花冠ブログ句会

主宰・選者/高橋正子 世話人/藤田洋子

今日の秀句

2011-04-16 06:29:36 | Weblog
4月16日(土)
★棟上の木槌はるけし桜散る/小西 宏
棟上の槌音が遠くから聞こえてきて、折りしも、桜が散っている。春も暮れの季節に、槌音が晴れ晴れと響いているのは、明るい。(高橋正子)
 
★木の芽晴れ山路に水のころがる音/河野啓一(正子添削)
木の芽晴れの山路に水音がして、水音から春が湧き出ているようだ。「水の音のして」は、水の音をよく聞いて、どんな様子の音か、その表現がほしい。(高橋正子)

4月17日(日)
★桃咲いて印旛の広野を風わたる/後藤あゆみ(正子添削)
「印旛」の地名がよく効いて、桃が咲く広野の景色が詩的に、奥行き深くなった。さらに「風わたる」も実感として、納得できる。(高橋正子)

4月18日(月)
★水暮れて水に明かるし花屑は/藤田洋子(正子添削)
水は暮れたが、水面に散った花屑は、白く明るく暮れ残っている。抒情のある句であるが、「水に明かるし」と言い切って、「水暮れて」の言葉の重さを軽くした。(高橋正子)

★すかんぽの赤き穂が伸び揺れにけり/桑本栄太郎(正子添削)
すかんぽの穂は、伸びて来たばかりのころは、茶色がかった赤い色がやわらかで美しい。そよ風に揺れると、色に動きが出て楽しいものである。元の句の「さ揺れ」の接頭語「さ」は、情的なので、俳句では情は排したい。(高橋正子)

4月19日(火)
★潮の香の強き港に春の月/佃 康水(信之添削)
港に来ると潮の香りが満ちみて、港を見下して春の月がかかっている。潮の香と春の月に、読み手の立ち位置がはっきりして、秀句となった。(高橋正子)

4月20日(水)
★整いていよいよ田水張られゆく/後藤あゆみ
田水を張る準備が万端整って、いそいそと水が田に流れ込み、田に張られていく。「いよいよ」には、読み手の心の弾みがあって、田植えの季節を迎えた嬉しさがある。(高橋正子)

4月21日(木)
★平らかに光を湛う代田かな/後藤あゆみ
「平らかに」には一見ありきたりのようだが、それに終わらず、さらに観察を深めて、「光を湛う」と見たことで、句がリアルになり、対象に即して心情の深いところが出た。(高橋正子)

4月22日(金)
★葉の中の淡き色した桜餅/高橋秀之
桜餅を包む茶をおびた鶯色の葉に包まれる桜餅のほんのりとした紅色は、おっとりと美しい。句のリズムがゆったりとして内容とよくあっている。(高橋正子)

4月23日(土)
★くっきりと雲より白き花水木/川名ますみ
「雲より白き」に詩情がある。花水木の花が「くっきりと」することも珍しいが、「雲より白き」で「くっきり」が、納得できるものになった。(高橋正子)

4月24日(日)
★月明かりして生垣の満天星(どうだん)光る/佃 康水(正子添削)
原句の「星月夜」は、秋の季語で、季重なりとなるので、「月明かりして」と直した。満天星は、鈴蘭のような小さく白い花を無数につける。月明かりに見える満天星の清楚な花が美しい。(高橋正子)

4月25日(月)
★杉の香の竿まっすぐに鯉のぼり/後藤あゆみ
鯉のぼりは男子の健やかな成長を願って建てられるものなので、それに相応しく、杉の香も新しく、まっすぐな竿。特別な技巧もなく詠んで、さわやかである。(高橋正子)

★アドバルーンの糸長く引く春の空/藤田裕子(正子添削)
原句のテーマは「糸長し」にあったので、春の空をテーマにして添削。アドバルーンが長く糸を引いてゆらりと空にあがっている長閑さは、春の空なればこそ。(高橋正子)

4月26日(火)
★富士に向く風の庭あり藤の花/小西 宏(正子添削)
富士山に向いた庭は、それだけでよい眺望。その庭に風に揺れる藤の花があって、豪華。原句の「風吹き」が問題なので添削。(高橋正子)

