■8月16日(日)~8月31日(月)
□高橋正子選
【最優秀/2句】
★大花野視界三百六十度/宮本和美
三百六十度という、全方向が見渡せる花野は「大花野」。花野のすばらしさ、雄大な自然に、気持ちが大きく広がる。率直な句。(高橋正子)
★賑わいの漁港の上の鰯雲/佃 康水
出船、入船、魚の水揚げなどで、賑わう漁港。その上の空高くに広がる鰯雲。生き生きとした漁港の美しい景色。(高橋正子)
【特選/7句】
★水平線の蒼き一筋盆の海/桑本栄太郎(正子添削)
盆の海を眺めている。盆の海がひろびろと広がって、遠く水平線が実にきれいな蒼の一筋としてある。作者の思いが一句に籠められ、季節が的確に捉えられた。(高橋正子)
★秋茄子の不ぞろいなるも強靭に/多田有花
真夏の暑さが去り、朝夕が涼しくなってくると、茄子が生き生きとして美味しい実をつけるが、皮が傷んだようなのも、曲ったのも様々。「不ぞろいなるも強靭」なのである。(高橋正子)
★湖と空澄んで近江は米どころ/黒谷光子
琵琶湖の水も、その上の空も、今は秋。水が澄み、空が澄み、さんさんと降り注ぐ陽に、近江平野は稲が熟れ始めて、米どころを実感する。(高橋正子)
★夏星の光を仰ぎ子の帰郷/成川寿美代
帰郷を待ちわびる家族のもとに、子は子のペースの旅だったのだろう、子は夏星を仰ぎ見ながら、元気に帰って来た。夏星の光に抒情があって、あたたかい。(高橋正子)
★箱の荷の泥付き芋は地方紙に/祝恵子
届いた箱の荷を開けると、地方紙にくるまれた畑から掘り起こしたばかりの泥つきの芋が入っている。地方の便りも、合わせて届き、懐かしい思いだ。(高橋正子)
★一片の雲を真白に処暑の朝/藤田洋子
処暑の朝を迎え、まっ白い雲の美しさにうれしさが湧く。暑さも一息つき、朝夕の涼しさが期待できる。処暑というのは、そういう日なのだ。季語を生かした写生だが、詩情のある句。(高橋正子)
★快晴の陽の透き通る赤とんぼ/甲斐ひさこ
高々と晴れ渡る秋空の中を、赤とんぼが眩しく過ぎてゆきます。ちょうど一昨日、私も同じ光景に心引かれました。きらきら光る羽を陽が透き通って、まるで影ができないんじゃないかしら、と思うほど。美しいひとこまを、そのまま句に描いて下さって、ありがとうございます。(川名ますみ)
【入選Ⅰ/12句】
★秋蛍草の匂いの放棄田/白川友行
残る蛍はなかなか哀れ深いものがありますね。残暑の厳しい折の草の臭いと放棄田の取り合わせが尚更哀れを誘います。良い句だと思います。 (前川音次)
★畝毎のみどりに差あり貝割菜/桑本栄太郎
畝毎のみどりはいかにも涼しげです。その色をよく見れば、畝毎にみどに差があるという。そのわずかな変化も畑ごとの季節の遅速を感じさせ、こまやかな風情を伝えてくれます。 (小西 宏)
★朝顔や洗い立ての格子戸に/古田敬二
「洗い立ての」とあるから充分に手を入れて洗った格子戸にいくつかの朝顔が咲いている景でしょう。何処か町家の並んでいる様子が浮かびます。真っ白な虫籠窓まで見えてきそうです。「洗い立ての格子戸に」がよく調子を整えていて、好きな句。(前川音次)
★鍬取りの音の弾んで処署の朝/國武光雄
処暑の朝とはいえ、鍬の音がさくさくと弾んで流動感溢れる、爽やかな句になって居ると存じます。(宮本和美)
★夕月や子供半纏干してあり/前川音次
秋祭りの夜でしょう、月の明るさのなかに小さな半纏が干してある可愛らしさ。(小西 宏)
★星月夜波間に光る島ありて/迫田 和代
波間に光る…フレーズが好きです。平家物語を、連想いたします。幻想的ですね。 (成川寿美代)
★航跡の弧の大きくて夏の果/篠木 睦
スケールの大きな句とお見受け致しました。映画の一コマを見ている気分似させて呉れ、大いに共感を覚えました。(宮本和美)
