バルセロナにて その2 「ガウディの伝言」

　ガウディの建築の素晴らしさは、実際にその場にいなくてはわかりませんが、「ガウディの伝言」（光文社新書）を読むと、理解できると思います。著者の外尾悦郎氏は、約40年間もサグラダ・ファミリア教会の彫刻家として、15体の天使像を初めとして、多くの彫刻を完成させた方です。ガウディを最もよく理解している人のひとりでしょう。スペイン内戦で破壊された彫刻を復活させたという功績があります。

　聖家族、すなわちイエズス、マリア、ヨゼフのための教会が、”Sagrada Familia”教会という訳ですが、内部空間の聖なる雰囲気には、感動させられます。まるで、深海の底にいるかのような静謐な空間は、どれほど多くの観光客がいても損なわれることはありません。キリスト教の信者でも信者でなくても、美しく荘厳な雰囲気を味わうことができるでしょう。

　ガウディは、自然のものから形態を学んでいます。動物、魚、果実などの形を巧みに写し取って彫刻に生かしています。あるいは、幾何学的な形状、放物線や懸垂線（カテナリー）や双曲線を採用しています。ガウディのデザインがどれほど奇抜に見えても、悪趣味でないのは、永続性のある自然から学んでいるからでしょうか？