陰を見ようと思うのなら、ほれ、光が差さんことには始まらんじゃろう。光であろうと思うのなら、陰も知らぬとは言わせまい。
金の臭いがせぬ世をお探しのようである。アナーキーというのかしら。もううんと疲れたのよ。これまでたくさんの本を読んだわ、小説だって、詩だって、うんと難しい本だってね。でもそこにはヒントが散在しているだけで、そのヒントだけを集めたってギリシアのお城は造れないのよ。この建物の柱はすべて矛盾しているのだもの。世の中ってそうよね、いつもあれだ、これだって言い聞かせながら生きているのに、時間が経てばそうじゃないことばかりなんだもの。嫌になるわ。おじさんがいつも言ってた、世の中甘くないんだぞって、いつも鋭い目で私の目の中を押し潰したわ。でもね、そのおじさんがいう世の中ってのも変なものよ。自分のことばかりで、表には綺麗に見えても、その過程は黒々としている。ダイヤモンドやチョコレートを、アフリカの誰かが苦労して運び出すようなものよ、誰も知らない気苦労や悲哀の彼方に、ちっぽけな世界の幸せがコロリと落ちて来るようで、私はその幸せが幸せに感じられないのよ。金の臭い、恩着せがましさ、世代という名の圧力と鉄柵。
私にはね、もう我慢ならないのよ。確かに世の中って厳しいと思うわ。それに他人と生きることって本当に厄介で難しいとも思うわ。でもそんなことじゃないのよ。世の中厳しいって、それはあなたの世の中でしょう。今の時代のどこをどう見たって、良い時代じゃない。虚しさが漂って、息苦しくて、八方塞がりで、それなのに平気な顔をしているのは老人達だけ。しかも極めつけに老人達が憂国の念や若者批判することったらもう我慢ならないのよ。あなたたちが造ってきた世の中でしょう!あなたたちが造ってきた若者でしょう!悪いのは、あなただ。それなのに私がその世の中から違うことをしようとしたら、なぜあなたちの目はそんなに冷たくなるのだろう。分かってるわ、自分が否定された気になるからなのよね。それでも私は否定する。こんな世の中間違ってる。私は追従者じゃない、開拓者なのよ。昔から危機の時代にはいつだって真実が語られてきたわ。もう不誠実な世を望んでいないのよ。私の目の前に、随分と前から蜘蛛の糸が垂れ下がっているの。私の使用人はいつだって
その糸を不潔なものだからと言って伯耆で払っていたけれど、それは私がそちらへ昇ることを許したくないからなのだ。私はこの糸を掴む。もういい加減になさって。御自分の間違いを認めてくださらない?本当はここまで言いたくなかったのよ、御自身で気付いてほしかったの。でも一向に気づかないようだからこれを最後の言葉にして、私はこの糸を登っていくわ。さようなら。私はこの糸をそのままにしておくわ。この糸はいい?心で見ないと見えないのよ。
金の臭いがせぬ世をお探しのようである。アナーキーというのかしら。もううんと疲れたのよ。これまでたくさんの本を読んだわ、小説だって、詩だって、うんと難しい本だってね。でもそこにはヒントが散在しているだけで、そのヒントだけを集めたってギリシアのお城は造れないのよ。この建物の柱はすべて矛盾しているのだもの。世の中ってそうよね、いつもあれだ、これだって言い聞かせながら生きているのに、時間が経てばそうじゃないことばかりなんだもの。嫌になるわ。おじさんがいつも言ってた、世の中甘くないんだぞって、いつも鋭い目で私の目の中を押し潰したわ。でもね、そのおじさんがいう世の中ってのも変なものよ。自分のことばかりで、表には綺麗に見えても、その過程は黒々としている。ダイヤモンドやチョコレートを、アフリカの誰かが苦労して運び出すようなものよ、誰も知らない気苦労や悲哀の彼方に、ちっぽけな世界の幸せがコロリと落ちて来るようで、私はその幸せが幸せに感じられないのよ。金の臭い、恩着せがましさ、世代という名の圧力と鉄柵。
私にはね、もう我慢ならないのよ。確かに世の中って厳しいと思うわ。それに他人と生きることって本当に厄介で難しいとも思うわ。でもそんなことじゃないのよ。世の中厳しいって、それはあなたの世の中でしょう。今の時代のどこをどう見たって、良い時代じゃない。虚しさが漂って、息苦しくて、八方塞がりで、それなのに平気な顔をしているのは老人達だけ。しかも極めつけに老人達が憂国の念や若者批判することったらもう我慢ならないのよ。あなたたちが造ってきた世の中でしょう!あなたたちが造ってきた若者でしょう!悪いのは、あなただ。それなのに私がその世の中から違うことをしようとしたら、なぜあなたちの目はそんなに冷たくなるのだろう。分かってるわ、自分が否定された気になるからなのよね。それでも私は否定する。こんな世の中間違ってる。私は追従者じゃない、開拓者なのよ。昔から危機の時代にはいつだって真実が語られてきたわ。もう不誠実な世を望んでいないのよ。私の目の前に、随分と前から蜘蛛の糸が垂れ下がっているの。私の使用人はいつだって
その糸を不潔なものだからと言って伯耆で払っていたけれど、それは私がそちらへ昇ることを許したくないからなのだ。私はこの糸を掴む。もういい加減になさって。御自分の間違いを認めてくださらない?本当はここまで言いたくなかったのよ、御自身で気付いてほしかったの。でも一向に気づかないようだからこれを最後の言葉にして、私はこの糸を登っていくわ。さようなら。私はこの糸をそのままにしておくわ。この糸はいい?心で見ないと見えないのよ。