長寿幸せ企業への「変化と継続」2022-25

『長寿幸せ企業』とは・・

第5章 健全企業の経営実学「人間学」を学ぶ より
(1)人間学と時務学

 私の言う「健全企業」は企業の規模や売上が大きくなくても、財務的に健全で、目先の利益にとらわれない使命や理念を持った企業のことです。

 健全とは、広辞苑によると
① 健やかで病気のないこと。たっしゃ。
② 意志が確固で中庸を失わぬ状態。感情に偏せず、分別のあること。
とあります。一般的に、売上や大きな会社や上場会社の方が、耳には心よいかもしれません。しかし、何代も続き、従業員や関係者に幸せを感じさせることのできる『長寿幸せ企業』になり得る資格があるのは健全企業のほうだと思います。


 まず、その健全企業になるために学ばなければならないのが「人間学」と「時務学」です」。
 あなたは「本末転倒」という言葉をお聞きになったことがありますか?
 本末転倒とは物事の根本や本質である「本」と枝葉末節である「末」を取り違えるという意味です。

 私は、伊與田覺先生の人間学講座をはじめて受講させていただいた時に、長寿企業と急激に拡大したにも関わらず次期経営者への継承もできないで消えていく企業の違いをはっきり掴むことが出来ました。長寿幸せ企業の入り口にさえ到達できないのは、本末転倒どころか、取り違える「本」さえないことが大きな原因なのです。

 経営実学における「本」を「人間学」といい、「末」を「時務学」といいます。ここで間違ってはいけないのは、人間学が時務学より大事ということではありません。

 本と末の例をあげてみましょう。
道徳 と 知識・技術
経(縦糸) と 緯(横糸)
学 と 芸

 確かに、時流がどんどん変化していく昨今、変化に対応できない企業は長寿の老舗企業であってもあっという間に消えていく運命にあります。逆に、新興企業が新しい知識や技術を身につけることによってあっという間に時代の流れに乗り、売上を拡大することができます。しかし、天地自然の理で、急激に成長した(大きくなった)ものがそのままの勢いで成長すれば、ある時点から必ず急激に衰退していきます。これを避けるために本を守り、末を時代とともに変化させることができる企業のみが長生きできるのです。


 渋沢栄一は本を「論語=道徳」末を「算盤(そろばん)=経済」とし、論語と算盤、すなわち「道徳と経済は一致する」と言っています。
 「道徳」とは三省堂 大辞林 によると
「ある社会で,人々がそれによって善悪・正邪を判断し,正しく行為するための規範の総体。法律と違い外的強制力としてではなく,個々人の内面的原理として働くものをいい,また宗教と異なって超越者との関係ではなく人間相互の関係を規定するもの。」とあります。

 それでは、経営における道徳とはどういうことを言うのでしょうか。経営における道徳を五徳(注1)の「仁義礼智信」でかんがえてみましょう。


 困っている人を助けられる企業であり、困っている人を助けられる商品やサービスを提供できること。思いやりのある経営をすること。長寿幸せ企業の理念や家訓には必ずと言っていいほど入っている。


 法律的な正悪よりも、誰が見ても社会常識上正しいと思う経営をすること。「先義後利」(注2)の経営。理念や家訓ではなく、信条や行動規範に入れている長寿幸せ企業も多い。


恕につながる思いやりのある言動を当たり前とする経営。笑顔の挨拶・応対。後に使う人のために、使ったものはもとに戻す。使った前より綺麗にする。人の気分を害する服装をしない。TPOにあった服装をする。これを守ることによってもののムダが省かれるばかりでなく、人間関係も円滑になっていく。


 智とは単に書物や人から聞いたりした知識のことではなく、知識が行動や実践をすることで会得した知恵のことです。私はこの歳になってようやく、学歴がない人が齢を重ねることによって、いくら知識を勉強して得ても到底かなわないところがあるということ痛感しています。
「60歳にならないと60歳のことはわからない」というのは本当です。ですから自分より年長の方は尊敬の礼で接し、学ばなければなりません。後継者であれば、先代の考え方は古いと断じるのではなく、「三年父の道を改むる無くんば、孝というべし」を守るべきだと思います。そうしていくことによって、経営者としての正しい判断判断能力が身についてくるのです。例え、パートタイマーのおばさんでも同じです。目上の人をぞんざいに扱う人は、いくら仕事ができても、人の上につけるべきではありません。いつか必ず問題を犯してしまいます。


 信とは人を裏切らないことです。人を裏切らなければ、商品やサービスはもちろん、会社にも信用がついてきますが、度々ニュースで登場する老舗企業であっても「先利後義」の会社はあっという間に信を失い衰退してしまいます。


 私は論語を伊與田先生を始め、加地伸行先生(注3)青柳浩明先生(注4)、安岡定子先生(注5)の講座や書籍から学ばせていただいています。その論語の中に好きな言葉が幾つもありますが、特に
「性、相近きなり。習、相遠きなり。」(注6)
という言葉が大好きです。人の生まれつきに大きな差はないが、生まれた後の躾や教育、習慣によって大きな差ができるという意味です。

 これから学んでいく人間学においては、先生や親から躾けられたり、学んだりした道徳や礼儀が習慣化され、自然とあなた自身の身に備わっていきます。それらは、苦しい時にあなた自身を奮い立たせ、もし自ら変えられない状況に陥っても、不思議とあなたを助けてくれる人が現れるものです。まさに論語の
「徳は孤ならず、必ず隣あり」
です。

 時務学も知識として知っても全く経営には役に立ちません。行動を起こして、実践し、失敗し、また実践し、継続し続けなければなければ、経営に役立つ知恵には変わっていきません。技術も同じく技能に変わるまでは行動、失敗、挑戦、継続が必要です。

 そして長い年月がたって、常に自分のはるか前を歩き、学生時代に自分は逆立ちしたってかなわないと思っていた秀才の同級生が、気がつけば自分のずっと後ろを歩いていると感じることは珍しいことではありません。そのうえ、人間学や時務学が身についていれば、自分が人より優れているかどうかはあまり気にしなくなっているはずです。

(注1) 五つの徳目。仁・義・礼・智・信。あるいは温・良・恭・倹・譲。また,五行(ごぎよう)(木・火・土・金・水)の徳など。(大辞林第三版の解説より)
(注2) 利益よりも正しい行いを優先すること
(注3) 大阪大学名誉教授、立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所所長で論語研究の第一人者
(注4) 儒者。特にビジネス論語として中国古典の知恵を実務の実践に活かすことに注力している


(注5)  安岡正篤の次男・正泰の長女。特に「銀座寺子屋こども論語塾」、「斯文会・湯島聖堂こども論語塾」などで幼児などへの講座で有名。

(注6) 「論語」陽貨第十七

 

 このブログ、永続優良企業への「変化と継続」は井上経営研究所が発信しています。

 

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