FTA出遅れの日本、CPTPPで一気に「優等生」
2018/03/23 21:01 朝鮮日報
日本がカナダ、オーストラリア、ベトナムなどアジア太平洋11カ国が参加する「包括的および先進的環太平洋連携協定(CPTPP)」
の締結を主導し、自由貿易協定(FTA)の「劣等生」から一気に「優等生」へと浮上した。CPTPPは多くの国が同時に参加するため、
「メガFTA」とも呼ばれる。
日本はこれまで韓国がFTAを締結済みの米国、中国とはFTAを結んでいない。しかし、今回のCPTPP締結で韓国に追い付き、
アジア太平洋地域でFTAの中心国に浮上する。
日本、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、ニュージーランド、オーストラリア、ブルネイ、ベトナム、シンガポール、マレーシアの
11カ国は8日、チリでCPTPPに署名した。CPTPPは昨年1月に米国の脱退で破棄の危機に直面した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)
を日本が復活させ、名称を変更したものだ。トランプ米大統領も先ごろ「参加国がはるかに良い取引を提案するならアメリカが
(TPPに)戻る可能性はある」と述べ、再加入の可能性を示唆している。
一方、韓国は2013年初めに関心は示したものの、検討に終始した。韓国政府は今月8日、通商推進委員会の実務会合を開き、
「加入の是非を年内に決定する」として、結論を再び先送りした。
■FTA出遅れの日本、一気に「優等生」に
当初TPPは米国が主導し、2015年10月に12カ国で大筋合意した。世界の国内総生産(GDP)の37.4%、貿易量の25.7%を占める
世界最大の経済圏が誕生すると期待された。しかし、トランプ政権が昨年1月、突然脱退を表明したことから、破棄の危機に立たされた。
日本の安倍晋三首相は米国が抜けたTPPを復活させることに全力を挙げた。合意に向け、コメ市場開放も認めた。TPPの重要条項を
維持したまま、米国を除く11カ国での再合意に成功したのだ。
CPTPPは早ければ来年にも発効する。加盟各国のGDPは世界の12.9%、貿易規模は14.9%だ。域内人口は5億人であり、約10兆ドルの関税障壁撤廃効果が期待される。
■通商戦争の犠牲回避には加入必要
韓国はTPPへの対応で右往左往してきた。13年11月、対外経済長官会議の議決を受け、正式に関心を表明したが、他国は速やかな
合意に集中するため、追加加入を認めなかった。15年に朴槿恵(パク・クンヘ)前大統領が訪米し、「韓国がTPPに加入すれば、
両国の企業にさらに多くの利益をもたらす」と主張したが、またも「関心表明」のレベルにとどまった。
韓国産業通商資源部(省に相当)は今回も「今後CPTPP発効に関連する動向を細かく点検し、通商手続き法に基づき、国益を
最大化する方向で加入の是非を年内に決定する計画だ」と表明した。同部関係者は「韓国はCPTPP加盟11カ国のうち、日本と
メキシコを除く9カ国と既に二国間FTAを結んでおり、関税がかなり撤廃されているため、CPTPPが発効しても韓国経済へのマイナス
影響は小さい」と評価した。
しかし、通商専門家は世界的に保護貿易主義の波が高まる中、CPTPP加入を目指すべきだと助言する。西江大国際大学院の許允
(ホ・ユン)教授は「保護貿易主義の障壁が高まり、力の論理に左右される二国間交渉よりも多国間交渉体制で他国と強力する
必要性がますます高まっている。米国も復帰する可能性が高く、韓国もCPTPP加入を推進すべきだ」と指摘した。
梨花女子大法学専門大学院の崔源穆(チェ・ウォンモク)教授は「新保護主義がかなりの期間続くとみられ、米中間での貿易報復の
時代が到来する。メガFTAに属していなければ、通商圧力に対応するのは容易ではない」と懸念を示した。
CPTPP=Comprehensive and Progressive Trans-Pacific Partnership
加盟11カ国が9日、新協定「TPP11」に署名。孤立主義、米の焦燥 TPPに求心力/報復招く輸入制限 / 5億人市場、99%関税撤廃
