やがて人は “語りべ” になる

2012-06-23 23:25:17 | 鳥(Birds)


ヤンバルクイナ(Gallirallus okinawae) Okinawa Rail


朝の4時半ぐらいだろうか。気付けば、ある時間帯を境にパタリと、夜の生き物たちが出現しなくなった。
深夜から1人歩き続けた林道の、木々の間から見える空も、しばらくすると少しずつ薄明るくなってきた。
森のそこかしこからはホントウアカヒゲのさえずりや、「キャッキャッキャッキャッキャッ.....」というヤンバルクイナの声が聞こえるようにもなってきた。
やんばるの朝が来たのだ。
空は薄明るくても、草木の生い茂る林道はまだ真っ暗で、ライト無しには歩けない。そんな夜行性、昼行性の生き物も殆ど姿を見せないこの時間帯に眠気を誘われた私は、半分眠りながら歩みを進めた。
しばらくして、もうどうしようもなく眠くなってしまった私は、丁度道端にあった座り心地の良さそうな大岩に腰掛けて、うたた寝を始めた。
―どのくらい寝たのだろうか。ふと目覚めて時計を見ると、針は7時半を指していた。まずい、寝すぎた。
そして私が、石に長時間座ったため少し痛くなった体に鞭打って立ち上がろうとした時。正面に何かの気配を感じた。
顔を上げると、私からほんの数メートル前に、1羽のヤンバルクイナが佇んでいた。
私の動作に警戒したヤンバルクイナはすぐに慌てて茂みの中に入って行ってしまった。石に腰掛け、眠りうな垂れて動かぬ私を生物と認識しなかったのだろうか。寝て起きたら鳥が目の前にいた、というのは今までに何度か経験がある。私自身も「鳥の気配」に無意識に気付いて目を覚ますのかもしれない。
そんなことを考えていると、先ほどのヤンバルクイナが、今度はゆっくり辺りを伺いながら茂みの中から出てきた。そして今度は私を観察でもするかのように、しばらくの間動きを止めた。もしかすると“人間”を試しているのかもしれない。

この間、たまたま友人と鳥を見に行った時のこと。
私たちが年をとり、やがて定年を迎え、さあこれから遍く鳥々を片っ端から見てやろうと思った時、現存する鳥種のなかで何種が絶滅しているだろうという話になった。
絶滅ということは、見たくてもどうしても見られないのだ。
そう考えると、ゾッとすると同時に焦り始めた。こうしちゃ居られない。今からでも世界の鳥に優先順位を付けて、最も絶滅の恐れのあるものから見たほうがいいのではないか?
爺さんになった私達が、若いバーダーにいなくなった鳥のことを聞かれた時には、詳しく答えてやらなければならない。その鳥が “確かにいた” ことを伝えるために。



【Okinawa Is.(沖縄本島) Japan/13th April, 2012】


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2 コメント

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Unknown (ひたき)
2012-06-24 23:15:49
ヤンバルクイナ、素晴らしい出会いですね。羨ましいかぎりです。フィールドで居眠りしたことないですが、少しやってみようかなと思いました(笑)

鳥の優先順位の話、なかなか難しいですが、せめて国内で記録のある種で種自体が希少な場合は早めに見ておきたいなと思う次第ではあります…。
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Unknown (タロ)
2012-06-26 00:48:52
>ひたきくん

居眠りしなくとも動かずに待っていればいいんだろうけども、山原は欲望が多すぎて起きてたら動かずには居られなくなるね。

逆に、今はレアでもウン十年後には普通種ってパターンもありそうね。そういうのは後回しでもいいな。インドハッカとか、そのうち町中にはびこりそう(笑)
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