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世田谷一家4人殺害事件の各種報道記事ファイル

【産経抄】

2007-01-24 | 世田谷-特集、その他
[2001年06月30日 産経新聞]

 早いもので今年も半分が過ぎた。ということは、年の瀬に発生した東京・世田谷の宮沢みきおさん一家四人の悲劇も、半年が過ぎたことになる。捜査には警視庁の威信がかかっているが、事件はなお解決する見通 しがない

 ▼「現場周辺に土地勘があり、身長一七五センチ前後でやせ形、十代半ばから三十代で、血液型A型の男」。それが遺留品などから割り出された犯人像である。捜査は百五十人態勢という大がかりな陣容で続けられているが、すでに過労で二人の刑事が倒れたという

 ▼この炎暑のなか、捜査員の労苦は察するにあまりある。疲れてもいるだろう。へばってもいるだろう。だがここはなんとしてもがんばって、犯人を挙げてもらいたい。それが全国民の願いなのである。捜査が難航しているのは犯罪の様相があまりにも異常だから。動機も目的も意図も分からないことが多過ぎるかららしい

 ▼そういう意味では、あの大阪の池田小の惨劇とどこかで地下水のように通 じているかもしれない。あるいは、黒い糸でつながっているともいえる。宅間守という男の本当の動機や目的がもう一つ見えてこない。何がねらいだったか、どうも分からないのである

 ▼フランスの作家カミュが『異邦人』で人生の不合理と矛盾相克を描いたのは一九四二年のことだった。主人公は母親の死にも涙をみせず、情婦と戯れたり、喜劇映画に腹を抱えたりする。殺人もまた「太陽のせいだ」などとうそぶくばかりである

 ▼ようするに「すべてはどうでもいいこと」という“不条理の哲学”の披歴が世間を驚かせた。しかしそういう動機も目的も意図もない人間の行為が、さして不思議ともされない社会になっている。難しい時代がきているのである。

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