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参考
トルドー首相、ダボス会議でCPTPP交渉の妥結を表明。安倍首相に謝意-カナダ国内産業界の評価は分かれる-
2018年01月25日 JETRO
CPTPPはカナダにとって「妥当なもの」
東京都内で開催された米国を除く環太平洋パートナーシップ(TPP)参加11カ国の首席交渉官会合が1月23日に閉幕した。
3月8日にチリのサンティアゴでCPTPPの署名式を開くことで合意したことを受け、トルドー首相は1月23日、世界経済フォーラム
年次総会(ダボス会議)の特別講演の冒頭、CPTPPについて言及した。同首相は「本日、カナダとTPP参加10カ国は東京で
CPTPPの交渉が妥結したことを喜んで発表したい」と発言し、本協定が持続的成長や繁栄、そして給料の良い中間層の職の
創出という目的に合致する「妥当なもの」と述べた。
さらに同首相は、貿易は中産階級の強化に役立つが、それを機能させるためには貿易の利益が全市民で共有される必要があるとして、
「CPTPPはその道への新たな一歩になる」と協定に合意した意義を強調した。
また同首相は、TPP11カ国による交渉が良い結果をもたらしたのは最近の会合を主導した安倍晋三首相の指導力によるものと評価し、
安倍首相に謝意を表明した。
トルドー政権でTPP交渉を担当しているシャンパーニュ国際貿易相も談話を発表し、文化の保護において著しい成果や、
日本との自動車分野の取り決めの改善、カナダの利害関係者の多くが懸念を表明していた知的財産条項の凍結などの成果が
確認できたことを喜んでいると述べた。
経済団体は交渉妥結を評価
カナダ政府の発表やメディアによる報道を受けて、カナダビジネス協議会(BCC)の会長を務めるジョン・マンリー元首相は
「カナダは世界で最も急速に成長している地域との貿易関係強化に向けた大きな一歩を踏み出した」と述べ、
トルドー首相をはじめ、シャンパーニュ国際貿易相やグローバル連携省の交渉チームの成果をたたえた。
カナダ商工会議所も、カナダがCPTPPへの継続的参加を確実にする合意に達したという報道を歓迎した。同商工会議所のペリン・
ビーティ会長兼CEOは「現時点では、カナダの自動車分野を含む、合意内容の詳細を待っている」と前置きした上で、
「11カ国が貿易障壁の除去を約束したことは、世界貿易の将来への強力かつ肯定的なメッセージを提供することになる」と評価した。
一方、野党・新民主党のトレーシー・ラムジー下院議員(オンタリオ州)は「自由党政権は通商協定の透明性を約束したにもかかわらず、
カナダ国民に対し、あいまいな情報や混乱したメッセージを与え続けている」と、トルドー政権の対応を批判した。
また、ラムジー議員は、連邦議会下院の国際貿易委員会(CIIT)が6万人以上から受領したTPPに関する意見書のうち、TPP反対の意見が95%を占め、
グローバル連携省に提出された1万8,000人の意見書のうち、TPP賛成は2人しかいなかったことを明らかにした。
農畜産団体も交渉妥結を歓迎
カナダの農業団体や牛肉・豚肉の生産団体は、CPTPPの発効により、オーストラリアの農畜産業者が日豪経済連携協定(EPA)で
享受している特恵関税と同等の条件で対日輸出ができるようになるため、今回の交渉妥結を歓迎した。
カナダ畜牛協会(CCA)のダン・ダーリング会長は、カナダがCPTPPに参加することにより、カナダの牛肉生産者は日本や
アジア太平洋地域の活力ある市場に競争力のある市場アクセスが提供されることになり、「カナダの牛肉業界全体にとって極めて
積極的な進展」とシャンパーニュ国際貿易相やローレンス・マコーレー農業農産食品相の努力と指導力に感謝の意を表した。
CCAの声明によると、2016年の日本の牛肉輸入額は38億ドルで、うちカナダからの輸入額は、オーストラリア(18億ドル)、
米国(16億ドル)、ニュージーランド(1億6,300万ドル)に次ぐ1億1,500万ドルにとどまり、オーストラリア以外の国は
38.5%の関税を支払っているという。しかし、CPTPPが発効されると、カナダ産の牛肉はオーストラリア産と同じ関税率で日本に
