*** june typhoon tokyo ***

久保田利伸@豊洲PIT


 ※ 一部ネタバレを含みますので、各自了承の上閲覧ください。

 濃密なファンキーグルーヴに沸いたTK流のおもてなし。

 デビュー30周年を迎え、もう一度原点に立ち返り、脚色や作り物もない場所、活動当初の気持ちや感覚で“パーティピープル”とライヴを楽しみたいとの思いから企画された久保田利伸のライヴハウスツアー〈3周まわって素でLive!~THE HOUSE PARTY!~〉。6月13日からの東京・豊洲PIT公演の4日目、東京ファイナルを観賞。残念ながら、最後列の1列前、PAよりも後ろというこのフロアとしては決して良い座席ではなかったが、代々木第一競技場などのフラットなフロアとは異なり中列、後列にはそれぞれ段差が設けられてあるので、思ったほど遠く感じることはなかった。解釈によっては、パーティピープルの多くの手が高く突き上げられ、左右に揺れる光景を通してステージを見られるという俯瞰図は、この席ならではの体感といえる。

 “3周まわって”というのは10年を一区切りとすると3周、“素で”というのは原点に立ち戻った気持ちでという意味とのこと。エンターテインメント性や豪華な脚色などに頼らず、単純に歌と音で創り出すグルーヴをファンと共に酔いしれたいということなのだろう。
 とはいえ、集ったメンバーは、通常のアリーナツアーなどと変わらない辣腕揃い。それぞれがファンキーな音のうねりを発する術を知り尽くしている久保田が信頼を置く面子だ。盟友・柿崎洋一郎とGakushiがダブルでトークボックスを繰り出したり、アンコール冒頭でスティックを折り飛ばしながらも熱のこもったドラミングを披露したFUYU、ブラック・ミュージック/ヒップホップ・ラヴァーのツボを的確に刺激するDJ大自然のDJプレイなど、個々においても見どころ聴きどころが満載。
 そして、今回もバックヴォーカル陣のハーモニーは圧巻。もはやバックグラウンドヴォーカルと呼ぶのが気が引けるほどの声量・声圧で久保田のヴォーカルに絢爛で緻密な装飾を施していた。久保田が紅白出場時(ニューヨークからの中継で出演)にアリソン・ウィリアムスとのデュエットで披露した「FOREVER YOURS」を見て、それから何度も歌っていたというYuriが本家・久保田とのデュエットで兄と妹(?)のような絶妙のパートナーぶりで息を呑むようなバラードを聴かせると、久保田がステージアウトしている間にタイ・スティーヴンスがアース・ウィンド&ファイア「ゲットアウェイ」を、ニッキー・J.がリオン・ウェアが手掛けた「アイ・ワナ・ビー・ホエア・ユー・アー(ボクはキミのマスコット)」を熱唱。久保田本人が不在でもそれまでのグルーヴが途切れることなく続く熱いステージは、ファンに認められた彼らの力量あってのものだ。冒頭や曲の締めなどで挿し込まれるライヴではお馴染みのフレーズ「TK PARTY'S ANTHEM」(個人的に勝手に付けた呼称で、正確なタイトルは不明)だけでもそのクオリティの高さが窺い知れる。



 曲構成は新旧取り混ぜ、ツアータイトルにもある“THE HOUSE PARTY!”に相応しく、身体を揺らせるフロアキラー仕様にアレンジ。前半での「誓い」は「雨音」で使っているレゲエ調バックビートを敷いた曲風で繰り出したのをはじめ、後半で披露したゴーゴー・ビートに乗せたオールドスクールメドレーでは、メロウな「Candy Rain」までもがノリのいいビートで弾むといった“自由に身体を揺らし純粋に歌を楽しむ”スタイルに。かと思えば、前述の「FOREVER YOURS」や本編ラスト前にタイ・スティーヴンスとスウィート&メロウな空間を創り出した坂本九の名曲カヴァー「SUKIYAKI~Ue wo muite arukou~」などオーディエンスの肌身にじんわりと沁み込んでいくような“バラディアー”ぶりも発揮したりと、フロアの心を確実にキャッチする手合いは、さすがのヴェテランの業といったところか。



