ストラバイトSOS!

愛犬・愛猫の尿の中にキラキラ光る粒々(ストラバイト)が見えたらSOSです。尿のpHチェックに特許pHスティックをどうぞ!

83 茹で野菜厳禁-1

2007年03月23日 08時03分44秒 | 犬・猫

 部録63号(茹で野菜を止めよう)の書き方が婉曲すぎたようなので、改めて書き直してみます。
 獣医師会の年次総会や学会、学術講演会などで普通に見かける光景ですが、老眼で縫合針に糸を通せなくなったり、酒毒が手に回って指が震えたりする老院長たちは、ロビーや廊下の片隅に群がって今宵の相談に余念なし(会場に入れば臨床医レベルアップ教育の履修単位をもらえる)。そこに行けば昔の同級生に会えるので、酒が飲めない私も仲間に入れてもらいます。そこでは様々なウワサや裏話が飛び交います。
 その一つに、「あそこの缶詰を食った犬や猫はイチコロだ、3ヶ月で石ができる」というウワサを聞きました。まだ拙宅の柴犬デン(http://www4.ocn.ne.jp/~ken2/den.htmご参照)が元気な頃の話です。気になったので「あそこ」はどこなのか教えてもらう。エッ、ウソだろう! 周囲を見回すと、皆さんニヤニヤしていて誰も否定しない。どうやら臨床医たちの間では、周知の有名な話だったらしい。
 ビックリしたのも当然、現にウチの柴犬に常用していたからです。量販店で一番安価だった。毎日、缶詰1個+人間の食べ残し(飯、肉、魚など)を喜んで食べていました。すでに5年ほど常用しているから、もうすでに尿結石ができてしまったかもしれない。いったい、この缶詰の何がイケナイのだろう?
 茶色っぽい餌からは、食欲をそそる肉の匂いが漂ってきます。当時、ペットフードの原料表示は義務化されてません。缶詰製造工程中に高温で加熱されたイルカだか廃用乳牛だかの肉に、増量材としてニンジンとグリーンピース、それにスイカの皮を刻んだような正体不明の物体が入っているだけ。これらのどこがイケナイのか。何も分からぬまま、気味が悪いので別のメーカーの缶詰に切り替えました。その6・7年後、柴犬デンは一度も動物病院の世話になることなく老衰し、穏やかに死にました(享年14歳半)。
 後年、特許pHスティックの通販を開始し、犬や猫の飼い主様たちと盛んにメールのやり取りをするようになってから、昔の「あそこ」を思い出しました。3ヶ月で尿結石ができたというウワサが事実なら、たぶん増量材のせいに違いない。イルカか何かの肉が犬や猫の体内で酸を産生する。その酸を凌駕し得るアルカリ性食品として、加熱された野菜や果皮などが大量に混ぜられていたのだろう。そのため、尿がアルカリ性になったまま持続し、ストラバイト由来の尿結石ができてしまったのではなかろうか。
 だが、運動充分だった亡きデンには血尿もストラバイト(尿晶)も無縁でした。察するに、尿結石ができたのは運動不足の犬・猫だけだったのではなかろうか。当時は、都市部をちょっと離れたら犬は繋がず放し飼い、猫は窓から外出自由。室内に閉じ込められて暮らす犬・猫が珍しかった。そのため、造石缶詰は獣医師仲間でのウワサに留まり、テレビや週刊誌などで騒がれなかったんだと思われます。
 問題になった「あそこ」は、今も健在。当時と同じ商品名のコマーシャルを年がら年中、テレビで見せられてます。恐らく、獣医師仲間のウワサを察知し、素早く缶詰内容を変更したんでしょうね。
 変に正義感に駆られて指弾したりしていたら、足をすくわれ恥をかき、名誉毀損・営業妨害・賠償請求などと告訴されていたかもしれない。ひと様の製品を良いの悪いのと批評しない方が無難だという教訓を、改めて痛感した次第です。
 こういう隠れた事例を知っているからこそ、隠居の分際でありながら、声を大にして「茹で野菜厳禁」を唱えることができるのです(次号に続く)。Dr.中島健次



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