猛将・田母神空幕僚長は、「自衛隊を舐めんじゃない」と覚悟の「自爆テロ」敢行を試みたのか?

2008年11月02日 21時16分24秒 | 政治
◆浜田靖一防衛相が10月31日夜、麻生太郎首相の指示により、航空自衛隊のトップ・田母神俊雄空幕僚長の更迭を決めたのは、平和憲法を持つ現在の日本では、当たり前のことであった。というよりは、「遅い」と苦言を呈したい。自民・公明連立与党の自衛隊に対する「シビリアン・コントロール」は、緩み切っているからである。航空自衛隊のトップが、ホテル・マンション経営のアパグループが募集した懸賞論文に応募したのを政府が見逃していたこと自体、すでに自衛隊に対する「シビリアン・コントロール」の能力を低下させていることを証明している。
本来ならば、福田康夫政権が、田母神俊雄航空幕僚長の首にしておけばよかったのである。福田康夫前首相は、まったく間抜けな総理大臣であった。田母神空幕僚長が、今年4月18日の定例記者会見したなかで、名古屋高裁が「航空自衛隊のイラク空輸活動は違憲」と判決した影響について、「そんなの関係ねえ」と発言したときに、有無を言わせず首切り処分をしていなかったので、田母神空幕僚長を頭に上らせたと言ってもよい。私は、4月18日付けのブログで「福田康夫首相は、『そんなの関係ねえ』と発言した田母神俊雄航空幕僚長を即クビにせよ」と苦言を呈していた。しかし、福田首相も
防衛オタクの石破茂元防衛相も、事の重大性を認識せず、不問に付していた。その責任は、極めて重い。
◆旧大日本帝国の陸海軍の伝統を受け継ぐ、現在の自衛隊には、田母神空幕僚長のように「大東亜戦争は侵略戦争ではない」として「正当化」する歴史観を持つ者が少なくない。否、大多数と断言してもよい。これは、軍人の立場では、当然のことである。自国の軍隊がいかに敗北したとしても、その軍事行動をすべて否定したのでは、国防意欲は萎縮してしまい、身を挺して国を守ろうという固い意志を持つことはできないからである。軍隊、軍人というものは、そういう生き物である。だから、田母神空幕僚長のような自衛官が多数いたとしても不思議ではない。
◆むしろ問題なのは、獰猛な軍人集団を国会議員である政治家、そのなかでも最高司令官である首相、その下で指揮を取る防衛相が、「シビリアン・コントロール」の能力をよく発揮できるかどうかにある。責められるべきは、国会議員たる政治家である。
その政治家連中が、近頃、とみに勝手気ままに「国際貢献の名」の下に、自衛隊の海外派遣を拡大させようとしている。イラク派遣、インド洋での給油でさえ、違憲の疑いが濃厚なのに、今度は、アフガニスタンへの派遣まで検討しているのであるから、何をかいわんやである。そんなに海外派遣したければ、きちんと憲法を改正してから派遣すべきである。「シビリアン・コントロール」もできないにもかかわらず、海外で何をしでかすかわからない自衛隊をコントロールできるはずがないではないか。自衛官のなかには、海外派遣が本当に「国の防衛になるのか」と疑問を抱き、割り切れない気持ちで海外に連れていかれる者も多い。戦死でもしたら、泣くに泣けない思いである。
◆しかし、今回の田母神空幕僚長を皮肉な目で評価するなら、「自衛隊は、放任しておくと何をしでかすかわからない武力集団」であることを中国や韓国などに知らしめた効果は絶大であった。日本人以上に恐怖感を抱いているためである。日本軍の暴走という悪夢を忘れていない中国や韓国などは、海を渡って日本軍が再び侵略してくるかも知れないと恐れている。それだけに恐れを未だに抱かせ続けている大日本帝国の陸海軍の猛威は、それほどに凄かったということである。この意味で、日本は、アメリカやロシアとは違う「恐るべき軍事大国」なのである。そのことを猛将・田母神空幕僚長が、「自衛隊を舐めんじゃない」という思いで覚悟の「自爆テロ」敢行を試み、自衛隊の本当の怖さをよく知らしめてくれたとも言える。この点は、一応高く評価したい。
