先週お知らせしたように、顧客リレーションシップという無形資産を増減させる行動で、一番懸念しているのは顧客とのコミュニケーションです。
「こちらから電話をかける」vs「顧客からの電話に折り返すのみ」とありますが、現状は
「こちらからメールする」「顧客からのメールに返信するのみ」ではないでしょうか。
実際、顧問先の協力会社(顧問先にサービスを提供する側)の営業を観察していると、メール以外のコミュニケーションが非常に少ないことが分かりました。
メールでの問い合わせには、きちんと回答してきます。しかし、言葉を交わすのは、月次定例会時の30分程度です。
しかも、質問・提案・アドバイス等はほとんどなし。
来年度の投資に対する提案など、下調べしなければならないことはたくさんあるはずですが、なにも聞いてきません。
こちらが詳細を伝えるのを待っているようです。
この協力会社を見限り他のベンダーと商談を進めていたらどうするつもりなのでしょうか。
「営業のやるべきことが分かる」-第四段階「競合分析・選定基準の明確化」で書いたようにRFPが発行された時点で、すでに顧客の意中の企業は決まっているのです。
たしかに、メールの活用によりコミュニケーションの頻度や情報量は増えています。
しかし、顧客リレーションシップの「深化の度合い」はいかがでしょうか。
いまさらですが、メールには以下のようなメリット、デメリットがあります。
・メリット
- 自分の都合で送信・受信できる
- 相手も自分の都合で確認、返信できる
- 複数の相手、社内、社外にも同時に送信できる
- 添付機能やURLを使い、多くの情報を伝えられる
- 履歴が残せる
デメリット
- 感情や思いが伝わらない
- 相手がいつ確認するかわからない
- 複雑な内容や微妙なニュアンスを伝えるのが難しい
- 送信者の意図とは違った意味合いで受け取られることがある
- 誤った情報でも履歴として記録が残る
「履歴が残る」ことをメリットとしてあげましたが、状況によってはデメリットになります。
「非公式情報」はメールでは送れません。先週書いた、下記の質問に
メールで応える人はいないでしょう。
・中長期投資計画、本年度の投資計画は。
・現在の問題・課題は。
・顧客の事業は今後どのように展開していくのか。
・それが今後の購買にどう影響するか。
・競合他社はどのような製品戦略を持っているか
・競合他社の製品への満足度は。問題点は。
・我々の製品は顧客のニーズに十分応えているか
・我々の製品は顧客の課題・問題を解決しているか。
・意思決定プロセスは、キーパーソンはだれか。
・新任の事業部長の経歴や評判は。
・なぜ、A氏は我々の製品が嫌いなのか。
メールのデメリットの部分を面談等、他の方法で補っているか、
顧客の期待に本当に答えているか日々、考えて行動する必要があります。
メールで事が順調に進んでいると思わないことが大切です。
コンプレックスセールスに必須の上記情報を得るためには、
相互依存関係の深化が必須です。
その上で適切なコミュニケーション手段の選択が必要です。
相互依存関係深化のためには、下記の3点を日々、顧みることが肝要です。
・どの顧客と接点があるかではなく、個々の顧客からどう思われているか。
「担当エンジニアも課長も部長も事業部長もその上の役員も社長も知っている」ことはすばらしいことですが、
その人たちにどう思われているか考えて見ましょう。「頼りになる営業」と思われているでしょうか。
・売り手と買い手は、どれくらい依存しあっているか、あるいは、依存しあっていると感じているか。
あなたが依存していなければ顧客も依存していないかもしれません。
いやいや「彼女は俺にべたぼれ」とうぬぼれて振られたことはありませんか。
自分の製品がないと顧客がどれだけ困るか具体的に考えてみましょう。顧客の選択肢は?
・売り手が買い手個人をどれだけ知っているか、買い手の心理に配慮できているか。
手始めに『理詰めの営業』の「関係顧客分析」を埋めてみましょう。
この段階でつまずいているようでは、顧客リレーションシップの構築がまだできていないというしかないです。
深いリレーションシップを築けるかどうかは売り手次第です。
営業だけでなく、開発、製造、サービスのエンジニアにも参加してもらい、複数の人的な依存関係の構築、マルチチャネルの情報収集を行いましょう。
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営業に疲れたら武蔵野散歩(『武蔵野』リイド社、斎藤潤一郎著)>