★炎天を咲き切る今日の紅芙蓉/平田 弘
割き続ける時間も短いあまり強くない花。それだけに炎天下に咲き続ける紅芙容は印象的である。(古田敬二)
★新涼の水滲ませて墨彩画/柳原美知子
墨彩画を書く墨をとく水にも季節感が感じられました。きっとかかれた絵も初秋の季節感に溢れているのでしょう。(高橋秀之)
★カンナ咲く海の蒼さを見下ろして/下地鉄
カンナと海の蒼さの色彩の対比がとても鮮やかです。カンナをより引き立ててくれる眼前に広がる海が、爽やかな初秋の明るさを感じさせてくれます。(藤田洋子)
★紙ひこうき赤とんぼうも飛んでくる/祝恵子
紙飛行機と赤蜻蛉の取合わせが、ユニークで、季語のよく生きた佳句と存じます。(宮本和美)
★選挙終えゴーヤチャンプル大皿へ/藤田裕子
清き一票を投じ、清々しい気持ちで、家族のために料理の腕をふるい、秋の味覚を食卓に。忙しい中にも、為すべきことをやり遂げた一日の安堵感と充実感が感じられます。(柳原美知子)
【入選Ⅱ/12句】
★青空の青にとけこむ赤とんぼ/渋谷洋介
青空の青と赤んぼの赤の取り合わせも素晴しく、特に中七の「青にとけこむ」の措辞抜群で,詩情溢れる秀句と存じます。(宮本和美)
★朝陽差す生き尽くしたる落蝉に/川名ますみ
一生を生き尽くした蝉の朝陽が暖かく見送っているすがすがしさ好きです。(平田 弘)
★虚空よりとんぼ湧きおる棚田かな/小口泰與
上五の「虚空より」の措辞が抜群で、棚田に秋あかねが湧き出る様に乱舞して居る景色が見えて来ます。素敵な秋の景の句と存じ、共感を覚えます。(宮本和美)
★青芝を啄ばむ処暑の野鳩かな/下地鉄
青芝の庭に米を撒いてやつたのかな、それとも虫でも居るのかな。いずれにしても、季語の「処暑」の使い方に一工夫があり、微笑ましい句となって居ると関心致しました。(宮本和美)
★多摩丘陵とつぷり暮れて夜涼かな/飯島治朗
多摩、武蔵野に、育ちましたので、とっぷりに、共感いたします。丘陵が、シルエットになって、暮れていく景色が、目に浮かびます。(成川寿美代)
★子等帰り遊具しんとす虫の夜/小川和子
昼間の子どもたちの喧騒と打って変わった静かな公園。虫の音がその静けさを際正せて感じさせてくれました。(高橋秀之)
★踊り手の端縫い(はぬい)を照らすあかあかと/丸山美知子
端縫いを付けた手が光りに照らされ楽しく元気に踊っていらっしゃる方の動きが目に浮かんで参ります。(佃 康水)
★睦みあい秋空に舞う蝶は二羽/高橋秀之
秋になってふと見かける孤蝶の姿とは違い、爽やかに澄んだ秋空を喜ぶかのように舞う、二羽の蝶の明るく晴れやかな情景です。(藤田洋子)
★虫すだく畑の中で一休み/井上治代
畑仕事の合間に、ふと一息ついて聞く繁く鳴く虫の音。澄んだ虫の音に心身ともに安らぐひとときが、実感をもって伝わります。(藤田洋子)
★吾亦紅花売り娘のにこやかに/河野啓一
少し寂しげな吾亦紅も混じる秋の花々。それらを売っている娘のにこやかさに、爽やかな明るい秋の日差しがひろがってゆくようです。(柳原美知子)
★鳥威し光りバス道広がりぬ/小西 宏
日に日に稲田が黄熟し、その上に鳥威しがきらきらと光り、その先の田舎道にはのどかなバスが通っている。こんな日本の美しい田園風景がいつまでも続いてほしいですね。(柳原美知子)
★猪垣の囲いの中の芋を掘る/宮本和美
動物の害を防ぐために張り巡らした垣の中に入って芋を掘る。(本当はその目的通りの作業なのですけれど)なんだか主従が逆転したような趣があって滑稽味を覚えます。土臭い秋の風景に包まれ、のんびりとした俳諧味を感じさせてくれます。(小西 宏)
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□高橋正子選
