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おめでとうクルーグマン ノーベル経済学賞受賞

2008年10月13日 21時54分45秒 | ポールクルーグマン
ゴードンはよくやった。

By PAUL KRUGMAN 2008.10.12

英国首相のゴードンブラウンは世界の金融システムを救ったのだろうか?

うん、この質問にはまだ時期尚早かもしれない。われわれはまだヨーロッパでの計画された金融救済策の正確な形がわかっていないし、ついでにいえばアメリカのものもそうだ。いずれにしても、片方だけではちゃんと機能しないのだ。ただ、われわれにわかっているのは、ブラウンとわれわれの財務省にあたる大蔵大臣のアリスター・ダーリングは、世界規模の救済活動の形を規定し、他の裕福な諸国もそれに追いついてきている。

これは思いもよらなかったことのなりゆきだ。つまるところ英国政府は、世界経済のこととなれば、とても信頼できる相手だということだ。ロンドンが世界の金融センターのひとつであることは事実だが、英国経済はアメリカ経済に比べればはるかに小さく、英国銀行は、FRBやヨーロッパ中央銀行のような影響力はとうていもっていない。だから英国がリーダーシップを発揮するなんて思ってもみなかった。

しかしブラウンが率いる政府は、金融危機に対して賢明な判断をしようとつとめ、その結果を迅速に行動に移した。この賢明さと決断力の組み合わせは他の西洋諸国、また米国ではまったく見られなかったものだ。

危機の本質はなんだろうか? 細かく見ればとても複雑だが、基本はとてもシンプルといえる。住宅バブルがはじけて、住宅ローンの支払いを証券化した資産を買ったものは莫大な損失をこうむった。この損失で多くの金融機関で負債が大きく、資本が小さくなって、経済が必要とする信用を供給できなくなってしまった。いたんだ金融機関は、資産を売却することで借金を返済し、資本を増強しようとした。でもこれが資産価格の下落に拍車をかけ、いよいよ資本をくいつぶしたというわけだ。

危機をとめるには何ができただろうか? 住宅所有者への助けは、望ましいが、悪質なローンによる多大な損失をくいとめることはできないし、いずれにしても現在のパニックをとめるにはあまりに効果がでるのが遅すぎるだろう。一番自然な対策は、以前の多くの金融危機でもとられている解決策で、不十分な資本の問題に、政府が資本をつぎこみ、その代わりに所有権を取得することで対処するというものだ。

この一種の一時的な国有化は、資本注入としばしば呼ばれていて、多くの経済学者が支持する危機対応策で、タイムズによればベンバーナンキも内心やりたかった解決策ということだ。

しかしアメリカ財務省長官のヘンリーポールソンは7000億ドルの金融緊急対策プランを発表して、この誰の目にもあきらかな道をしりぞけて、「失敗するときにやることだ」なんて言っていた。そのかわりに、政府がいたんだ住宅ローン債券を買う事を要求し、それはなんとかという理論に基づいた、そう、どんな理論に基づいてそう提案したのかまったくわからないときてる。

その一方、英国政府は問題の核心にきりこんで、驚くべき速さでそれに取り組んだ。水曜日にはブラウンの高官は、英国銀行への資本注入の計画を公表した。そして銀行間で貸し出されている負債に対して保証を行い、そこは金融メカニズムの心臓部といってもいい。その資金による最初の大きな成果は月曜日に現れた。発表してからわずか5日後のことだ。

日曜日に特別開催されたヨーロッパのサミットで、実質的に大陸のヨーロッパ諸国の経済もイギリスの先導に従う用意があると宣言し、銀行の債務を保証して、何千億ドルを資本注入するとした。で、驚いたことに、あのポールソンは、貴重な数週間を議論で浪費したあげくに、まだ横道にそれている。なんといたんだ住宅ローン債券の代わりに株を買おうとしている(まぁ痛ましいほどにゆっくりとした動きのようだが)。

僕が前にもいったとおり、われわれはどちらのやり方がうまく行くかはわからない。ただ政策は、結局は何をしなければならないかが明確なほうがうまく行く。そこで疑問が持ち上がる、なぜ明確な考えがワシントンではなくロンドンからやってきたか?

ポールソンの最初の反応が、イデオロギーによってゆがめられていたと思わずにはいられない。思い出してくれよ、ポールソンは政府の哲学が「民営化はいい、国有化はだめ」とまとめられるような政権で働いてきたんだ。金融部門を一部国有化する必要がある状況に直面するのは難しいだろう。

僕はブッシュ大統領での、政府のFEMA化がポールソンのしくじりに影響を与えているとも思ってる。行政機関全体で、知識のある専門家が追放されている。財務省には、ポールソンにあなたの言ってることは筋がまったく通ってない、といえる名声とバックグラウンドを持った人はいないだろう。

ただ世界経済にとっては幸運なことに、ゴードンブラウンと高官には道理がわかっていた。われわれにこの危機からの脱出口を教えてくれたのだ。

まさしくノーベル経済学者の教科書をどうぞ、読みやすくて本当にためになるよ。


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2 コメント

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Unknown (だい)
2008-10-13 23:45:48
時間をやりくりしながら、翻訳ありがとうございます。感謝です。クルーグマンさんのノーベル経済賞受賞もうれしいです。金融危機が収束できればなお良いですね。
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いえいえ (kkt_2008)
2008-10-14 03:56:53
さらっと訳してるので間違いも多々あるかと思います。おかしいなと思ったら遠慮なく指摘いただければ、チェックしますので。そもそもほとんど見直さないので、指摘をいただいて見直すタイミングができるだけでもうれしかったりします。クルーグマンのコラムが正しければ、金融危機は収束の方向なんでしょうね。
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