黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『黄昏たゆたい美術館 絵画修復士御倉瞬介の推理』柄刀一(実業之日本社)

2008-08-15 | 読了本(小説、エッセイ等)
映像作家で総合プロデューサーとしてさまざまな分野で活躍していたカリスマ・花房シンタロウが投身自殺した。絵画修復士の御倉瞬介は、その死の5日前に彼が持つヤン・ファン・エイクの複製画を修復していた。
花房には共同生活者のコミュニケーション不全の若い画家・山野稜がいたが、花房の死の2日後から、壁に描き始めたのは、まっさかさまに転落していく男の姿だった……『神殺しのファン・エイク』、
神奈川県丹沢山地の東にある小さな村、清川村から山間に入ったところにある鳴沢家。そこには62歳になる漆工芸の大家・冬志郎に依頼され、その家にあるユトリロやルドンの絵画の出張修復を引き受けることになった瞬介は、息子の圭介を連れてやってきた。その家には、冬志郎の先妻の息子・悠人と3歳しか違わない、冬志郎の後添えである貴余子がいたが、彼女は“姑獲鳥の夏”さながら20ヵ月以上も妊娠して続けているのだという……『ユトリロの、死衣と産衣』、
圭介の春休みを利用して、昨年発見された『信貴山縁起』の2巻の写しだといわれる『凌・延喜加持の巻』という平安後期の絵巻物の修復作業を京都に見学にやって来た御倉父子。ところがそこでフィルムを使って連続撮影をする、尼公の巻を再現しようというアートを実践中だった宮崎秋菜という学生が、その最中に殺害された。フィルムに犯人は写っているがぼんやりしたもの。その上、その殺害時刻と思われる時間に、彼女が健輪寺の庵主・持澄の元を訪れていたという証言が……『幻の棲む絵巻』、
前日に会ったばかりの、東京総合美術研究所の研究員・成瀬いずみから“ゴッホです!”というメールをもらった瞬介。研究所が鑑定を手がけていた、ケイコ・ラッセル・コレクションの中にあった絵画がゴーギャンである物証に関わる内容を知らせようと思ったメールらしいが、詳しいことがわからない。早速、研究所に足を運んだ瞬介だったが、肝心のいずみがなかなか出社しない。不審に思ったイラストレーターの彼女の兄・雅紀と、その恋人で美術プランナー・緒野祥子とともに、家に向かうと、いずみが死んでいた。現場は二重の密室状態にあり、彼女は精神的に不安定な面もあった為、自殺ではないかと思われたが、その片耳は茶色に染められていて……『『ひまわり』の黄色い囁き』、
瞬介が講師を務めるカルチャースクールの、かつての教え子である岸辺仁志の作品展に、亡き妻の墓参りのついでに足を伸ばして立ち寄った御倉父子。その美術館は山ノ端貝殻美術館という名(建物の形が貝に似ていることに由来)の個人美術館で、館長の平田が亡き妻の遺志を継ぎ運営している<注文の多い美術館>だった。そんな美術館に、ひょんなことから1泊することになった瞬介たちだったが……『黄昏たゆたい美術館』の5編収録。

絵画修復士・御倉の遭遇する事件を描いたミステリ・第2弾。
和洋さまざまな絵画についての薀蓄が楽しい作品集でした。

<08/8/15>


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