民主党の岡田克也代表、菅直人前代表ともに「天皇の生前退位」が招く危険性を熟慮すべきだ

2005年05月12日 15時13分19秒 | 政治
昭和天皇、時期見て退位すべきだった…岡田代表 (読売新聞) - goo ニュース

 朝日新聞の12日付朝刊、4面に「『天皇退位』で岡田氏『あってもよかった』という見出しの記事が掲載されている。民主党の岡田克也代表が、早稲田大学大学院で特別講義、学生の質問に「どこかの段階で、次に譲ることもあってよかったと思う」と答えたという。
 昭和天皇陛下の退位をめぐって、菅直人前代表が8日、フジテレビの報道番組で「退位した方がよかった」と語っている。岡田代表は「終戦直後は(混乱を裂けるため)退位すべきではなかった」と言い、菅前代表との間での考え方の違いを示している。
 しかし、岡田代表、菅前代表ともに、大きな誤解をしている。それは、日本が敗戦により無条件降伏を受諾して独立を失い、連合国軍最高司令部(GHQ)の占領下で、国家主権を喪失し、天皇陛下も「自由」を拘束されている状況のなかでは、「自由意思」を表明することすらできなかったということである。従って、「終戦直後は退位すべきではなかった」「退位した方がよかった」などと下らない意見を述べても無駄というものである。
 もう一つ、岡田代表も菅前代表も決定的なことを忘れている。それは、「明治典範」が「天皇の生前退位」を許していなかったということである。「天皇の生前退位」を認めると、政治の混乱を招く危険があるという深い配慮からである。
 日本史を紐解くまでもなく、様々な政治勢力や軍事勢力が、「天皇の利用」を画策して、むりやり天皇を退位に追い込んだり、ときには「暗殺」したりして、内乱を引き起こした例がある。「天皇の奪い合い」「新天皇の擁立」などが起きては困るのである。また、生前退位した場合、「後白河法皇」のような「院政」を招く危険もある。現在、NHKの大河ドラマ「義経」を見るがよい。「源平合戦」という内乱は、「後白河法皇」の陰謀によって惹起された面もある。700年も前の古い話と思って、侮ってはならない。明治維新前夜、孝明天皇が「暗殺」されたのではないかという話がある。討幕派による「宮廷内革命」(クーデタ)である。
 今後、日本国憲法が改正され、自衛隊が自衛軍なり、陸海空軍なりの「正規軍」に昇格されると、自信を持った「軍人」たちが、戦前のような「軍閥」として息を吹き返し、「軍事クーデタ」に打って出てくる危険が皆無とは言えない。今日のように、政治が甚だしく劣化し、自衛隊がいまだ市民の自衛隊に成りきっておらず、乖離が生じている現状を見れば、これは単なる杞憂ではないのだ。
 皇位の継承については、皇室典範(昭和二十二年法三号)に規定されている。宮沢俊義東大教授は、「日本国憲法」(コンメンタール1)のなかで、「天皇の生前退位」について、以下のように解説している。
 「皇位継承の原因は、天皇の崩御(死亡)だけで、天皇が生前に退位することは、許されない(皇室典範4条)。天皇の生前退位をみとめるべきや否やは、皇室典範制定の際、ことに貴族院で大いに争われたが、結局、明治典範の例にしたがい、これをみとめないことにしたのである」
 もちろん、皇室典範は、一つの法律であるから、今後、「女帝問題」を含めて、改正する場合には、「生前退位」についても、改正される余地はある。だが、「天皇」が政争の具にされたり、内乱を惹起する元凶にされたりしないよう十二分に検討する必要がある。いずれにしても、日本の「政治的安定」をしっかりさせておくことを大前提に、「天皇の地位」はどこまでも「堅固」にしておかなくてはならないのであり、民主党の岡田代表や菅前代表は、こうした点の思慮が甚だしく足りない。
 天皇制を嫌う共産党はどうしようのないけれど、大政党の党首らは、いまの天皇制が、日本の政治の安定のために、いかに重要な機能を果しているかをよく噛みしめて、それぞれの意見を開陳してもらわなくては、国民が大迷惑する。「天皇制」という「国体」は、ガッチリしておかなくてはいけない。



