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陶磁器“ステッキ「kz-arita」発表”

2009-12-17 11:05:45 | 過去のBlog記事

僕はデザイナーです。だからかねてからモノが好きだと公言しています。
そんな僕が、ついにというか、やっとというか、
陶磁器の世界に入ったことを皆さんにご報告します。
「器」をデザインしたわけではありませんよ。「器」はこれからです。
佐賀県の有田焼のメーカー・有限会社福泉窯さんから話をいただいて、
ステッキ「kz-arita」をデザインしたのです。
何も陶器でできたステッキを作ったわけではないですよ。
ステッキの装飾の一部に有田焼を組み込んだのです。
シャフトとグリップの間に有田焼を配置して、
伝統工芸品が持つ美しさと高級感をステッキに同居させました。
つまり、「デザイン」と「デコレーション」の融合の場として陶磁器界に入ろうとしています。




Artgene002

有田焼の「デコレーション」=加飾性を「機能性」に!




今回、本当はチェスについて話を書こうと思っていたんです。
ずっと取り上げたいトピックスだと思っていたので。
僕はチェスが好きでよく遊んでいるのですが、めちゃくちゃ下手です。
コンピュータを相手にしてプレイすることもあります。
絶対に負けてパソコンをこわそうとすら思います。
同じ駒を扱った盤遊戯として、日本には将棋がありますね。
でも将棋というのは、日本人のどこか島国根性がにじみ出ているので、僕は好みません。
チェスは一度駒を相手に取られてしまったらそれまでですが、
将棋は駒を復活できますよね。
あれは潔ぎよくない。
戦国社会のサムライたちは、みんな囲碁に触れています。
あれもチェスと同じで駒が生きられるのは一度きり。
実に潔いじゃないですか。
ところが、将棋は町人文化の中の遊戯なので、そんな潔いことを求められていない。
駒が蘇って、取り返しが利くようになっているという、
ちょっと位が低い人たちならではのミミチィーいさな性格が表れているんです。
また、機会があれば、チェスについて話をしましょう。




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このチェスは、硝子製でポピュラーなモノだが、それなりに存在性があり美しい。
TVドラマの「相棒」でも小道具となっている。




さて、話を戻します。
僕は、常々街中で高齢者の方々がステッキを使って歩いている姿を見かけると、
その姿がステッキというよりリハビリ用具のツエだからあまりにもみすぼらしいのです。
なんとかしてあげたいと思っていました。
日本のステッキはリハビリテーションの道具の域からいまだに抜け出せていない。
単なる自補助具に止まってしまっている。
実は、僕はステッキも収集しているんですよ。
西洋のステッキは、様々な工夫があります。
そして、なんと仕込み杖も持っています。
刃のついてない合法の仕込み杖ですよ。
それに「刃をつけてほしい」とタケフナイフビレッジの仲間に頼みましたが見事に断られました(笑)。
僕は、ずっと以前から真っ白な頭髪になるほど年を取ったら、赤い服を着て、蝶ネクタイをつけて、ヒゲをたくわえ、
そして、ステッキをついて街をかっ歩したいと思っていたんです。
これこそ男のダンディズムでしょう!
とても尊敬できる経済界のトップがステッキをついて歩いていて、
それを「思わずダサいよ」言ってしまったことがありました。
それで、僕はその人にステッキをプレゼントする約束を交わしたのです。
そもそも、福泉窯さんから話をいただいた時、最初は茶碗を手がけようかと思ったんですが、
以上のような思いや経緯もあって、今回陶磁器でのステッキに着手したんですよ。



ステッキの装飾品としての有田焼。
デザイナーとしては、その装飾品をどこまでをデザインとして捉えるのか、
どこまでをデコレーションとして捉えるのかが、考えなければなりませんでした。
さらに僕は、人間工学というより生体工学に基づいてグリップデザインを考え、
重心がステッキの中心部にかかるよう考慮しました。




Artgene001

「トーラスグリップ」の開発によって、
生体工学的な重心精度と身体保持性能をアップ。





Artgene003

これまでのグリップ形態に近似しているが、
三次面として詳細設計で「グリップ」性能をアップ。





Artgene004

有田焼が凹面形状であり上下リングによって破損を防止!




石突きは、ウレタン系エストラマーをベースとしてゴム素材で、
摩擦抵抗を上げる特殊な成型方法のある製品からヒントを得ました。
トボロジー空間論のトーラス形状とバイオメカニズム応用による
確実な身体保持性能性を実現させたと自負しています。




Artgene005

「石突」と呼ばれるパーツは、高密度エラストマー素材を開発。
「滑らない・すり減らない」という
これまでのステッキの欠点をカバーする「性能・効能」性を
ステッキの「機能性」という「要因設計」としている。




シャフトを削るにも、奈良県の杖造りの専門家に頼みました。
日本の伝統工芸のコラボレーションをめざしました。
そして、何よりも、装飾品としての有田焼を完璧なまでに焼くのは、かなりの精度が要求されます。
完成された「kz-arita」は、有田焼の新次元を開拓できると考えていますから、
これを契機に、いよいよ茶碗やカップのデザインに踏み込もうと思っています。



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