物語エトセトラ

気分は小説家?時に面白く、時に真面目に、物語を紡ぎ出す

ゆうきのサバイバル日記(7)

2006-11-26 | Weblog
       地雷の海を泳いで
 早実の斉藤が進学すると発表してから、すこしずつ落ち着いてきたと思ったら、今度は国体に出るというので、また女子どもが騒がしくなった。
 ハンカチ検査も相変わらず続いている。
 初めは面白がっていた奴も、たまに忘れてきて厳しくチェックされている。
 俺は2枚のハンカチをポケットに入れ、交代で見せているからずっとセーフだ。
 我ながら頭いいと思っていたが、今日 朝練が少し早めに終わって教室に戻ろうとしたら、階段の途中で保健委員の相良に会った。嫌なことは早く済ませようと、
 「ハンカチ持ってるしね」と、ポケットから出して見せた。
 「伊東君、待って」追い抜いて先へ行こうとする俺を、相良が呼び止める。
 「えっと、伊東君はいつも同じハンカチだよね」
 やばっ、気づかれたかな?
 「うーん、俺あんまし持ってないから・・・」苦しい言い訳をする。
 「あの、あのね・・・」相良は下を向いて困った様子だ。こいつは、クラスでもそれほどうるさい方じゃない。他の女子から何か言われたのかな?もう1枚ハンカチを用意しようかと思っていたら、
 「あの、私今度、斉藤君にハンカチをプレゼントしようか?」急に顔を上げて言うじゃないか!なんか顔が赤いような気もする・・・・
 えっつ!!えーっ?これって、これって もしかして・・?
 相良はおれを見たまま動かない。気のせいか、こっちまで顔が赤くなったような
熱くなったような・・・・
 「い、いや、・・・俺、ハンカチにはこだわりがあって・・・・、とにかくハンカチは今いらないから・・・・」
 泣きそうな顔になったように見えるのは、気のせいか?とにかく、俺はもつれる足で階段を上りトイレへ。
 恥ずかしくて逃げ出した訳ではないぞ、言っとくが。同じバスケの矢坂が、前から相良が2組じゃ一番かわいいとかなんとか、事あるごとに言ってるんだ。おまけに夏休みが終わった頃から、「矢坂は相良にマジ」と、バスケ仲間にからかわれても反論しないし、「伊東は2組でいいよな」などとため息交じりで俺に言うこともあるわけ。だから、この事態はまずいというか、ヤバイでしょ?
 「ゆうき?お前トイレで何やってんの?朝ぱらから?」
 俺が青春の悩みに浸ってると、呑気なマサヤの声。トイレの入り口に立ってこっちをニヤニヤしながら見てる。
 「ゆうき、大丈夫か?朝練始まってから、お前ボーっとしてるしさ。今までも変といえば変な奴ダケドサ」
 「あ?なんだと?」と、いつものようにじゃれあおうと思ったが、俺の手にはカバンが二つ。ま、トイレでただ突っ立ってる格好じゃないよな。これ以上変な注目を集めないよう俺はマサヤと並んで教室に向かった。
 今朝のことは、誰にも知られないようにしないとな。俺が相良のことが好きならともかく・・。アレ?そのほうが余計まずいのか?まあ確かにかわいい方ではある・・・・・様な気がした。
 楽しく平和に暮すには、ボーっとしてちゃダメなんだから。歴史や政経の時間にもっと身近な現実的なことを扱ってくれたら、勉強もやる気がでるんだけど・・・
 俺は席替えでいい席をゲットしたつもりだったが、今までは確かにいい席のはずだったんだが、俺がその席になってから、先生がやけに頻繁に俺の席の辺りを歩くようになって落ち着かない。集中できないというか・・・
 これ以上成績が下がったら大変なので、俺は真面目に授業を受けることにした。
 全教科真面目に受けていたら、身体がもたないので教科を選んでるけどね。
 だから、先生がやたら俺の席の周りを歩くと、緊張の波のリズムが狂うんだよね黒板の前にドンと落ち着いていてくれないとホント困るよ。

ゆうきのサバイバル日記(7)

