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映画『東京家族』について

1946年の精神(15) 『花筐/HANAGATAMI』其の弐

2017年12月26日 | 映画『東京家族』
 
 劇場プログラムによると、『花筐/HANAGATAMI』の当初のオープニングは、公開された(私が観た)版とは違っていたそうだ。関係者試写の後にカットされたのは、次の場面である。



【――こんな絵を描いていた日本国の子どもが、歳老いてこのような映画を拵えました】








 確かに冒頭にこのシーンがあれば、唐突に思われた後半の「ディレクターズ・チェア」にすんなりと繋がる。
 これは、大林監督が子どもの頃、「母の手作りの慰問袋に入れて戦地の父に送った物を、敗戦後に父が大切に持ち帰ってくれた」絵なのである。








































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1946年の精神(14)

2017年12月24日 | 映画『東京家族』
 映画監督のマイケル・ムーア氏は時折、ハッとさせるツイートを出す。

 「1946年から48年、ドイツ,日本,イタリアのファシスト国家を破った後、ルーズベルト/トルーマン政権の官公吏がこれらの国々の新しい憲法を書くことを助け、その全てに女性のための平等な権利を含めた。これはまだ今日まで我々自身の合衆国憲法にはないものなのだ!」



 日本国憲法の「女性の権利」の条項、その確立のために尽力したのがベアテ・シロタ・ゴードンだと伝えられている。そしてそれはドイツ,イタリアでも同じ状況があり、その他多くの人類の理想の条項が各憲法には書き入れられている。








 『憲法成立の経緯と憲法上の諸問題』 入江俊郎論集
 これは厚い本なのでザッと読んだだけであるが、理想の現実化のために骨身を削る行政官の姿が記録されている。





 米国としては現実的な、来たるソ連との覇権争いの為の布石という思惑もあったであろう。しかしそれ以上に、世界に理想を広めたいという強い意志が感じられる。歴史に「もし」はない。けれどもあの時、米国の政権が民主党のルーズベルト/トルーマンでなく、共和党政権であったなら、三国の憲法はかなり違っていたと予想される。「政治は誰がやっても同じ」という言説があるが、それは全くの間違いなのだ



 
 















今日のマイケル・ムーア氏のリツイート。









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1946年の精神(13) 大林宣彦監督の新作

2017年12月20日 | 映画『東京家族』
 この12月に入ってから、『この空の花―長岡花火物語』(2011)と、『野のなななのか』(2014)の近作二本をDVDで、そして最新作の『花筐/HANAGATAMI』を劇場で観た。
 映画は交響曲のように重層的で、実際『花筐』は『野のなななのか』と同じように、音楽が絶え間なく映像を伴奏し、時に主題を奏でる。音楽が途切れるのは唯一、最後の爆撃のシーンだけだったのではないだろうか。
 大林監督の映画は、1993年の『水の旅人 侍KIDS』を劇場で観てあまりピンと来ず、以来意識的にではなく遠ざかっていた。だから、この三本の長い映画で、その時間と邂逅している。




























 日本に49発の模擬原爆が落とされていたことや、1945年9月に入っても終わらなかった戦闘など、一般には知られていない事実から『この空の花』と『野のなななのか』はそれぞれ始まる。この二作で重要な役割を担っているのが「山下清」だ。芦屋 雁之助が演ずるテレビドラマにもなった、日本各地でおむすびをもらいながら絵を描く、あの放浪の画家である。

http://www.dailymotion.com/video/x4jq8ke


 清も当時のほとんど全ての日本人が考えたように、戦争に負ければ「奴隷」になると思って必死で戦った。しかし不思議にも、敗戦しても、古代の戦争のようにそうはならなかった。それは何故かといえば、連合国は「枢軸国が画策するファシズムの拡張を止めるための正義の戦争」という、「理想の物語」のために戦ったからである。だから日独伊の三国は敗戦後、古代のように奴隷化されることなく、1946年から1948年にかけて、「理想の物語」に基づいた各国それぞれの憲法を制定することが許されたのだ。








































 “戦争が廊下の奥に立つてゐた” は、渡辺白泉の有名な俳句であるが、この『花筐/HANAGATAMI』は、 “銃後といふ不思議な町を丘で見た” のような、とても不思議な映画だった。










































『人情紙風船』

http://www.dailymotion.com/video/x3pgazq
























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1946年の精神(12)

