「服従」メモ ~その6~ からの続きです。
服従 | |
佐藤優,大塚桃 | |
河出書房新社 |
ウエルベックは、イスラーム教に関して、それを解説する人物を2人置いた。結果、新大統領となるモアメド・ベン・アッバスをカリスマ的存在に担ぎあけることに成功している。更に、主人公(フランソワ)に、ベン・アッバスの政治スタンスを確認させることで、アッバスの雰囲気と思考が見えてくる仕組みを完成させた。
( ↑ Charles Péguy)
また、キリスト教の評価に関しては、ユイスマンスを介在させていく。そうなると、”「服従」メモ~その6”で書いたように、ペギーの詩や存在が活かされてくることになる。そして、ウエルベックがキリスト教に対して何を言いたいのか、、、が徐々に見えてくる。
しかし、難儀なのは、中世キリスト教とユイスマンスの思考を交流させていくところの解釈だ。この辺は「さかしま」の雰囲気を知っていると良く理解できるかもしれない。
さかしま (河出文庫) | |
渋澤 龍彦 | |
河出書房新社 |
ウエルベックが巧みなのは、ユイスマンスの思考と人物像を乖離させていくところにある。これに相当参った。新説かもしれない。ホントかなぁ。小説「服従」には捻(ひね)りが沢山潜んでいる。だから面白いのだ。
前述したイスラーム教を解説する二人とは、アラン・タヌール(マリー=フランソワーズの夫)とルディジェ(新ソルボンヌ学長)の二人である。
タヌールはDGSI(公安警察のようなもの)の情報局で働いている。(p75)彼と主人公との会話は注意して読んだ方が良い。一方、ルディジェの発言では、ウエルベックのペダンチック度が全開する。ID(インテリジェンス・デザイン)まで持ち出すのだからスゴイな。(p245)⇒インテリジェンス・デザイン
ところで、主人公の名はフランソワだが、これはオランドからとったのではないのかな?本作でウエルベックは(オランドを)かなり馬鹿にしている。確かに、11/13のパリテロ事件の記者会見でも目が泳いでいたし、これまではフランスでは人気がなかった大統領だが、一躍、注目されるようになった。オランドには別の意味で注目している。⇒フランソワ・オランド
いろいろ書きたいが、長くなりそうなので、今日はこのくらいで、、。次回に続く。