ランド・オブ・プレンティ

2006-06-26 23:51:30 | ヒューマン・ドラマ
ヴィム・ヴェンダース監督、2004年の作品。
豊かな国アメリカが見つめてほしい自国の姿を描く作品。

ある日ベトナム帰還兵のポールのもとへ、姪のラナから連絡が入った。
ラナの父親は神父で、家族とともにさまざまな国を巡り、
アフリカに行き着いていた。そこで育ったラナだが、
母親が亡くなり、父親も命に関わる病気に。
ラナは生まれ故郷のアメリカを見ようと、
そして、母が仲違いしていた兄である叔父のポールに
母の手紙を渡すため、叔父のもとを訪れる。

この映画の背景に、2001年9月1日のワールドトレードセンタービルに
2機のボーイングが突っ込んだテロ事件がひかれている。
ポールはベトナム戦争で悲惨な体験をし、
まだ肉体的にも精神的にも後遺症が残っていた。
それが9・11の映像を見て以来、悪夢に侵されるようになる。
そして、機材を用意し、テロリストからアメリカを守ろうと、
パラノイア的になり、あやしい人物がいないか
一人パトロールし日々を過ごすようになった。

またラナは、あの日、あの事件が起こったとき
自分の住む町で歓喜の声を聞いたのがショックだった。
「アメリカは、私たちは、こんなにも嫌われているんだ・・・」
そこからラナの悪夢が始まる。

一人でアメリカを守ろうと空回りする叔父に、
ラナは優しく接し、力になろうとする。
ベトナムで死にかけた悪夢にうなされるポール叔父さんの姿に涙ぐむラナ。
結局、ポールが追っていたあやしげな人物たちが
彼の勘違いだったことが発覚したとき、
ポールの心は少しは解放されたんではないだろうか。
きっと「アメリカを一人で守ろうとしていたなんて・・・」
と苦笑いできたのでは。

アメリカという世界の中心といわれる国にしがみついてきたポール。
アメリカを外から見て育ってきたラナがその心に優しく触れてあげた。

ラスト、LAからニューヨークのグラウンド・ゼロまで旅する2人。
「(犠牲者の)声に耳を澄ますの」とラナ。

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1 コメント

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アメリカ (kimion20002000)
2006-07-08 22:28:23
TBありがとう。

9.11以降は、アメリカの良識的な知識人も、ほとんど発言できる雰囲気ではなかったですね。ようやく、この1年、客観視して捉えられるようになってきました。そんなとき、ヴェンダーズが、第3者的に愛情を持って、この作品を提出したことになりますね。

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