4月27日(水)
※該当作品なし

4月28日(木)
★一木を虜に蔦の芽の紅き/黒谷光子
芽吹いたばかりの蔦の芽が、一木をかんじからめに網目状に蔓を張っている。「虜に」は、そういった様子。蔦の芽の艶のある紅さがよく、したたかにも木を虜にしておもしろい。(高橋正子)

4月29日(金)
★みどり濃き山河となりぬ昭和の日/桑本栄太郎
昭和の時代は、振り返れば、まだ国民の心がしっかりしていた。みどり濃き山河がたしかな国土を象徴して、昭和の日にふさわしい。(高橋正子)

4月30日(土)
★青竹を立てて泳がす鯉幟/河野啓一(正子添削)
原句の「押し立て」は、その行為に重点がゆきすぎるので、添削し、季語「鯉幟」が生きるようにした。青竹に泳ぐ鯉幟が風にさわやかで、男子の健やかな成長を願う気持ちをよく伝えている。(高橋正子)

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17 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お礼 (河野啓一)
2011-04-17 16:55:02
正子先生
「木の芽晴れ」の句を添削賜り、4/16の秀句にお採り下さいまして大変有り難うございました。平板な句が活き活きと動きのある句になりました。
お礼 (小西 宏)
2011-04-18 17:35:50
高橋正子先生
「棟上の木槌はるけし桜散る」を4月16日の「今日の秀句」にお選びくださり、たいへんありがとうございました。
お礼 (後藤あゆみ)
2011-04-18 22:18:14
正子先生
17日の秀句に「桃咲いて」の句を「桃咲いて印旛の広野を風わたる」と添削の上、おとりいただきましてありがとうございます。
「を」の助詞を入れなければいけませんでした。
桃の花は無邪気な明るさが感じられて好きです。
お礼 (藤田洋子)
2011-04-19 11:26:49
正子先生、18日の秀句に「花屑」の句を取り上げていただき、句評もいただき大変ありがとうございます。このような丁寧な添削のご指導をいただき、心より感謝いたします。「水に明るし」の言い切り、とても理解できました。
御礼 (桑本栄太郎)
2011-04-20 00:04:45
正子先生
「すかんぽ」の句に大変適切なる添削ご指導を賜り、18日の今日の秀句にお選び頂き大変有難うございます。又、素敵なコメントも頂戴しまして有難うございます。通勤の途中の道すがらに、気温の上昇と共にすかんぽの茎が伸び、赤茶の穂が伸びてきました。かなり背丈が伸び、花穂が風に揺れますと春の終わりの近い事を覚えます。
お礼 (後藤あゆみ)
2011-04-21 18:53:21
正子先生
20日の秀句に「整いていよいよ田水張られゆく」をお選びいただきありがとうございました。
コメントも大変嬉しくありがとうございます。
素直に感じたままを勢いで詠んでしまったのですが、これで良いのですね。
御礼 (佃 康水)
2011-04-21 21:16:14
高橋信之先生 正子先生
「春の月」の句を添削の上19日の秀句にお選び頂きまして誠に有り難うございます。先生の仰る様に港まで月を観に出て見ました。潮の香のする港で大きな月を暫く眺めていました。添削でよりリアルな句になって嬉しいです。
お礼 (後藤あゆみ)
2011-04-22 17:08:40
正子先生
22日の秀句に「平らかに光を湛う代田かな」をおとりいただき、句評もありがとうございました。
日々変化してゆく田の様子が楽しみです。「光を湛う」が認められて本当に嬉しく、これもご指導のお蔭と感謝申しあげます。
御礼 (佃 康水)
2011-04-25 19:30:36
正子先生
「満天星」の句を添削の上、24日の秀句にお選び頂き、嬉しい句評を賜り誠に有り難うございます。基本的な季語を間違ってしまい大反省をして居ます。満天星を長い生垣にされて居るお家の傍を夜歩いて居て、其処だけがほつほつ白く光っていました。ふと空を仰ぐと星が見えましたのでそのまま詠んでしまいました。以後気を付けて参ります。
お礼 (川名ますみ)
2011-04-25 23:11:46
正子先生、「くっきりと雲より白き花水木」に秀句の選とご講評を賜りまして、ありがとうございます。4月22日のお昼前、雲に覆われながらも日差しの明るい、めずらしい天気の下で、今年初めての花水木に出会いました。感じた言葉をそのまま書き記し、特に推敲もせず投句いたしましたが、頂戴したコメントに勉強させて頂きました。感謝申し上げます。