杉原 桂@多摩ガーデンクリニック小児科ブログ

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幼稚園と小児科医の戦い

2006-12-19 | クリニック通信
残念に思っているのは私だけではないでしょう.
こんな話があります.
「幼稚園から、痙攣止めの薬を提出するようにいわれたので下さい」
「ダイアップ座薬のことかな?いいよ...」カチャカチャカチャ.「あれ?○○君、そんなにひどいひきつけあったっけ?」
「いえ、先生からひきつけ止めはいらない、と言われたのですが、幼稚園から薬を提出するようにいわれたんです」
「そっか~、いちおうね、学会では「けいれんが1回だけの人は基本的には予防的投与はしなくていい」と言われてるんだけどね~」
「そうなんですか..どうしよう....」

いつも間にはさまれて苦しむのはご両親だけです.

薬は毒です.簡単にホイホイ使うものではありません.副作用もおこりうる、というリスクを背負いながら、それでもメリットがある、と判断したときに使うべきものです.まるでドラクエの「やくそう」(古いなあ~)気分で安易に投与してほしくないものです.

だからといって幼稚園、保育園だけが悪いともいいきれません.
預かる側として何かあったら大変だ、という問題は昨今、病的なほどに(私はもはやこれは社会病理現象ではないかと思います)危機意識が高まっているのも事実ですし、幼稚園側が怯えるだけのクレームがあるというのも事実です.

他にも「ノロウイルスであるかないかの診断書を提出せよ」という要求を親に突きつけたりする例もあります.
一般的な診療所でノロウイルスの診断はできることはできますが、してもまったく意味がありません.治療にはなんの関係もないからです.保険も利きませんので実費です.検査結果がでるのに3-6日ぐらいかかるので結果が出た頃には吐き気は治まって元気になっており、下痢がつづいているくらいのものでしょう.この下痢にしたってノロウイルスかどうかが分かっても治療にはなんの役にもたちません.

この根底にあるものは何か、かんがえていくと実態のない「不安」です.
TVで煽られて心配になる両親と幼稚園の先生.
幼稚園側は親からのクレームが不安.
幼稚園に子どもを行かせる事が不安.

検査して子どもが助かる確立は1%もあがりません.もちろん、重篤な症状で診断が必用な症例もあります.
しかし、それを判断するのは誰の仕事でしょうか?
医者が信用されない時代になっている、というのも一つの不幸ですね.

検査をいたずらに増やして喜ぶのは検査会社と利益優先の医療機関だけではないでしょうか.


ちなみにこんな手間がかかります.(検査会社BMLのページより)
●正規の検査受託材料は絶対凍結の便だけです。
●以下の事例は、不適届を出さずに検査に入りますが、結果が(-)の場合に「参考値」がつきます。(+)の結果は信頼いただけます。

所定の量が採られていない便検体
嘔吐物、胃液などの検体
紙オムツなどに下痢便の染み込んだものから採取した検体

(1)表面に僅かでも便中の固形物が付着しているときは、F1容器の付属サジで何度も強くこすりとって回収し、そのままチューブを閉めてすぐに凍結。
(2)全く表面に固形物がなく、全て染み込んでしまっているときは、綿棒1~2本を強く押しつけて液状便を吸わせ、綿棒の軸を折ってF1容器に入れ、すぐに凍結。

冷蔵状態で数時間取り扱われた便検体、あるいは冷蔵で総研に搬送されてきた便検体
部屋や器具の表面を綿棒などで拭き取り、上記3-(2)同様に提出された検体


何が本当に子どもにとって大切なのか、を自分で考えていくご両親、幼稚園がだんだん減っているのかもしれませんね.

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1 コメント

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追加情報 (杉原 桂@多摩ガーデンクリニック小児科)
2006-12-19 18:43:47
ノロウィルス、ノロウイルス、Norovirus、SRSV目次
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/noro/index.html


<社会福祉施設等におけるノロウイルス対応標準マニュアル>
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/micro/noro_manual.html

<集団発生時の対応>
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/micro/image/dai5.pdf

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/micro/image/shiryou.pdf
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