深緑に竜が潜む

2011-02-27 20:05:20 | 両爬(Amphibia&Reptiles)


ボイドモリドラゴン(Hypsilurus boydii) Boyd's Forest-dragon


北部亜種の、アイリングや目先の白い羽に茶色が混ざるキアシヒタキが飛んで行った先を見て、私は次の瞬間にはキアシヒタキを目で追うのを止めていた。
なぜならば、そこにドラゴンが居たからだ!
見事な質感の後頭にはそこからミサイルのように突き出たクレストがそびえ立ち、背中にも延々と立ち並ぶ棘がある。また、口角後部に点在する大型隣はアンキロサウルスあたりの背面装甲を彷彿とさせるほどに大きい。
何が言いたいかって、このボイドは、トゲトゲ、ゴツゴツしていればしているほどカッコイイのだという少年思考の私の目を輝かせるのには十分過ぎるほどに魅力的な形態をまさにしていた、という事だ。

ボイドモリドラゴンは、先ほどから熱い視線を送っている私をギロリとひと睨みすると、スルスルと木の幹を登って姿を消した。


【2010/03/06/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】


Silent Noisy-Pitta

2011-02-26 20:23:09 | 鳥(Birds)


キアシヒタキ(Tregellasia capito nana) Pale-yellow Robin


オーストラリア4日目。
この日の朝は、森の中でも一際暗くて蚊の多い林道を歩いてみることにした。
しばらく歩いていると、朝からのうだるような暑さに早々に参ってしまった。そこで私はカメラとザックを一度地面に放置して、双眼鏡だけ持つというスタイルにした。放置した荷物からほんの10mも歩かないうちに、とんでもないことが起きた。
暗い林内でさえ雨覆と腰のメタリック・ブルーが眩いほどに輝くノドグロヤイロチョウ(Pitta versicolor intermedia)が飛んで来て、なんと私と置いてきた荷物の間の林床に舞い降りたではないか!
これではカメラを取ろうとすればこのノイジーピッタを間違いなく飛ばしてしまうだろう。こうなったら観察あるのみだ。私からたった5mの位置にいるノドグロヤイロチョウは、うっかり人間の近くに降りてしまったと言わんばかりにしばし動きが固まり、私と10秒か、いや20秒か目を合わせた後、さりげなく森の暗がりに向って歩いていった。
私はしばらく落雷にでも遭ったように無表情で立ち尽くし、気が付いた時には虫除けスプレーが行き届いていない場所を蚊にしこたま刺されていた。



アオツラミツスイ(Entomyzon cyanotis griseigularis) Blue-faced Honeyeater


車を停めている場所に戻ると、その周辺にも鳥が多かった。
キバタンが上空を飛んで広げた翼を見ると、白い風切の一部にレモンイエローが乗っているのがわかる。また、2羽のテリオウチュウが時々フライングキャッチをしていたり、家禽かと思うほど自然にヤブツカツクリのペアが背後を通り過ぎたりした。
木々が茂った一画では、眉斑がなく黒い嘴と暗色の虹彩によってクロエリヒタキみたいにのっぺり顔をしたハシナガヤブムシクイが動き回っている。さらにキャンプ場の事務所前では、チャイロモズツグミがアカハラみたいに豪快に落ち葉をひっくり返しているのが見えた。
小さくて可愛いキアシヒタキは木の幹に直接はりつく独特の行動をしきりにしている。

メンガタカササギビタキにフヨウチョウ、その他にもいつもの面々を全部見た頃、ワライカワセミが鳴き始めた。もとい、笑い出した。
もはや鳥の声とは思えないような声で「クワァラハハハハ!」と高笑いするものだから、初めて聞いた時には誰か子どもがどこかではしゃいでいるのかと勘違いしてしまうほどだった。
さらにさらに、笑い出した時に別のワライカワセミが近くに居る時には、どちらかがもう片方の隣に飛んで行き、一緒になって大笑いの共鳴をし始める始末!
この状況を友人が「ツボに入っている」と上手いことを言い、以降この表現が私達の間で採用された。
「またツボってるよアイツら!」


【2010/03/06/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】


日課

2011-02-25 19:23:59 | 両爬(Amphibia&Reptiles)


クツワアメガエル(Litoria infrafrenata) White-lipped Tree Frog

真っ暗になってからKFPキャンプ場に帰り着き、シャワーを浴びる支度をする。
着替えと、タオルと、それからライトとカメラもだ。
シャワールームに入る手前で「いるかな?絶対にいそうだよね!」とニヤニヤする私達。
そして「せーのっ」で覗き込むと、いたいた。今日はタイルの壁ではなくて、個室の戸にクツワアメガエルが貼り付いていた。
初めは上の写真のような体勢をしていたけれど、そのうち分かるか分からないかぐらいの動きで顔を動かして左前脚の上に乗せる様な防御姿勢をとり、下の写真のように、まるで昼休みに机に突っ伏して幸せそうな顔で眠りこけている人みたいになった。
その防御姿勢にどれほどの防御力があるのかと考えるとおかしくてたまらなくなり、思わず笑い出してしまう私であった。

クツワが居る戸を開けなければシャワーが使えないため、私がゴメンネーと言いながら戸を引いて中に入ると、クツワは面倒くさそうにペタペタと壁に移った後そこでうずくまった。








※追記:判明しました→Jungguy Frog(Litoria jungguy




ホウキタケの1種 Ramaria sp.



