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PAUL KRUGMAN いよいよ正念場 金融ロシアンルーレットの結果

2008年10月11日 07時04分53秒 | ポールクルーグマン
正念場 By PAUL KRUGMAN 2008.10.9

先月、米国財務省がリーマンブラザーズをつぶすことにきめたとき、僕は財務省のヘンリー・ポールソンが金融ロシアンルーレットをやってるぞ、とここにかいた。あぁ、たしかに、銃に弾はこめられてたみたいだ。リーマンがつぶれて、世界的な金融危機が起こり、すでに手の施しようのない状態で、しかも日増しに悪化している。

リーマンがつぶれたことの結果は、数日であきらかになった。ただ政策当局はこの四週間を浪費してしまった。そしていまわれわれは、正念場を迎えている。すぐにでも、できることをするべきだ。そう、この週末には、よく練られた救済策を発表しなくてはだめだ。さもなくば、世界経済は大恐慌以来の最悪の不況を経験することになるかもしれない。

今、どういう状況に至っているか話しておこう。

現在の危機は、住宅バブルがはじけたのが発端だ。不動産ローンの破綻があいつぎ、多くの金融機関の大損失へとつながった。この最初のショックは、副次作用によってさらに大きなものになった。副次作用とは、資本不足が金融機関の手足をしばり、資産のますますの悪化をうみ、より多くの損失がでる、そしてそれが繰り返されるという「レバレッジを解消する」悪魔のサイクルだ。多くの銀行が誰からも信用を失ってしまうことは、それは他の銀行からのものもふくまれるが、この悪魔のサイクルを強化することになる。

下落のスパイラルが、次のリーマンを加速させた。すでに混乱していた金融市場が、事実上、機能停止状態になった。事態が一巡して、今やみんなが買いたいと思うものは、財務省証券とペットボトルの水くらいのものしかなくなったわけだ。

このダウンスパイラルへの世界の二大金融勢力の対応は、つまりアメリカとユーロ圏の15国ということだが、きわめて不十分なものだった。

ヨーロッパには、ひとつの共通の政府はないため、文字通り行動をいっしょにとることができない。それぞれの国がそれぞれの政策をほとんど協調もせずにつくっているし、統合されたひとつの対応をしようという提案もどこかにいってしまった。

アメリカは、もっと有利な立場のはずだった。ポールソンが大規模な救済策の自分のプランを発表したとき、一時的には楽観的な雰囲気がひろがった。でもすぐに、そのプランが合理性にまったくかけていることがはっきりする。ポールソンは、7000億ドル分の傷んだ住宅ローン債券の「不良債権」を、銀行から買おうとしたのだ。でもポールソンはどうしてそうすることが、危機を解消するかは説明できなかった。

ポールソンがそんなことをする代わりにやらなければならなかったのは、多くの経済学者が賛同しているが、金融機関に直接資本を注入することだ。アメリカ政府が金融機関に、ビジネスがとどこおりなく動くのに必要な資本を提供するのだ。そうすれば、ダウンスパイラルを止められる。またその代わり、金融機関の一部の所有権を取得することにする。議会がポールソンのプランを修正し、こうした資本注入を可能とする条項、強制ではないが、をいれた。二日前まではポールソンはまだ頑固に、正しいことをするのに反対していた。

でも水曜日に、英国政府が、大西洋のこっちのほうではまったく見かけないようなきちんとした考え方を示してくれた。銀行に新たな資本として500億ポンド、経済の規模からいえば米国では5000億ドルに相当するが、を注入するプランを発表した。そのプランでは銀行間の取引に関する広範囲の保証もふくまれている。アメリカの財務省の役人たちが言うには、自分たちもおなじようなことを計画していたが、権限がなく、ただどちらにせよ議会がそれを与えてくれた。

問題はこうした動きが小さすぎるし、遅すぎるかということだ。僕はそうは思わない。

でもこの週末に、なんら新しい信頼できる金融救済策が発表されないと、とても危機的な状況になるだろう。しかも信頼できる救済策はアメリカ単独ではなく、主要な関係者が参画する必要がある。

なぜ国際的な協調が必要なのか? われわれはフロリダの分譲マンションやカリフォルニアの豪邸(McMansionsはマクドナルドとかかっていて、豪邸もどきみたいな感じですか)からはじまったバブルの危機が、アイスランドの金融崩壊へと到るようなグローバル金融システムの中にいるからだ。われわれは協調してことにあたり、ひとつの共通した解決策が必要だ。

なぜこの週末か? たまたまワシントンで、二つの大きな会議があるからだ。金曜日には主要先進国の金融当局トップが集まる会議があり、年次の国際通貨基金/世界銀行の会議が土曜日と日曜日にある。もしこうした会議ですくなくともグローバルな救済策が原則として合意されなければ、また「現状を注視・把握していきます」といったようなあいまいなだけの表明に終わったら、またとない機会をみすみす逃すことになる。ダウンスパイラルは、ますますひどくなるだろう。

なにをすべきか? アメリカとヨーロッパは、「英国は正しい」というだけでいい。英国のプランは完璧ではないが、踏み込んだ救済にとってこれまでとはくらべものにならないくらいよい雛形になっていると、経済学者のあいだでは広く賛同をえている。

今や行動のときだ。これより事態は悪化しないよ、なんて思うかもしれない、でも悪化はありえる。この数日で何もしなければ、確実に事態は悪化するだろう。

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クルーグマン、ミクロ経済学






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