2017年12月06日 | 映画『東京家族』
 社民党の福島みずほ副党首が、12月5日の集会で、予想される今後の「改憲の日程」について話した。以下はその要旨である。





自民党は先の衆院選で、以下の4点を公約した。

1.九条三項に自衛隊を明記する。
2.緊急事態への対応。
3.教育の無償化。
4.参議院の選挙区の合区解消の為の憲法改正。


首相は、
2014年 秘密保護法
2015年 戦争法(安保関連法)
2017年 共謀罪
の成立,施行をさせた。

戦争のできる国の工程表の総仕上げとして、翌2018年には九条改悪をやろうとしているのではないか。

首相は2020年には憲法九条を変えて施行すると言っている。ということは、予想される日程は次のようになる。


 2018年6月発議 8月国民投票。(一番速い案)
 改憲手続法は「発議後60日から180日の間に国民投票をしなければならない」、とある。首相は(国民への改憲案の周知や、法案への批判が)広がらないように、最短の60日でやるだろうと考えている。

 2019年7月の参院選に同日で国民投票。(2020年が期限だとすると、これがデッドライン)

 2018年9月の自民党総裁選を跨ぐ説もある。(発議をしたから、その後も総裁をやってくれ、という状況を作るため)


 首相は最速の案を考えているだろう。
 
 11月30日の参議院予算委員会
〔質問〕憲法九条三項に自衛隊を明記するということは、集団的自衛権の行使をする自衛隊か?

〔首相答弁〕「九条一項,二項の解釈を変えて限定的に集団的自衛権の行使を認めたので、(それは)そのままです。」と答えた。
 
 ①集団的自衛権を行使する自衛隊だと明言した。災害救助や国土防衛の為の自衛隊ではない、世界で戦争をする自衛隊。
 ②この答弁で変なのは、「憲法の解釈を変えて」と言ったことで、首相達は「1972年の砂川判決から集団的自衛権の行使は認められている」として、解釈は変えていないと言っていたのに、答弁のなかでは「解釈を変えて」と言っている。質問するたびに答弁が変わる。


 このように大変な状況である。首相がやろうとする改憲の発議を、人々の力で止めたい。国民投票は一週間前までCMは全く自由であるとか、最低得票数も書いていない等、国民投票法には欠陥がある。
 発議を止めるために一番有効なのは、「女の口コミ大作戦」だと思っている。ありとあらゆる場所で、三千万署名を含め、憲法九条を改悪させない声を大きく広げていきましょう。みんなの力で、女性の力で男性の力で憲法九条を変えさせないという声を、時間との闘いではあるが、「大きく大きく楽しく愉快にチャーミングに広げていけるようにやっていきたいと思っています。」
「一緒にがんばりましょう。ありがとうございます。」





























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1946年の精神(11)

2017年12月03日 | 映画『東京家族』



 



 この本の面白い所は、著者である丸山真男の文章を烈しく批判している E・サイデンステッカー の論文も、巻末に収録されていることだ。




 曰く、“彼の文体たるや不自然に力みかえり、重くるしくドイツ的な理論図式に押しつぶされて、およそユーモアを欠いている。”

 また曰く、“さまざまな観念がこんぐらかった彼の文章を見てゆくと、それが対象とする日本国民とその過去の倒錯についてのべるところよりも、むしろ、その中にあらわにされている「丸山教団」や日本知識人とその現在の倒錯を探るために読みたいという強い誘惑をおぼえる。”

 と散々な評価であるが、当ブログ「1946年の精神(4)(6)」で紹介した小論は、1964年に行われた講演を元に、翌年論文として発表したものなので、とてもわかりやすい。因みに「(4)」で作った年表の原文は、こんな感じになっている。









 これに若干『日本史年表増補版』(岩波書店)の情報を入れて構成した。新聞広告によると、この『日本史年表』の改訂版が出たようなので、アマゾンのサイトを見てみると、「お勧め商品」として『地球全史スーパー年表』(同)が表示され、面白そうなのでおもわずそちらを買ってしまった(笑)。これは2014年発行,2015年第3刷であるので、現在(一部地域で)大きな話題となっている「チバニアン」がまだ反映されていなかった。
































 

 「チバニアン」が正式登録されたら変更されるのであろう。こういうこともあるので、辞書や年表はいつも新しいものを使いたいものである。
 それはいいとして、この丸山論文『憲法第九条をめぐる若干の考察』には、もう少し読み込んでおきたい部分があるので、これからちょっと続けてみる。


 


 

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