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夜市/恒川光太郎(小説)

2008-08-01 00:19:11 | 読書
今回の記事は『夜市』(恒川光太郎、角川ホラー文庫)です。
表題作の「夜市」は第12回日本ホラー小説大賞受賞作品です。
この人の作風、好きだな。


■内容紹介 ※裏表紙より
妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。
ここでは望むものが何でも手に入る。
小学生の時に夜市に迷い込んだ祐司は、“あるもの”と引き換えに野球の才能を買った。
野球部のヒーローとして成長した祐司だったが、その日以来、彼はずっと罪悪感を抱き続けていた。
そして今夜、祐司はある決意を胸に、再び夜市を訪れた――。

奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング! 魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作「夜市」ほか、「風の古道」を収録。

■感想
この「夜市」は、ハードカバーで発売された当時にとある雑誌で紹介されていて、その記事を読んだ時に「すごく面白そうだ」と思った小説です。
何というか、この小説は絶対好きだ、と理由もなく感じていました。
文庫派の僕は結局、文庫化まで待ってしまいましたが。
で、読んでみて改めて思いました。
あの時の直感に間違いはなかったと。

『夜市』には、表題作の「夜市」と「風の古道」の2作品が収録されています。
どちらもすごく面白い。
ジャンルはホラーとなっていますが決して怖くはありません。
むしろ出てくる化け物たちですら、どこか憎めない魅力があります。
そして何といっても読後の余韻がすごい!
どこか切なく、どこか懐かしく。
静かな感動がいつまでも胸に残ります。

以下、個別の感想です。

■夜市
学校蝙蝠、永久放浪者。
出だしから独特なセンスの言葉が綴られます。
夜市には化け物たちがたくさん出てくるのですが、さも普通の日常を描いているかのような文章で物語りは進行します。
これが何とも不思議な感じ。
夜市の不思議な世界が祐司と同級生のいずみの視点で描かれていく前半。
祐司には秘密があり、ミステリな雰囲気も楽しめます。
そして後半。思いもしない展開になっています。
前半と後半では物語は別物と言ってもいいぐらいの仕掛けが施されています。
切ないけれど優しさに満ちた結末には感動しました。

■風の古道
実は「夜市」より、こちらの作品の方が僕は好きです。
神や物の怪の類が通るという古道。そこに迷い込んだ2人の男の子と、古道に住む青年との出会いの物語。
『千と千尋の神隠し』にも勝るとも劣らない不思議な世界観が何とも味があります。
子供の頃、遊びに夢中になってすっかり日が暮れてしまった。
こんな時間まで家に帰らなかったことはない。
その時に感じた不安な気持ち。だけどどこかドキドキと興奮もしている。
そんな懐かしい気持ちがこの作品にはあったように思います。
加えて、命について考えさせられる作品でもありました。穏やかに優しく。
古道の青年レンの魅力の大きさも物語をより面白くしています。
「風の古道」も切ないけれど優しさに溢れた作品です。

静かな感動の余韻に浸れる『夜市』、機会があったらぜひ読んでみてください。
オススメです。


書名:夜市
著者:恒川光太郎
ジャンル:小説(ホラー)
メモ:第12回日本ホラー小説大賞(2005年)受賞作
おすすめ度★★★★★


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (Matthew)
2008-08-01 15:08:26
ichiーkaさんのレビューを読んで、読んでみたくなりました。
返信する
Matthewさんへ (ichi-ka)
2008-08-02 08:38:13
コメントありがとうございます。
とても優しいホラーなのでオススメです。
返信する
ウマすぎ (萩 ますび)
2008-08-03 01:50:34
こどもの頃
遅くまで遊んでしまって
すっかり暗くなって不安になる気持ちって
表現、よく理解できます
なんでそんなに表現上手いの?
またまた読みたくなります
返信する
萩 ますびさんへ (ichi-ka)
2008-08-03 22:33:21
褒めてくれてありがとうございます。
こういう気持ちって誰にでもありますよね。僕なんていまだに夕暮れ時になるとドキドキしたり、切なくなったりと子供っぽくて困ります。
表現上手くなったのかな? 何だか嬉しいです。
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