ニッキー・シックス。
LAメタルシーンのスターバンド、モトリー・クルーのベーシストにしてほとんど全ての方向性を決めるリーダーでもある。
そしてバンドでいちばんカッコいい。
そんなニッキーが1987年12月末から1年間つけていた日記「ヘロイン・ダイアリーズ」を読みました。
とにかく思ったこと。
神様!ニッキー・シックスを生かしてくれてありがとう。
この生活で命を落とさず、麻薬を絶ち、今もモトリーを続け、モトリー以外の自分のプロジェクトで「今の音楽」もやっている。
やはり「まだやるべきことがあった」人だったのね。
中身は、麻薬常習者の出口のない日常や心理を毎日語ったもの。
ただ「日常」とは言っても....
彼がアクティブに活動してる超人気者で、全米ツアー(豪華ホテル、飛行機移動、会場となるスタジアム...)や
ハリウッドの人気クラブの様子、友人でもある他の人気ミュージシャンとの交流が描かれ、ビンボーくさくはありません。
ありませんが、全編、ジャンキーってこんな悲惨なんだよ、という示唆に富んでおります。
実際、この本を書いた理由として「一人でもこれを読んだ人を救えるかもしれないから」と言っています。
その目的は果たせてると思います。
もし一瞬でも麻薬がカッコいいものだと思っちゃうようなアホな若者も、これ読んだらこんなのイヤだと考えると思う。
不誠実で嘘つきで不潔(←そーなんです)。人間関係も崩壊していく。そもそもダメ人間ばかり集まってくるしね。
日記には、あちこちたらい回しにされ家庭的に恵まれなかった孤独な生い立ち、その後の祖父母や母親とのやりとりも
出てくるんだけど、かなり切ないです。
だから麻薬に走った、とは彼は言わない。
でも後年、家出した子どもたちを救う組織「Rnnning Wild In The Night」を始め、今もずっと続けていることを思うと
愚痴を言うのでなく、行動に移したのでしょう。
当時の関係者やメンバーのコメントも細かく載っていて、ロックファンには別の面白さもあります。
はちゃめちゃな全米ツアーの様子も(麻薬の話はおいといて)、興味深い。
こんな破綻した状態なのにレコーディングは成り立つ。ちなみに「ガールズ・ガールズ・ガールズ」の頃のこと。
才能がある人にありがちな冷酷さもところどころ出てくる。かっこわるいメンバーに対するイジワルな態度と言ったら!
ああ、バンドだわ。
当時の写真もたくさん、赤と黒でRockっぽく、イラストや装丁にも凝っていて、なぜか紙質がすごく良くて重い(笑)本。
読了するのにそれなりにエネルギーが要ったけれど、今彼が元気なことを知ってるせいか、読後感は良いです。
そしてわたしは決めました。
ただいま全米ファイナルツアー中のモトリー・クルーは来年2月に来日します。
行こうっと!
そういう気持ちになる本だったってことです。