kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

聯合艦隊司令長官 山本五十六

2011年12月24日 | 邦画
日時:12月20日
映画館:シネツイン新天地
パンフレット:A4版700円。
その他:ウチの小僧と一緒。

ウチの小僧に、公開初日に行くかどうか訊いたら、二つ返事で「行く!」。ということで、3日前からチケットを押さえました。

そういえば、ワタシが小僧と同じ年頃、「連合艦隊」に連れていってもらったよな。その時の山本五十六は小林桂樹、今回は役所広司なのだが・・・

う~ん、困ったことに役所広司が役所広司にしか見えない。山本五十六っぽさが微塵も感じられない。山本本人を知っているわけではないのだが、これまで実在の人物を取り上げた映画では、似ていようが似ていまいが役者本人と実在の人物の中間点ぐらいの雰囲気があることが多かった。
ライフ・イズ・コメディ」のジェフリー・ラッシュなんて、ピーター・セラーズに全然似ていないのに、「本人もそうだったに違いない」と思わせるものがあった。

演技うんぬんや風貌ではなく、役所広司本人にオーラがありすぎて、それを打ち消せないといった感じ。もしくは、役所広司の方が山本のキャラクターを引き寄せていないのか・・・。南雲中将を演じた中原丈雄や宇垣参謀長の中村育二の方が外見的には近いんじゃないかな。NHK「坂の上の雲」の渡哲也なんて、外見は全然違うんだけど、薩摩ことばと大仰なヒゲで、それらしく見えているのに。

付け加えるなら、役所広司の声がきれいすぎる。これまた山本本人の肉声を知っているわけじゃないけど、海軍軍人の声ってもっと野太いような気がする。江田島の海自術科学校で案内してくれた自衛隊OBの人も「海の上では最後は声のでかさです。」と力説していたし。

話の方も海戦シーンが少なく、展開が盛り上がりに欠ける。ノースフィールド襲撃の出ないジェシー・ジェームズ映画「ジェシー・ジェームズの暗殺」じゃないが、戦艦アリゾナの爆発しない真珠湾攻撃映画なんて考えられないだろう。(コピーにあった「戦争スペクタクル」はどこがやねん。)

歴史上、山本五十六は真珠湾やミッドウェーにいた訳じゃなく、情報だけでしか見聞きしていないから、こういったおとなしい表現もアリなのかも知れない。しかし「トラ・トラ・トラ」なんて、奇襲攻撃成功に沸く現場の高揚感があるから、逆に宣戦布告の失態を知った山本の悲痛さが際立ったのだと思う。

PCの戦争ゲームをやっていて、自分の判断ミスで部隊を無駄に消耗してしまうと罪悪感にとらわれるのだが、それを思うと実際の指揮官はその感情をも抑え込む強い意志力が必要なのだとつくづく感じさせられる。そこの感情のメリハリが映画にするとなかなか難しく、「パットン大戦車軍団」のジョージ・C・スコットくらい大げさでないとなかなか伝わらない。

さらに目障りなのは、新聞記者役の玉木宏。日本の戦争映画によくある「良識派」の役なのだが、顔立ちが今風な上、演技が軽いのか、存在感がなくて話の腰を折っているようにしか見えない。(役名が真藤利一と原案者の名前をもじっているあたりが、これまたいやらしい。)時流に乗って、都合のいい熱弁をふるう香川照之の方がよほど説得力も存在感もある。

陸軍海軍の確執や海軍上層部と現場の思惑違い、戦争に対する思想など、現代とはかなり差のある当時のメンタリティが前面に出ていた点ではおもしろかったけどね。
とはいえ、優秀な人材が揃っているにも関わらず、結局、人事抗争とか場当たり主義とか結論ありきの行動とか前例主義とか、本質的にやっていることは今も昔もあまり変わっていない。






題名:聯合艦隊司令長官 山本五十六
監督:成島 出
出演:役所広司、玉木宏、柄本明、香川照之


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1 コメント

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日本インターネット映画大賞募集中 (日本インターネット映画大賞)
2011-12-26 22:04:01
突然で申しわけありません。
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