【最優秀/2句】
★大花野視界三百六十度/宮本和美
三百六十度という、全方向が見渡せる花野は「大花野」。花野のすばらしさ、雄大な自然に、気持ちが大きく広がる。率直な句。(高橋正子)
★賑わいの漁港の上の鰯雲/佃 康水
出船、入船、魚の水揚げなどで、賑わう漁港。その上の空高くに広がる鰯雲。生き生きとした漁港の美しい景色。(高橋正子)
【特選/7句】
★水平線の蒼き一筋盆の海/桑本栄太郎(正子添削)
盆の海を眺めている。盆の海がひろびろと広がって、遠く水平線が実にきれいな蒼の一筋としてある。作者の思いが一句に籠められ、季節が的確に捉えられた。(高橋正子)
★秋茄子の不ぞろいなるも強靭に/多田有花
真夏の暑さが去り、朝夕が涼しくなってくると、茄子が生き生きとして美味しい実をつけるが、皮が傷んだようなのも、曲ったのも様々。「不ぞろいなるも強靭」なのである。(高橋正子)
★湖と空澄んで近江は米どころ/黒谷光子
琵琶湖の水も、その上の空も、今は秋。水が澄み、空が澄み、さんさんと降り注ぐ陽に、近江平野は稲が熟れ始めて、米どころを実感する。(高橋正子)
★夏星の光を仰ぎ子の帰郷/成川寿美代
帰郷を待ちわびる家族のもとに、子は子のペースの旅だったのだろう、子は夏星を仰ぎ見ながら、元気に帰って来た。夏星の光に抒情があって、あたたかい。(高橋正子)
★箱の荷の泥付き芋は地方紙に/祝恵子
届いた箱の荷を開けると、地方紙にくるまれた畑から掘り起こしたばかりの泥つきの芋が入っている。地方の便りも、合わせて届き、懐かしい思いだ。(高橋正子)
★一片の雲を真白に処暑の朝/藤田洋子
処暑の朝を迎え、まっ白い雲の美しさにうれしさが湧く。暑さも一息つき、朝夕の涼しさが期待できる。処暑というのは、そういう日なのだ。季語を生かした写生だが、詩情のある句。(高橋正子)
★快晴の陽の透き通る赤とんぼ/甲斐ひさこ
高々と晴れ渡る秋空の中を、赤とんぼが眩しく過ぎてゆきます。ちょうど一昨日、私も同じ光景に心引かれました。きらきら光る羽を陽が透き通って、まるで影ができないんじゃないかしら、と思うほど。美しいひとこまを、そのまま句に描いて下さって、ありがとうございます。(川名ますみ)
【入選Ⅰ/12句】
★秋蛍草の匂いの放棄田/白川友行
残る蛍はなかなか哀れ深いものがありますね。残暑の厳しい折の草の臭いと放棄田の取り合わせが尚更哀れを誘います。良い句だと思います。 (前川音次)
★畝毎のみどりに差あり貝割菜/桑本栄太郎
畝毎のみどりはいかにも涼しげです。その色をよく見れば、畝毎にみどに差があるという。そのわずかな変化も畑ごとの季節の遅速を感じさせ、こまやかな風情を伝えてくれます。 (小西 宏)
★朝顔や洗い立ての格子戸に/古田敬二
「洗い立ての」とあるから充分に手を入れて洗った格子戸にいくつかの朝顔が咲いている景でしょう。何処か町家の並んでいる様子が浮かびます。真っ白な虫籠窓まで見えてきそうです。「洗い立ての格子戸に」がよく調子を整えていて、好きな句。(前川音次)
★鍬取りの音の弾んで処署の朝/國武光雄
処暑の朝とはいえ、鍬の音がさくさくと弾んで流動感溢れる、爽やかな句になって居ると存じます。(宮本和美)
★夕月や子供半纏干してあり/前川音次
秋祭りの夜でしょう、月の明るさのなかに小さな半纏が干してある可愛らしさ。(小西 宏)
★星月夜波間に光る島ありて/迫田 和代
波間に光る…フレーズが好きです。平家物語を、連想いたします。幻想的ですね。 (成川寿美代)
★航跡の弧の大きくて夏の果/篠木 睦
スケールの大きな句とお見受け致しました。映画の一コマを見ている気分似させて呉れ、大いに共感を覚えました。(宮本和美)
★炎天を咲き切る今日の紅芙蓉/平田 弘