【2010/03/05/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】


バスタードの舞踏会

2011-02-24 23:50:38 | 鳥(Birds)


オーストラリアオオノガン(Pandion cristatus) Australian Bustard


もう太陽がだいぶ傾いた頃、草原では光を背にしてシロアリの塚の上にとまったノドグロモズガラスがたそがれていたり、ぴょーんぴょーんと軽快に跳ぶスナイロワラビーが顔しか見えないほど草丈の高い区画に4頭ほど見え隠れしていたりする。
そして、西日に照らされた草原が輝き出す頃。突如、草原の牧草が刈り取られて開けた空間に出た。それと同時に、なんと言うことだろう、10羽以上もの大きなオーストラリアオオノガンが威風堂々と闊歩している光景が目の前に広がっていたのだ!
これはきっと、草を刈られた後に餌が見つけやすくなったため、周りの草原から寄り集まってきたのだろう。
「オーストラリアオオノガンは警戒心が非常に強い」なんてまことしやかに言われているけれど、そんなものは嘘っぱちであることはすぐに分かった。ノガンならば蜃気楼の彼方から警戒されるかもしれないが、オーストラリアオオノガンはそうではない。
人間に気を配ることよりも雌とお近づきになる事の方が忙しいらしい雄達は、豪快に飛び立っては雌の歩いている前方に優雅に舞い降りて、ディスプレイを始める。頭部の黒色がはっきりしたこの雄は、息を吸い込むように口を大きく広げた後、喉を膨らませて尾を反らせ、そのままの状態で雌に向って歩き出した。ところが雌は逃げ出すかまたは完全無視、というとても冷ややかな態度を変えなかった。これはもしかしたらディスプレイが魅力に欠けていた、ということも原因の一つなのではないだろうか。私達が見たディスプレイは雄の本気ではなかったとしたらどうだろう。というのも、マンガの中で驚きのあまり顎が外れてその顎が地面にガコーンとめり込むデフォルメがあるけれど、おおよそそんな感じで「それはそれはもの凄い」フォルムになると図鑑に図が描いてあったからだ。











オーストラリアオニサンショウクイ(Coracina novaehollandiae melanops) Black-faced Cuckoo- shrike

草原の端にある乾いた林では、枝にとまったホオアオサメクサインコがうとうとしていたり、顔の黒いオーストラリアオニサンショウクイの成鳥が西日を見つめていたりした。

帰りに立ち寄った閉店時間間際のスーパーマーケットでは、ローストチキンが半額値引きになっていて、なんとおよそ400円で1羽丸ごとを手に入れた。ニシシと笑みを浮かべながらがらスーパー外にあるベンチで友人と共にチキンをむさぼり食べた時は最高の気分だった。一生の中で、ローストチキン丸ごと1羽を一人で食べるなんてことはもう無いかもしれない。


【2010/03/05/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】


トレードマークは赤フード

2011-02-23 23:18:55 | 鳥(Birds)


セアカオーストラリアムシクイ(Malurus melanocephalus cruentatus) Red-backed Fairy-wren

陽が傾き始めた頃、私達は西の果てのとある牧場に到着した。
ここは、草丈のある牧草の草原が今まで以上の広大さを誇っている様な場所で、案の定、辺りには人っ子一人居なかった。

果てしなく真っ直ぐに続く農道を進んでいくと、オーストラリアチョウゲンボウの雌が杭にとまって一休みしていたり、チャイロハヤブサの栗色型(Rufous morph)が獲物を探してヒラリと飛んでは立ち枯れの木に舞い降りたりした。
また、個体差かもしれないが少なくとも私が見た個体はマミジロタヒバリよりも胸の縦斑がだいぶ濃く、またそれがより腹部の方まで及ぶオーストラリアマミジロタヒバリが遠くの有刺鉄線に少しだけとまって、また草原の中に消えた。正面しか見えなかったために中雨覆や第1趾はどのようだったか見逃してしまったけれど。




またしばらく進んで、農道沿いに並んだ木々が有刺鉄線の上にポツリポツリと影を落としているような場所。
この日陰になった有刺鉄線の上に、長い尾を斜め45°に向けて景気良くピンと立てた小さな鳥がとまっているのがすぐに目に飛び込んできた。
そう、セアカオーストラリアムシクイである!
美しくクールな雄は、黒い服の中に赤いパーカーを着て、そのフードだけをペロッと外に出しているみたいな羽色でとてもお洒落。また、この鳥は体の半分ほどもある尾羽を除けば本当にピンポン玉を一回り大きくしたぐらいの大きさしかない。
このセアカオーストラリアムシクイ達は、とても目立つ雄が1羽、淡褐色をした雌タイプが3羽の小群で日陰から日陰に飛んでは遊んでいた。










【2010/03/05/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】