2006-11-22 | Weblog
 明日から10月。この頃になると、どこの部も3年が引退している。
 俺たちバスケ部は、とうの昔に3年は引退してる。で、なんとなく1年だけでかたまって帰る事が多くなる。2年は最近、ハンドボール部の2年とゴールの傍でたむろすることが多い。
 俺たちは相変わらず近くのコンビニで、しばし休憩してから解散するのが日課だったが、2週間前からハンドボールの女子(2年がほとんど)が来るようになったのだ。俺たちがコンビニの駐車場のいつもの場所で休んでいても、遠慮なくやって来て座り込んだり、でかい声で話したりするんだ。その内容だって、時には聞いてる方が恥ずかしいくらい・・・。同じ学校なのが恥ずかしいよ。
 それで俺たち1年は、後片付けを丁寧にし、着替えもゆっくりしてコンビニへ向かうようになった。時間が遅くなった分、バスで帰る奴はあまりゆっくりしてられない。けれど、その分は着替えの時にしゃべっているから、まあいいだろう。
 帰りが遅くなると、腹が減ってイヤだけど、たまに他の学校へ行った奴と一緒になることもあって、いろいろ話しながら帰る。
 ところが、携帯にメールが入るんだよ、母親から。遅いってね。
 俺は、今いる場所と時刻と家までかかる時間を素早く計算して、
 「今 000にいるから」とメールを返す。我ながら結構頭いいんじゃない!って思うよ。余計な詮索されないように、家に着く時間は自分で決めているけどね。
 監督が何を思ったのか、10月からずっと朝練をすると言い出した。今までも朝練はあったが、だいたい2週間だったのに、「ずっと」というのが微妙に恐い。
 朝練があると、6時半には起きないといけない。
 そのためには、11時半には寝ないとだめだから、ゆっくりテレビも見てられない。寝坊の母親に、弁当を作ってもらわないといけないから、俺は夕飯の時と寝る前にしっかり念を押す。
 「12時前に寝る高校生なんて、聞いたことないわ」と、言われても無視。
 「何も考えずに、ただ眠るだけで、無駄に育ってない?」と、言われても相手にしない。俺って、大人だろ?

ゆうきのサバイバル日記(7)

2006-11-15 | Weblog
 今日席替えがあった。今回は、くじ引きで席を決め後は個人交渉するというやり方になった。
 俺はあまり籤運がいい方ではない。だから、後の交渉に賭けるしかない。
 しかし、自分の引いた席が悪すぎると、交渉のしようがない。せめて最前列だけは避けたい。
 俺が引いたのは、真ん中の前から3番目だった。これは悪い。俺はほぼ交換は諦めて、周りにいい奴がくることを祈っていた。
 ところが、いざ移動してみると俺の隣はどっちも女子じゃないか!それもうるさいベスト5に入る奴だ。最悪だ!
 「伊東君、そこ換わってくれる?」森崎が言った。
 「エー?!お前の席は?」
 森崎は籤を見せた。番号31。ヒョエー!それは廊下側の一番後ろじゃないか!
 そんな良い席を引いといてバカじゃないの?と思ったけどそんなこと口にするわけにいかない。 
 「俺はいいよ、換わっても」おもむろに言ってやった。
 「サンキュー、決まりね」
 31番の席に行ってみると、隣はサッカー、前は野球やってる仲のいい奴だ。ラッキーだね。
 休み時間になって、1組からマサヤがのぞきに来た。1組も席替えがあって、マサヤは廊下側から2列目・うしろから3番目で、俺たちのクラスをのぞきに来易くなったと報告しに来たんだ。それに加えて、俺が出入り口のすぐそばになったから休み時間になったらすぐに会えるなと、盛り上がった。
 5限は古典だった。ただでさえ眠いのに、古文だぜ。英語より訳分かんないってやつだ。この時間は勉強というより、眠気との戦いだ。精神力を鍛える時間だ。
 45分も闘っていると、部活に差し支えるので俺はたいてい20分間だけ闘うことにしている。あとの時間は、まあ無理せず自然にまかせるってことで・・・
 授業が終わったら、先生がいったん廊下に出て、窓から俺と野球部の坂本に
 「お前たち、いい席になったな。6限は1組で俺の授業だ。今と同じ内容をやるから、しっかり聞いとけよ。」と言って、階段へ。
 「伊東よ。お前もうちょっと、遠慮して寝ろよな。お前が目立つと、俺まで寝てるのが分かっちまうだろう」と坂本。
 俺のせいか?しかし、坂本の奴が眠っていたのも全然気づかなかったくらい熟睡してたのはちょっとヤバイな。せっかく良い席になったんだから、うまく使わないと。とりあえず、1ヶ月半はクラスでの席はベストポジションを確保できたわけだ

ゆうきのサバイバル日記(6)