割き続ける時間も短いあまり強くない花。それだけに炎天下に咲き続ける紅芙容は印象的である。(古田敬二)
★新涼の水滲ませて墨彩画/柳原美知子
墨彩画を書く墨をとく水にも季節感が感じられました。きっとかかれた絵も初秋の季節感に溢れているのでしょう。(高橋秀之)
★カンナ咲く海の蒼さを見下ろして/下地鉄
カンナと海の蒼さの色彩の対比がとても鮮やかです。カンナをより引き立ててくれる眼前に広がる海が、爽やかな初秋の明るさを感じさせてくれます。(藤田洋子)
★紙ひこうき赤とんぼうも飛んでくる/祝恵子
紙飛行機と赤蜻蛉の取合わせが、ユニークで、季語のよく生きた佳句と存じます。(宮本和美)
★選挙終えゴーヤチャンプル大皿へ/藤田裕子
清き一票を投じ、清々しい気持ちで、家族のために料理の腕をふるい、秋の味覚を食卓に。忙しい中にも、為すべきことをやり遂げた一日の安堵感と充実感が感じられます。(柳原美知子)
【入選Ⅱ/12句】
★青空の青にとけこむ赤とんぼ/渋谷洋介
青空の青と赤んぼの赤の取り合わせも素晴しく、特に中七の「青にとけこむ」の措辞抜群で,詩情溢れる秀句と存じます。(宮本和美)
★朝陽差す生き尽くしたる落蝉に/川名ますみ
一生を生き尽くした蝉の朝陽が暖かく見送っているすがすがしさ好きです。(平田 弘)
★虚空よりとんぼ湧きおる棚田かな/小口泰與
上五の「虚空より」の措辞が抜群で、棚田に秋あかねが湧き出る様に乱舞して居る景色が見えて来ます。素敵な秋の景の句と存じ、共感を覚えます。(宮本和美)
★青芝を啄ばむ処暑の野鳩かな/下地鉄
青芝の庭に米を撒いてやつたのかな、それとも虫でも居るのかな。いずれにしても、季語の「処暑」の使い方に一工夫があり、微笑ましい句となって居ると関心致しました。(宮本和美)
★多摩丘陵とつぷり暮れて夜涼かな/飯島治朗
多摩、武蔵野に、育ちましたので、とっぷりに、共感いたします。丘陵が、シルエットになって、暮れていく景色が、目に浮かびます。(成川寿美代)
★子等帰り遊具しんとす虫の夜/小川和子
昼間の子どもたちの喧騒と打って変わった静かな公園。虫の音がその静けさを際正せて感じさせてくれました。(高橋秀之)
★踊り手の端縫い(はぬい)を照らすあかあかと/丸山美知子
端縫いを付けた手が光りに照らされ楽しく元気に踊っていらっしゃる方の動きが目に浮かんで参ります。(佃 康水)
★睦みあい秋空に舞う蝶は二羽/高橋秀之
秋になってふと見かける孤蝶の姿とは違い、爽やかに澄んだ秋空を喜ぶかのように舞う、二羽の蝶の明るく晴れやかな情景です。(藤田洋子)
★虫すだく畑の中で一休み/井上治代
畑仕事の合間に、ふと一息ついて聞く繁く鳴く虫の音。澄んだ虫の音に心身ともに安らぐひとときが、実感をもって伝わります。(藤田洋子)
★吾亦紅花売り娘のにこやかに/河野啓一
少し寂しげな吾亦紅も混じる秋の花々。それらを売っている娘のにこやかさに、爽やかな明るい秋の日差しがひろがってゆくようです。(柳原美知子)
★鳥威し光りバス道広がりぬ/小西 宏
日に日に稲田が黄熟し、その上に鳥威しがきらきらと光り、その先の田舎道にはのどかなバスが通っている。こんな日本の美しい田園風景がいつまでも続いてほしいですね。(柳原美知子)
★猪垣の囲いの中の芋を掘る/宮本和美
動物の害を防ぐために張り巡らした垣の中に入って芋を掘る。(本当はその目的通りの作業なのですけれど)なんだか主従が逆転したような趣があって滑稽味を覚えます。土臭い秋の風景に包まれ、のんびりとした俳諧味を感じさせてくれます。(小西 宏)
※コメントの無い句にコメントをお願いします。書き込みの場所は、下の<コメント欄>です。よろしくお願いします。コメント以外は書き込みは、ご遠慮ください。