 アンコールでは、普段のライヴでも披露しているスティーヴィー・ワンダー「アナザー・スター」のアレンジを敷いた「You were mine」を。ただ、今回は「アナザー・スター」をフルで歌った後に「You were mine」へ。「アナザー・スター」を意識して制作したという同曲の“種明かし”を説くような展開は、久保田のブラック・ミュージックを愛してやまない心とそれを十二分に理解し共感してきたファンと長年築いてきたからこそのパフォーマンスだったようにも感じた。久保田以上に長く活動するアーティストは少なくないが、こういった相互理解がステージとフロアのコール&レスポンスだけでなく、あらゆるところでなされてきたアーティストはそう多くはないはず。「僕のファン、パーティピープルは世界一です。世界中で自慢します」という久保田の言葉は、それを裏付けるのに充分なヴァイブスがファンと築かれていることの証だろう。

 ラストは「これで終わっちゃもったいない」とDJ大自然に促して始まった「Cymbals」。アウトロではバンドの音をミュートしての久保田のファルセット・ヴォーカルで締め。芳醇なスイーツとでも言えそうな五感に贅沢なパフォーマンスに、オーディエンスが一斉に耳目を傾けていた。心地良い陶酔感に、余韻に浸りながら、微笑ましくフロアを後にするオーディエンスの姿が印象的だった。



 余談だが、ショウの途中のMCで、当ライヴツアーをスポンサーしている日本ハム「チキチキボーン」「石窯工房」の協賛キャンペーンクイズの解答を発表する場面が(久保田はアナウンサー風な声色でトーク)。そのクイズ第1弾は「久保田利伸が夜にビールとチキチキボーンを食べながら聴いてほしい久保田自身の1曲」をハッシュタグ付きツイート(#久保田利伸&チキチキボーン)で応募するというもの。自ら発表した答えは「Candy Rain」とのこと。その理由は「Candy Rain」の冒頭から30秒くらい聴けば分かるはずとのことで、DJ大自然にビートを強調したCDトラックの音を出させると、聴こえてきたのは“チキ・チキ・ボーン”と繰り返すビート(笑)。これにフロアから一斉に納得と笑い声が響いた。ちなみに、事前にスタッフに6回聴かせても誰一人分からなかったとのこと。ゆえに「僕のファンは世界一のファンキーピープル、パーティピープル」というオチもつけていた。

◇◇◇

<SET LIST>
00 INTRODUCTION(including of DJ Play)~TK PARTY'S ANTHEM
01 Shake It Paradise
02 Funk It Up
03 誓い(including phrase of“雨音”)
04 FOREVER YOURS(duet with YURI)
05 Tomorrow Waltz
06 Upside Down
07 Free Style
08 Getaway(main vocal by Ty Stephens)(Original by Earth,Wind & Fire)
09 I Wanna Be Where You Are(main vocal by Nikki J.)(Original singin' by Michael Jackson/The Jakson 5)
10 LA・LA・LA LOVE SONG
11 SOUL BANGIN'(B.LEAGUE EARLY CUP Version)
12 Bring me up!
13 Shadows Of Your Love
14 Medley(Go Go beat & Old Skool arrange)
  To The Party
  Dance If You Want It
  Candy Rain
  北風と太陽
  GIVE YOUR MY LOVE
  Keep On JAMMIN'
  TK PARTY'S ANTHEM
15 SUKIYAKI~Ue wo muite arukou~(duet with Ty Stephens)
16 LOVE RAIN~恋の雨~
≪ENCORE≫
17 TK PARTY'S ANTHEM
  ~Another Star(Original by Stevie Wonder)
  ~You were mine
18 Cymbals

<MEMBER>
久保田利伸/Toshinobu Kubota(vo)

大西雄介/Yusuke Onishi(g)
森多聞/Tamon Mori(b)
FUYU(ds)
柿崎洋一郎/Yoichiro Kakizaki(key)
学史(藤川学史)/Gakushi(key)
DJ大自然/Dj Daishizen(Turntable/DJ)

Yuri(神野ゆり)(background vo)
タイ・スティーヴンス/Ty Stephens(background vo)
ニッキー・J./Nikki J.(background vo)

◇◇◇

【久保田利伸のライヴ観賞記事】
・2006/07/30 久保田利伸@代々木第一
・2010/06/26 久保田利伸@NHKホール
・2010/07/28 久保田利伸@東京国際フォーラム
・2010/07/29 久保田利伸@東京国際フォーラム(2)
・2011/11/17 久保田利伸@NHKホール(1)
・2011/11/18 久保田利伸@NHKホール
・2012/01/22 久保田利伸@代々木第一
・2013/10/31 久保田利伸@東京国際フォーラム
・2015/05/24 久保田利伸@NHKホール
・2015/10/03 久保田利伸@代々木第一

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