2006-11-10 | Weblog
        ベストポジション
 学校ではもう来年のクラス分けのために理系・文系の希望調査をして、選択科目も含めてコースを決定してしまう。学年全体の説明会のほかに、クラスでも何回か説明のために時間がもたれる。
 なんかよく分からないが、要するに理科を1つ選ぶか2つ選ぶか(逆にいえば社会を1つ選ぶか2つ選ぶか)ということだろう。よく考えろと言われてもな・・・
 友達も、何をどう考えていいか分からない様で
 「俺、数学分からンし文型にしようかな・・」
 「理科より社会の方が点とれそうだけど・・」
 「理系でも国語あるンかよ?」
と、初日は決まらなかったが、2日もするとだいたい決まってきた。
 2つのうちどっちかを選ぶしかないんだから、迷ってみてもしれてるからな。
 俺は理系にしようと思っている。希望に「理系」と出しても、先生からクレームがつかないから決まりかな?
 で もって、今日は正式文書として保護者の承諾書をもらってくるようにプリントが渡された。
 「俺、理系にしようと思ってるけどいいよね?」
 「ンー・・・困るわねえ。文型を選ぶには国語・社会が悪すぎるし、理系にするには理科が絶望的だし、中間てわけにいかないものかしらね?」
 「そんなもんあるわけないだろ」
 「オイ勇気、特別に3・5組を作ってもらえよ」
 「あー、それいい!会議室かなんか使ってもらえば!勇気の友達も何人か同じクラスになるでしょ?」
 「なにバカなことゆうとるんじゃ。とにかく社会2科目も無理だから、理系でいいよね?」
 「どっちか選ぶしかないんだから、自分がいいと思うようにするしかないけど、理系に進んでその後どうするかも考えないとね」
 「お母さん、明日のことも満足に考えられないのに、勇気に何年も先のこと考えろって絶対無理だって」
 「ウーン、それもそうか」
 オイオイ、それが愛する息子に言うことかよ?
 次の朝、父親にも了解を得てから判子を押すことになったが・・・
 「そりゃ理系に進むしかないだろうな。中間はないんだから。国語があの点数じゃ、文型に行きたいと言ったら先生も困るだろうしな」
 って、いい加減じゃないか?先生が真剣に考えるように言ってたのを聞かせたいぜ、まったく。
 しかし、成績が良くない事で俺の立場が軽くみなされるのは、まずい。
 兄妹が3人いて、親があまり記憶力がよくなかったりすると、自分の存在をしっかりアピールしないと(それも いいように!)、何かと困ることになるんだ。
 例えば、毎日の食事だ。俺の好きなものを作ってもらえない。おやつもそうだ。
 これは毎日のことだからきつい。ひどいときは、1週間に4回も魚が出たことがあった。部活で疲れてやっと帰ってきたのに、玄関に入ったとたんに魚の臭いがしてたら、疲れが倍になるってもんだろ?
 バスケと一緒で、兄妹のなかで、親の心(頭かな?)のなかで、ベストポジションをとることが大事なんだ。
 今日から少し気をつけて、いい印象を与えとかないとまずいみたいだ。しょうがない。今日は面白いテレビもないし、帰ったら部屋でも片付けるかな。今朝チラッと見たアニキの部屋は、ちらかっていたからそれくらいでいいと思うんだけどな。
 

ゆうきのサバイバル日記(5)

2006-11-04 | Weblog
 俺の憂鬱は深まるばかり。
 まず、塾通いが始まった。家から自転車で15分位の所なんだけど、部活で消耗している俺は車で送り迎いをしてもらう。これは楽でいいんだけど、サボれないという弱点がある。まあ今のところ、知った奴はクラスにいないので終わった後しゃべったり、どこかで息抜きすることもないからいいけどね。
 俺も初めて知ったけど、教室のない日も自習室といっていつでも使える部屋が、どこの塾にもあるんだ。サービスしすぎじゃない?これを利用する奴がいるんだから、困ったもんだ。よっぽど暇なんだな。俺のような普通の高校生にとっては、母親から行け・行けといわれ、ホント ご迷惑な話さ!
 学校の方も相変わらず。ハンカチ調べは毎日されるし、俺は持って行っても使わないからポケットにいれっぱなしにしておけばいいから、楽だと思っていたら「不潔!」とか言われて、とりあえず2枚用意して両方のポケットに入れておき、交互に見せている。
 ただ、手洗い場で女子と一緒にならないように気を使わなきゃいけないのが面倒だ。一緒になると、俺が手を洗いハンカチを使うまで見てるんだぜ。無視して行こうとすると、「伊東君!ハンカチ!」とばかでかい声で叫ぶし、使えば折りたたんだまま使えとくる。文句を言おうにも、すぐに味方を呼んで変に注目を集めるし、やってられないよ。
 ちょっと俺のクラスの女子はおかしいぜ。うるさいし、命令口調だし、偉そうだし。
 それなのに、何人かは男子に結構人気があるらしい。5組のショウゴなんかは、俺がうらやましいとまで言う。うるささでは1,2を争う何とかって奴が好みだとまで言う。どんな趣味してるんだ?俺がそう言うと、みんなに「お前の方が可笑しい」といわれてしまった。変な好みの奴って結構いるんだなと、感心したよ。
 俺だって気になる女子はいるよ。クラスのうるさい奴らとは比べ物にならないぜ
 まあ、「まとも」というかそれ以上だな。
 ただ 名前はまだ分からないんだ。時々学校の中で見かけるんだけど。2年だってことしか分からないんだ。なんていうか、ちょっと見ただけで他とは全然違うんだよね。
 もう一人は、これまた時々登校の途中で見掛けるんだけど、まあとにかく いい感じなんだよ。だけど、制服を見ると俺の学校より上のランクだから、ちょっと声をかけずらい気がする。でも、会えた朝は、ラッキーって感じだ。
 好きな相手には、会えない日の方が多いのに、嫌な奴らとは毎日朝から6限までほとんど一緒。しかも、友達にそいつ等の悪口もおちおち言えないなんて、ストレスたまるぜ、まったく。