以下、4月18日付けのブログを再録しておこう。
◆航空自衛隊トップの田母神俊雄航空幕僚長が、4月18日の定例記者会見したなかで、名古屋高裁が「航空自衛隊のイラク空輸活動は違憲」と判決した影響について、「そんなの関係ねえ」と発言したという。自衛隊創設以来、自衛官のなかにある「本音」を吐露したものとはいえ、「憲法尊重擁護義務」を課せられている公務員(憲法第99条)という立場を無視するような軽率な発言としてその責任を追及せざるを得ない。しかも、「オンレコ」である公式の記者会見の場で「司法判断」に挑戦するかのような発言を聞き逃すこともできない。
防衛庁が防衛省に昇格したのに伴って自衛隊の地位が上がったかのような錯覚に自衛官が囚われているとしたなら、由々しき事態である。イージス艦「あたご」が漁船を沈没させ、父子2人の犠牲者を出したとき、国民世論からは、「海上自衛隊はそこのけ、そこのけイージス艦が通るというような傲慢な振る舞いをするようになったのか」と批判の声が上がったけれど、今度は、航空自衛隊トップが違憲判決を無視するような発言を堂々とするようになったのかという批判の声が、すでにあちこちから沸きあがってきている。
◆米国ブッシュ大統領が平成15年3月19日、イラク戦争を命令し、米英軍が空爆を開始してからもう5年を過ぎ、米兵だけでも4000人の戦死者を出しているというのに、未だに終戦に至っていない。イラク国内でのテロ事件は跡を立たず、かつてのベトナム以上に泥沼化している。イラク国内での濃淡はあるにしても、イラク全土が戦場であることには変わりはない。名古屋高裁は、この意味で航空自衛隊の空輸活動を「戦場での活動」と認定し、違憲と判じたのであろう。憲法裁判所の機能を与えられているにもかかわらず、とかく憲法判断を避けたがってきたのは、最高裁判所である。その下で、高裁や地裁が憲法判断を下すのは、裁判官にとって相当勇気のいることである。
◆自衛隊のイラク派遣については、当初から「憲法違反」の疑いが持たれてきた。それを小泉純一郎元首相は「戦闘地域」と「非戦闘地域」という奇妙奇天烈な用語を持ち出して、「非戦闘地域への派遣」を「合憲化」しようとしてきた。しかし、米国や英国、これに協力してきた多国籍軍は、「イラク全土」を対象に戦争を仕掛け、遂行してきたことは、明々白々であった。だから、小泉元首相の定義は、屁理屈の謗りは免れなかった。
名古屋高裁は、イラク戦争の実態を素直に直視して「違憲」と判じたにすぎなかったとも受け取れる。おそらく、現地に派遣されている空輸部隊員の多くは、どこから弾が飛んでくるかも知れないという恐怖感に苛まれながら、与えられた使命を果たそうと努めているはずである。それは何にも増して「ここは戦場だからだ」という認識を持っているからである。いまは撤退してきているけれど、サマワに派遣された陸上自衛隊員のなかには、戦争の恐怖感から自殺者や精神異常者が出ているという話もある。防衛省は、その詳細を明らかにしていない。
◆田母神俊雄航空幕僚長は、たとえ意に反する違憲判決が下されたとしても、司法が下した判決に対して、憲法尊重擁護義務者の一人として「敬意」を示すべきであった。それを敵意を剥き出しにして真っ向から反発するように「そんなの関係ねえ」と発言してしまった以上、公務員として不適格者として、今の地位に止まることは許されない。自衛隊最高指揮官である福田康夫首相は、シビリアンコントロールを正常に行使する立場から、田母神俊雄航空幕僚長を即クビにすべきである。

板垣英憲マスコミ事務所

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