あるタカムラーの墓碑銘

高村薫さんの作品とキャラクターたちをとことん愛し、こよなく愛してくっちゃべります
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合田さんのヴァイオリン

2005-01-03 01:15:12 | レディ・ジョーカー(単行本版)再読日記
12/31から1/1にかけては、第五章 のp307から 終章 のp443まで読了。つまり下巻読了。
しかし一気に感想は綴れないので、3、4回に分けてアップします。まずは、第五章 p307からp348まで。

倉田副社長の背信を知る城山社長は、白井副社長の家で面会。白井さんから、ライムライト社が倉田さんを引き抜きにかかっていること、そして内部告発文書を倉田さんに頼まれてワープロで作成したのは城山社長の妹・晴子さんだろうと聞かされて、仰天する城山社長。倉田さんと晴子さんは、二十年以上の男女の関係にあったのだ。
半田さんの尾行を終えた合田さんは、義兄から電話を受ける。警察が動けない今、別のルートで地検が動くのかと思う合田さん。
倉田さんの背信を何とか思いとどめようとする城山社長。しかし倉田さんの答えは「否」だった。
久保っちは根来さん失踪の件で何とか手がかりを掴もうと、根来さんが親しくしていた合田さんの知人に連絡を取ってもらうように、合田さんに頼む。
毎日ビールのビール瓶から、青酸入りのビールが出た。本家本元(?)と関係ない、別の悪党の仕業に呆れる、物井さんや半田さんたち。
警視庁捜査一課長・神崎さんは業を煮やし、城山社長にLJの声を録音したテープを提出するように求め、結局城山社長は折れた。
久保っちは合田さんの知人・自称株屋の加納さんと面会し、相身互いでいこうと協力を約束する。その矢先、第三強行犯の管理官・三好さんが焼身自殺をしたという一報が・・・。

***

えらく長くなってしまった(汗) いろいろ展開があって、内容が濃いんだもん。
今回のツボは、何といってもヴァイオリンを弾く合田さんでしょう!(『LJ』下巻p313~315) 個人的には、合田さんの名場面ベスト3に入るくらい、大好きな場面です。
BGMはもちろん、合田さんの奏でるモーツァルトのヴァイオリンソナタ第25番ト長調と、J.S.バッハのヴァイオリンソナタ ト短調を。・・・って、私はどちらも聴いたことありませんが(爆) バッハが「無伴奏ヴァイオリンのソナタ」であればCD持ってますが、文章からはっきりとは判らないんですよねー。バッハは曲数が多いから、こういう時困ります(苦笑) でも、いつかは買って聴きますとも! 『リヴィエラを撃て』(新潮社) に登場する、ブラームスのピアノ協奏曲第2番も買って聴いたんですから。

閑話休題。ヴァイオリンを弾いている合田さんのこの場面、実は合田さんにとっては○スター×ーション(←恥ずかしいので伏字・苦笑)に等しい行為ではないのか、というご意見を読んだことがあります。最初はさすがに「ええ~!?」と拒絶反応を示したのですが、今では「一理あるかもなあ」と微かに思うようにも(苦笑)
合田さん、恍惚としてヴァイオリンを弾いているようにも思えるんだもの。セレクトでも挙げますが、「半田さん三連発」と個人的に呼んでいる文章があるんですが、ぴたりと当てはまるんですよ。
男性の本能・生理についてはイマイチ理解しがたい女ですので、何とも言えないんですが・・・  ま、参考までに(?) これに関しては、ぜひ男性のご意見をお伺いしたいものですね。

久しぶりに白井さんが登場したので、嬉しい私 
もう、城山社長を驚かせて、反応を見て楽しむのが生きがいのような、今回の白井さんの言動(笑) 鯉の洗いと鯉こくを自らさばいてふるまって、倉田さんをライムライトが引き抜きにかかっていること、倉田さんと城山社長の妹で故・杉原さんの妻の晴子さんとは、二十年以上の不倫関係にあったことを暴露。
城山社長も辛いですよね。腹心中の腹心・倉田さんに裏切られて。LJに脅迫されたのは日之出ビールではなくて、事実上は城山社長の姪の一件であったことを倉田さんにだけ告白しても、倉田さんは頑として内部告発文書の撤回をしない。不本意にも総会屋の岡田経友会に弱みを握られて、刺し違えようと思ったという倉田さんの気持ち・・・辛くて痛いほど、ひしひし感じます。

***

★☆★本日の名文・名台詞  からなのセレクト★☆★
今回も多い&長いです。

★「大人の男女の話に、お互い野暮は言いますまいよ」 (『LJ』下巻p309)
ああ、この白井さんのこういう口調が好きや~  たまりませんわ。

★半田さん、あんたも同世代なら、だいたい想像はつくだろう? (・・・略・・・) 要は、母子それぞれに、豚小屋の檻から精いっぱい首を突き出して、未来の見通しも計算もない、何も生むものもない甘美な夢想に浸っていた。その時間こそが、自分と母親をいっとき現世から救い出していたということだ。あんたには分かるだろうか。 (『LJ』下巻p314~p315)

★半田さん、分かるか。俺は才能がないから十分な表現は出来ないが、この和声や旋律は、これ以上足すものも引くものもない、純粋な情熱に満ちた魂の詠嘆だ。この響きは、何千年来、死や貧困や像などを無数に通り抜けてきても、人間はまだ純粋でいられることの証だ、人間の魂を救う響きだ、生きる価値を人間に教える響きだ、と合田は語りかけた。 (『LJ』下巻p315)
合田さんが例えているのは、バッハのヴァイオリンソナタのこと。実はこれ、上巻で合田さんが教会で弾いているのを、半田さんが盗み見と盗み聞きした曲とイコール(のはず)なんですよね・・・。

★半田さん、これはあんたの知らない響きだろう。 (・・・略・・・) 未来のなさという意味ではまさに檻の中の檻に自分を追い込んで、あんたは今、何を思うのだ。
豚のような人生でも、人間が純粋でいられることを知っている俺の方が、あんたよりは少しは救われている。この先、あんたには間違いなく破綻しかないが、俺にはまだ少しは道が残っている。
 (『LJ』下巻p315)
以上、「半田さん三連発」でした。ああ私やっぱり、この辺りの合田さんが一番好きやわ~ 

★この世のどこかに純粋な情熱が存在すること、人がその前で純粋になれることを知っているというだけで、現実では、物心両面で常に、充足とはほど遠い自分しか知らなかったのだ。 (『LJ』下巻p315~p316)
この一文、後々の展開を知るとすっごいいろんな意味が含まれていることに、気付かされますよ・・・。

★「私は内部告発を決める前、ほんとうに田丸と刺し違えようと思ったことがあります。貴方には、私が田丸に懐いている憎悪は分からない。あの男の前で、畳に額をつけて土下座した自分を、悔やんでも悔やみ切れない気持ちです」 (『LJ』下巻p323)
倉田さん、一世一代(?)の名台詞。何をコメントすることがありましょう・・・。

★自分は悪鬼だと勝手に納得していたが、世の中には自分のこの黒い腹よりもはるかに黒い腹の持主たちがおり、はるかに大きい悪意をもって、社会を動かしていくのだ。 (『LJ』下巻p330)

★「学生時代から十八年間の付き合いです。水と油ですが、よくかき混ぜると混ざらないこともない。そういう間柄ですかね」 (『LJ』下巻p348)
合田さんと加納さんの関係を久保っちに聞かれて、答えた加納さんの台詞。・・・よく判るようで判らん・・・義兄の発言は意味が深すぎて(苦笑)

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