
(C)業田良家/小学館/2009『空気人形』製作委員会
今回の記事は『空気人形』(2009年、監督:是枝裕和)です。
ひょんなことから心を持ってしまった“空気人形”が様々な出会いを通し生まれる感情の移ろいと、現代人が抱える心の空虚感を切なくも繊細に描いたラブ・ファンタジー。
主演のペ・ドゥナさんの驚くほど人形で、だけど誰よりも感情豊かに見えてしまう奇跡の演技はとにかく必見!
■内容紹介 ※goo映画より
古びたアパートで持ち主の秀雄と暮らす空気人形は、ある朝、本来は持ってはいけない「心」を持ってしまう。
彼女は秀雄が仕事に出かけるといそいそと身支度を整え、一人で街へと歩き出す。
メイド服を着て、おぼつかない足取りで街に出た彼女は、いろいろな人に出会っていく。
ある日、レンタルビデオ店で働く純一と知り合い、そこでアルバイトをすることになる。
ひそかに純一に思いを寄せる彼女だったが……。
私は「心」を持ってしまいました。
持ってはいけない「心」を持ってしまいました。
あなたの息で、私の カラダを 満たして…


■感想
映画『空気人形』を観て来ました。
最近は本当に良く邦画を観に行く。
第62回カンヌ国際映画祭の「ある視点部門」に出品された本作、内容も深く映像美溢れる映画でした。
⇒「人間とは何か」、都会の孤独描いた是枝監督の『空気人形』 カンヌで上映(AFPフォトニュース)
この映画の主人公は心を持ってしまった空気人形、言ってみればダッチワイフです。
この主人公だからというわけではないですが、一部刺激の強めの性的表現も含まれています。
(映画のレイティングはR15+で中学生以下は観れません)
だからと言って、やらしい映画というわけでは全くなく、むしろ詩的な切ない映画でした。
また、映像もとても美しかった。
舞台は東京なんですが、こんなにも情緒溢れ、きれいに東京を撮った映画は多くはない。
この映画で何よりも凄かったのは、主演のペ・ドゥナさんの演技です。
心を持った人形という難しい役どころを奇跡的なほど見事に演じています。
彼女、驚くほどリアルな人形に見えてしまいます。
けれど好奇心と疑問に溢れるその表情と、初めての感情に戸惑う純粋な心の演技はびっくりするぐらい自然で上手い。
また惜しげもなくヌードを披露するかなり大胆なシーンもけっこうある。
初めから終わりまで彼女の存在感でこの映画は溢れています。
純粋で感情豊かな彼女と対照的に描かれているのが、彼女が出会った現代を生きる人たちです。
彼らは何かしら心に空しさを隠しながら生きている。
その空虚感は誰にも明かすことのできない孤独。
本来空っぽなはずの空気人形の彼女と、中身があるはずの彼ら。
対照的なようでいて実は同じなのではないだろうか。
そんな彼らが織り成すドラマは全体に切ない感じが漂っていて何ともいえない。
(ただ僕が“切なさ”と思っている感情とはある種、何かが違う印象がある)
後半で愛する人と分かち合おうとして彼女がとる行動はとてつもない過ちを含む。
傍目から見るとホラーなシーンにもなり得るんだけれど、そこには純粋な気持ちしかなくて、あんまりにも悲しすぎる。
ラストの彼女の吐息は、どことなく官能的で、だけれども悲しみと切なさを含んでいます。
出演時間としては短いのですが、元国語教師の老人(高橋昌也)と人形職人(オダギリジョー)も素敵でした。
心優しく自然な演技は大好きです。
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題名 | 空気人形 |
製作年/製作国 | 2009年/日本 |
ジャンル | ドラマ/ロマンス/エロティック |
監督 | 是枝裕和 |
出演者 | ペ・ドゥナ ARATA 板尾創路 高橋昌也 余貴美子 岩松了 星野真里 丸山智己 奈良木未羽 柄本佑 寺島進 山中崇 ペ・ジョンミョン 桜井聖 オダギリジョー 富司純子、他 |
メモ・特記 | R15+指定 脚本:是枝裕和 撮影:リー・ピンビン 原作:『空気人形』(小学館刊『ゴーダ哲学堂 空気人形』所収) |
おすすめ度 | ★★★★ |
■Link
+⇒公式HP(Japanese)
+⇒空気人形 - goo 映画
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