「イスラム国」「ISIS」「ISIL」 その違いは?
CNN) オバマ米大統領は2014年9月10日、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国(ISIS)」に対して空爆を行う方針を明らかにした。
この組織はもともと、2004年に故アブムサブ・ザルカウィ容疑者がイラクで立ち上げた国際テロ組織アルカイダの分派だった。
ザルカウィ容疑者は06年6月、米軍の攻撃で死亡。後継者となったアブアイユーブ・マスリ指導者はその数カ月後、
「イラクのイスラム国(ISI)」の創設を発表する。
ISIは13年4月、シリアのアルカイダ系武装組織である「ヌスラ戦線」を統合した。
ヌスラ戦線の指導者アブバクル・バグダディ容疑者は、組織は今 後「イラクとレバント(またはシャム)のイスラム国」と呼ばれるようにな
るだろうと発言。これが現在の、同組織の呼称を巡る混乱のもとになっている。
ISIL
オバマ米大統領や国連、一部の報道機関がこの組織を指すのに使っているのが「ISIL」だ。アラビア語名を訳した「イラクとレバントの
イスラム国(英語:Islamic State in Iraq and the Levant)」の頭文字をつなげたものだ。
CNNのエリーゼ・ラボット特派員の分析では、米政府がこの呼び方を使う理由は2つある。
まず、組織がイラクやシリア以外の国への拡大を視野に入れているとみられること。
また、米政府はカリフ制イスラム国家を設立するという組織の計画を認めない立場を取っている。
ただし、この訳が正確かどうかには議論がある。
レバント(地中海の東部沿岸地方)と訳されているのは「シャム」というアラビア語の言葉だが、コロン ビア大学のラシッド・カリディ教授
(シリア史)によれば、シャムはトルコからシリア、エジプト、パレスチナやヨルダン、レバノンを含むもっと広い地域を指 すという。
こちらは「イラクとシャムのイスラム国(英語:the Islamic State in Iraq and al-Sham。アラビア 語:Al-Dawla Al-Islamiya fi al-Iraq wa al-Sham)」の頭文字をつなげたもの。
「イシス」と読めるから英語と して語呂がいいと考える人もいるし、また偶然ではあるが、古代エジプトの女神の名前とも同じだ。
CNNでは「イラク・シリア・イスラム国」の略としてISISを採用している。
アラビア語でシャムは、レバント、シリア、大シリア、場合によってはダマスカスのいずれの意味にも取れるとされる。
イスラム国
組織側は自らのことを短く「イスラム国(英語:Islamic State。アラビア語:al-Dawla al-Islamiya)」と表現することが多い。
国境を越えたカリフ制国家を作りたいという彼らの意思を正確に表した言葉といえるだろう。
彼らがインターネットで公開した動画では、単に「国家(ダウラ)」と表現している。
DAIISH
欧米ではあまり知られていないが「DAIISH」という略称もある。
これはアラビア語の組織名(アラビア語でal-Dawla al-Islamiya fi Iraq wa al-Sham)をアルファベットで音写した際の頭文
字をつなげたもの。アラブ世界の報道機関や政治家は よく使う。
ただし、DAIISHには否定的なニュアンスがあるとカリディ教授は言う。「反対派の人々が使う呼び名だ」
組織側はこの呼称に異議を唱えているという。
2014.09.12CNNより