「あー! 負けたよ、負けでいいよ」
コリエンテのその言葉を聞いて、思わずにやけた。
「よしっ」
両腕を夜空に突き刺し、そのまま草の上に倒れ込んだ。息は乱れ、心臓がはち切れそうなくらい激しく動いていた。
コリエンテも同様に、オレの右横で夜空を見つめていた。コリエンテもかなり激しく息遣いを見せていた。
「でも……。どうせ、コリエは……はぁ……。候補に……選ばれるだろ……」
多少落ち着いてから話しかけたが、まだ呼吸を整えられなかった。
「いや……。はぁ……はぁ……。お前も、来いよ」
「どうかな……。俺みたいな……田舎もんが……はぁ……。選ばれないって」
お互い顔を向き合うことはせず、仰向けのまま半月に向けて話し続ける。
「そんなことはない!」
せっかく整ってきたコリエンテの呼吸が、大声を出したせいでまた大きく息を何度か吸い続けた。
「自信を持て! パスク、お前ならできる」
「そうは言ってもな……」
「俺はお前と一緒に、『あの場所』に行けたらいいなと思っている」
「『あの場所』か……。夢のような話だ」
「これは俺の希望じゃなく、約束な」
決戦からちょうど一ヶ月が過ぎ去った頃、心配事があって故郷に戻っていた。
季節はすっかり冬の装いで、山奥にあるこの村は深い雪で埋もれていた。
「これ、大丈夫か……」
いつになく雪が降り積もり不安で帰ってみたら、木造の実家がサービス満点のかき氷のようになっていた。
「で。シロップをかけたら完成する寸前まで家を放置して、何してやがった」
「やーね。お買い物よ。お・か・い・も・の」
「何日間かけて行っていたんだ!」
雪があるとはいえ、半日くらいで往復できる所に街がある。一週間はかからない。それと、クオリティの低いダジャレを吹き込まれたことに関しては、スルーすることにした。
「そもそも親父は?」
「中じゃないかしら? ここのところ具合が悪いから」
「なんちゅう母親だよ……」
家も旦那も放っておいて、なにしているんだ。
「ん? 『具合が悪い』って?」
「最近、胸のあたりを押さえることがあってね。心臓の病気かしら」
「風邪みたいに、さらって言うな!」
まったく、この母親はどこからが本気なんだが。
「親父も心配だが、屋根上の雪かきをするか。家がなかったら元も子もないからな」
「じゃあ、あたしは中で休むとするよ」
「手伝え!」
親父の面倒を見るという名目で見逃し、ひとり雪かきをすることにした。
新雪が多いせいか、固まっている部分が少なく容易に進められた。片側を終わらせて見上げてみると村は白い平原へと変わったことを見ることができた。
「こんなに降ったのか……」
「パスクさん!」
下の方から呼び声がする。女ぽいの声だが、脳天気な母親の声ではなさそうだ。降りてみると若い女性が立っていた。
「わたくし、使いの者です」
「よくここにいるってわかったな」
「自宅にはご不在で、随分と探しました」
「そりゃ、悪かったな。こんな山奥まで来させて」
「パスクさんに、これを」
一枚の紙を手渡された。すぐさま内容を確認した。
「……いいのか? これ」
「ええ。わたくしの長が仰るには『あんたみたいな田舎者を入れるなんてどうかしらと思うけど、特別に。恩情で。かわいそうだから。慈悲で候補に入れてあげる』と申し上げておりました」
「二重鉤括弧の部分が気に入りません!」
受け取った手紙には『候補入りを認める』としか書いていないのに。
なかなか思うような成績を残せなかったが、それでも食らいついていった。
そして月日は流れ、今回こそは……と、思っていた。が……。
「走馬燈のように駆け巡った思い出も、そろそろ終わりにしませんか? マジで!」
≪ 第2話-[目次]-第4話 ≫
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コリエンテのその言葉を聞いて、思わずにやけた。
「よしっ」
両腕を夜空に突き刺し、そのまま草の上に倒れ込んだ。息は乱れ、心臓がはち切れそうなくらい激しく動いていた。
コリエンテも同様に、オレの右横で夜空を見つめていた。コリエンテもかなり激しく息遣いを見せていた。
「でも……。どうせ、コリエは……はぁ……。候補に……選ばれるだろ……」
多少落ち着いてから話しかけたが、まだ呼吸を整えられなかった。
「いや……。はぁ……はぁ……。お前も、来いよ」
「どうかな……。俺みたいな……田舎もんが……はぁ……。選ばれないって」
お互い顔を向き合うことはせず、仰向けのまま半月に向けて話し続ける。
「そんなことはない!」
せっかく整ってきたコリエンテの呼吸が、大声を出したせいでまた大きく息を何度か吸い続けた。
「自信を持て! パスク、お前ならできる」
「そうは言ってもな……」
「俺はお前と一緒に、『あの場所』に行けたらいいなと思っている」
「『あの場所』か……。夢のような話だ」
「これは俺の希望じゃなく、約束な」
決戦からちょうど一ヶ月が過ぎ去った頃、心配事があって故郷に戻っていた。
季節はすっかり冬の装いで、山奥にあるこの村は深い雪で埋もれていた。
「これ、大丈夫か……」
いつになく雪が降り積もり不安で帰ってみたら、木造の実家がサービス満点のかき氷のようになっていた。
「で。シロップをかけたら完成する寸前まで家を放置して、何してやがった」
「やーね。お買い物よ。お・か・い・も・の」
「何日間かけて行っていたんだ!」
雪があるとはいえ、半日くらいで往復できる所に街がある。一週間はかからない。それと、クオリティの低いダジャレを吹き込まれたことに関しては、スルーすることにした。
「そもそも親父は?」
「中じゃないかしら? ここのところ具合が悪いから」
「なんちゅう母親だよ……」
家も旦那も放っておいて、なにしているんだ。
「ん? 『具合が悪い』って?」
「最近、胸のあたりを押さえることがあってね。心臓の病気かしら」
「風邪みたいに、さらって言うな!」
まったく、この母親はどこからが本気なんだが。
「親父も心配だが、屋根上の雪かきをするか。家がなかったら元も子もないからな」
「じゃあ、あたしは中で休むとするよ」
「手伝え!」
親父の面倒を見るという名目で見逃し、ひとり雪かきをすることにした。
新雪が多いせいか、固まっている部分が少なく容易に進められた。片側を終わらせて見上げてみると村は白い平原へと変わったことを見ることができた。
「こんなに降ったのか……」
「パスクさん!」
下の方から呼び声がする。女ぽいの声だが、脳天気な母親の声ではなさそうだ。降りてみると若い女性が立っていた。
「わたくし、使いの者です」
「よくここにいるってわかったな」
「自宅にはご不在で、随分と探しました」
「そりゃ、悪かったな。こんな山奥まで来させて」
「パスクさんに、これを」
一枚の紙を手渡された。すぐさま内容を確認した。
「……いいのか? これ」
「ええ。わたくしの長が仰るには『あんたみたいな田舎者を入れるなんてどうかしらと思うけど、特別に。恩情で。かわいそうだから。慈悲で候補に入れてあげる』と申し上げておりました」
「二重鉤括弧の部分が気に入りません!」
受け取った手紙には『候補入りを認める』としか書いていないのに。
なかなか思うような成績を残せなかったが、それでも食らいついていった。
そして月日は流れ、今回こそは……と、思っていた。が……。
「走馬燈のように駆け巡った思い出も、そろそろ終わりにしませんか? マジで!」
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