1977年7月23日、平和台球場、オールスターゲーム。野球を覚え始めたばかりの小学2年生の少年は、父に連れられて初めての野球観戦。少年にとってその夜はまさに「夢の一夜」。掛布、王、ブリーデン、野村、福本、山口・・・テレビでしか見たことのない選手が今目の前にいる。ライトスタンドの中段から、ボールの行方、選手の動き、ひとときも目を離さない。試合途中「人が混む前に先に帰ろう」と言う父を押し切り、最後まで席を動かなかった息子。無類の野球好きはあの日から始まった。
2006年5月14日、福岡ドーム、ホークス対タイガース。30年変わらずタイガースファンの父、いつの間にかホークスファンになった息子。息子が父を連れて行く初めての試合。母の話によると、息子からの誘いがあったその日から、父は会う人会う人に「息子が野球に連れて行ってくれる」と吹いてまわった。歩くのもままならないほど衰えた足腰にもかかわらず、ドーム正面、エスカレーターの行列が待てず、あの長い階段を駆け上がっていく父。その姿を見て、もっと早くこうするべきだったと息子は悔いた。
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お父さん、昨日の試合は楽しめましたか。試合中特に何も語ることなく、さほど特筆すべき試合でもなく、ましてや阪神が負けてしまった試合ですが、いい思い出になったでしょうか。
今の僕にはお父さんに対してこのくらいのことしかできません。世間の親子からすればこの程度のことは親孝行にもならないことでしょう。ですが僕ら二人にとっては、野球こそが自分の気持ちを伝えられるものだと思っています。
野球を通して僕らは、父親として息子として成長してきました。キャッチボールでお父さんより早いボールを投げることが、僕の最初の夢でした。息子のスピードについていけなくなったとき、きっと息子のたくましさを感じてくれたと思います。いがみ合い罵り合うようになったときにも、僕らには野球がありました。親子喧嘩をした日でも、掛布のホームランが二人の仲を取り持ってくれました。野球は、二人の人生にとって欠かすことのできない存在です。
野球は、父と息子をつなぐ絆。
野球は、無口な男にもできる愛情表現。
野球は、人間がつくりあげた最高のドラマ。
野球は、二人で見続けてきた夢。
ここまで来るのに30年もかかってしまいました。こんなにも大事なことに、もっと早く気が付くべきでした。あまりにも大切なものを失った気がします。二人で歩める時間はもうさほど残されてはいませんが、失ってしまった時間をこれから埋めていくつもりです。そして今度こそ、10.15のような試合を二人で見てみたいものです。そのときこそ、今までとは違う息子の姿が見られるはずです。
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ドーム観戦お疲れさまでした。
こばさんの記事を読んで、親子の絆の深さを思いました。
親子が一緒に暮らす時間なんて、思ったよりも短いものですね。けれどその中にどれだけの想い出がつまっているか、それが人として生きていく上での大きな指針になるように思います。
私たち親子も今は3人で一所懸命生きています。一所懸命楽しんでいます。それがいつか彼女たちの心の深さにつながれば嬉しく思います。
こばさんのお父さまのように、いつか娘に招待してもらって、初めて子どもを連れて行ったあのドームの試合を思い出せる・・・そんな日が来るのは私のささやかな夢かもしれません。
素敵な記事をありがとうございました・・・
思いのほか喜んでくれたのが救いでした。親に対して他に何もできない息子ですが、これで少しは気持ちが伝わればと願っています。
親と子が一つのことで夢中になれるのは素敵なことですね。それを媒介にしながらお互いが成長していける。それが親にとっては楽しみなことかもしれません。息子の立場からすれば、父が僕にしてくれたことをこれからいくつも返していきたいと思っています。
ハリー母さんの夢もかなうといいですね。