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gokkuri様 (板垣英憲)
2005-05-14 15:51:16
>国家存亡の一大事に皇室典範に縛られることはありません。退位しようと思えばできた。



それはできません。天皇陛下は自ら退位する自由はないのです。

敗戦によって、第3帝国が滅亡したドイツと違い、日本の場合、統治機構と法律体系は存続され、GHQに利用されました。

例えば、刑法・監獄法・民法・商法なども明治時代に制定されたものが現在も基本的に存続しています。(ただし、刑事訴訟法は新憲法のもとで根本的に改正されています)

日本国憲法制定にあたっては、明治憲法の改正規定に則ってつくられています。



参考まで、日本国憲法の上論を記しておきます。

[上論]

朕は、日本国民の総意に基づいて、新日本建設の礎が、定まるに至ったことを、深くよろこび、枢密顧問の諮詢及び帝国憲法第七十三條による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。



併せて以下、5月9日にエントリーした記述をお読み頂きたい。

http://blog.goo.ne.jp/itagaki-eiken/e/dc96d2c47348cdf4e4cef28b5d27f2a9



日本は、大東亜戦争に敗北し、無条件降伏し、武装解除し、そして主権をも失い、日本の最高指導者であった昭和天皇陛下の「処分」の権限は連合国最高司令部(GHQ)にあったのである。実際には、最高司令官のマッカーサー元帥の手中にあったのであり、昭和天皇陛下自らは、どうすることもできなかった。

 昭和天皇陛下の身の処し方としては、「服毒なり、拳銃を頭に当てるなり、切腹するなり」して「果てる」のは可能だったにしろ、「退位する」か、はたまたどこかの国に「亡命する」か、マッカーサー元帥に「命乞いする」かのいずれも決めることはできなかった。



戦前は「明治典範」により、戦後は「皇室典範」によって天皇陛下の生前退位は許されず、GHQ占領下では尚のこと、ご自分の意志で退位することのできないお立場なのです。



>本人もそれを検討し、皇族からも退位論があった。



 ですからブログに記したように、そうした議論を尽くした結果、結局は「明治典範」の例にならって、新憲法のもとで制定された「皇室典範」でも生前退位を許さない規定となったのです。それは何よりも、「天皇」が政争の具にされないよう、政治の混乱を招かないための深い配慮からたどり着いた結論なのです。



もちろん、皇室典範は、一つの法律ですから、今後、「女帝問題」を含めて、改正する場合には、「生前退位」についても、改正される余地はあります。あるいは、憲法改正の機会を捉えて、新憲法に明記する方法もあり得ます。

 しかし、「天皇」が政争の具にされたり、内乱を惹起する元凶にされたりしないよう、あらゆることを考慮し、十二分に検討する必要があります。



いずれにしても、天皇陛下には、退位したくても自ら退位する自由はないということです。敗戦後の占領下ではもちろんのこと、現在もありません。



日本は法治国家ですから、国民主権で制定された法律に違反する行為は、天皇陛下といえども取れません。また法治国家の国会議員が、法律を無視するような発言を軽々しくするものではありません。

 生前退位をすべきだったと主張するのであれば、まずは皇室典範を変えるべきだったと主張すべきであり、ならば「生前退位」できるように、皇室典範の改正を、議員立法で提案されてしかるべきです。

 菅前代表においては、議員歴も長く、昭和天皇陛下在位中から国会議員だったわけですから、そうした議員立法はいくらでも提案できたはずです。にも関わらず、菅前代表が、皇室典範の改正に動かれたという話は一度も聞いたことがありません。

 また岡田代表については、昭和天皇陛下が崩御された後に、議員に当選されているので、議員提案はできなかったとはいえ、東大法学部の学生時代以降、昭和天皇陛下の生前退位を促す政治活動をされたような形跡は少しもありません。

 今ごろになって中国・韓国が騒いでいるからといって、それに迎合するような形で生前退位を云々するというのは、いかにも軽薄というものです。

我田引水 (gokkuri)
2005-05-13 22:17:38
天皇が生前に退位することは、許されない(皇室典範4条)」だから退位できない?。国家存亡の一大事に皇室典範に縛られることはありません。退位しようと思えばできた。本人もそれを検討し、皇族からも退位論があった。あなたの思慮もたりません。

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