輸入され、さらに、日本政府が2017年8月から実施している冷凍牛肉の緊急輸入制限措置に関し、自由貿易協定(FTA)締結国は
対象外になるとして、CCAは協定発効のメリットを強調した。
カナダ豚肉協議会(CPC)のリック・バーグマン会長は「100カ国以上に輸出しているカナダの豚肉生産者にとって、CPTPPは極めて
重要で、最新の通商協定によって主要市場へのアクセスが改善されることにより、豚肉業界で働く数千人もの生活が支えられる
ことになる」と述べ、協定の合意を歓迎した。
酪農団体や自動車産業はCPTPPに反対を表明
一方、カナダの酪農団体や自動車産業は、CPTPP締結国の競争相手に大幅な譲歩をすることにより、カナダ国民の雇用を犠牲に
するとして、協定に反対を表明した。カナダ酪農家協会(DFC)のピエール・ランプロン会長は、米国がTPPから離脱した後も、
カナダ政府がTPP交渉で合意した国内市場の3.25%に相当する乳製品の輸入枠が残っているとして、カナダ政府の決定に疑問を
呈した。
カナダ自動車部品製造業協会(APMA)のフラビオ・ボルペ会長は「フィナンシャル・ポスト」紙(1月23日)のインタビューで、
米国が北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉において原産地比率を引き上げて中国製部品を北米から締め出そうとしている中、
TPPでは原産地比率を引き下げて中国のようなTPP非参加国の部品の市場参入を促進しており、NAFTA再交渉の第6回会合が始まる
「最も重要な時期に愚かな行動を取った」と、カナダ政府を痛烈に批判した。カナダ自動車工業会(CVMA)のマーク・ナンテ会長も
「カナダでの雇用や生産の維持のために数百万カナダ・ドルを投資した自動車企業にとって不利になる一方、TPP締結国には
競争優位性を与えている」と指摘し、「今回の合意により、TPP市場へのアクセスが大幅には改善されていない」と懸念を
表明した(「フィナンシャル・ポスト」紙1月23日)。
CPTPPと台湾
2018年3月19日16:17 台湾経済ニュース
米国が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を離脱した後、参加11カ国は、日本の主導によって、一部論争のある条文を凍結した
上で11カ国での発効を目指すことでスピード合意し、今月8日、チリで正式署名を行った。
その際、協定の名称は「包括的および先進的環太平洋連携協定(CPTPP)」に変更された。
TPPは当初、2005年にブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポールの4カ国の交渉によって発足した環太平洋パートナー
シップ協定で、最初は貿易圏としての規模は大きくなかったが、米国と日本が加盟交渉に加わって以降は急速に重要性が増した。
だが、国によって産業の発展状況が異なること、米国の要求に応じて多くの条文(例えば知的財産権に対する保護強化など)が
草案に組み入れられたことにより、加盟交渉国の多くがTPPによって国内の産業発展に困難が生じることを懸念、先進国と
発展途上国との間での論争に発展していた。このため、米国が交渉から離脱したことで、論争の的となっていた条文が凍結され、
交渉は速やかに完了した。
加盟申請は正式発効後
台湾は政治的要因によって国際組織への参加が容易ではないが、CPTPPへは世界貿易機関(WTO)に加盟した際の方式に
のっとり、正式発効後の加盟申請を目指しており、TPP交渉の段階から発効後の早期加盟を念頭に国内法規を整備してきた。
CPTPPは参加国のうち6カ国または半数以上が通知に署名し、かつ国内の審議手続きが完了してから60日で発効とTPPよりも
発効条件が緩い。「国内総生産(GDP)の合計が全体の85%以上を占める6カ国以上の批准」というTPPでは課されていた
縛りもない。経済部はCPTPPが最速で2019年初めに発効すると予想し、現在、申請への準備を行っているところだ。
CPTPPの正式発効後、台湾に進出している日系企業は、台湾が将来CPTPPに加盟することによって日台双方の一部商品の関税が
撤廃される可能性があることを留意すべきである。