2
「経営者が変わることで、皆さんは従業員が不安がると思われるかもしれない。だが、それは逆で、期待が不安を大きく上回るケースが殆どだ。変革の提案を従業員に行ったところ、もっとドラスチックにやってくれという声もあった」

…再生型のM&Aの場合は、やはりこうなるんでしょうね。ダイエーの従業員さんも、アレだけ数がいれば様々な意見はあるでしょうが、愛社精神がある人ならば、今までのやり方じゃダメなんだ、何とか立て直してくれと思うのが普通だと思います。

コメントその3
「ポイズンピルなどを導入される企業さんもあるが、そういう企業さんは我々の買収対象からは外れる」

…彼らも商売で再生事業をやっている以上、株価が薄まるリスクのあるところに出資はできないということですね。
ア社いわく、敵対的な買収は行わないそうです。それでモメたら逆に高くつくことを知ってるんでしょう。
ア社のみならず、今回のセミナーでは買収後の話が結構取り上げられました。キーワードは「PMI(Post Merger Integration)」のようです。これからはこういうステージに行くんでしょうね。


そしてこのア社の成功話を聞いていた実務畑代表、印刷会社の常務がコメント。

「私もいろいろ買収やってきたが、ある会社の争奪戦になって、ファンド系と争うと価格で負ける。ウチらみたいな事業会社の方が理論株価より上乗せが可能なシナジー効果分を乗っけることができるのに、負ける。たぶん我々が気づいていない“制約”があるんだろうなと思う」

「私は経営企画をやってる人間で、もし自分のところが買収されたら真っ先にクビになるわけで、そりゃ抵抗しますよ。だけど買収者が出てきて、俺らに任せてくれりゃもっといい会社にする自信がある、だからこの株価で買う、悔しかったら俺らの提示する株価にまでしてみろと言われりゃ、経営者としてその段階では何も言えない」

…と、規模は全然違うのですが、私と同じ立場にある役員さん、ア社の正論に押されっぱなしでありました(別に討論してたわけでもないのですが)。

この役員さん、ニッポン企業の経営者として昨今の株主重視の風潮に対し、いい感じの本音をかなりぶちまけていたのですが、だいぶ長くなりましたので、自分の考えを整理し絡めつつ、別の日にエントリしてみたいと思います。

(各人のコメント、意訳・超訳ありますが、だいたいこんな感じでした)

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