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馬鹿は電解鉄を語るな 軍装マニアHPの悪影響

2011年04月13日 | 日本刀に関する虚偽を正す 軍刀HP批判

 電解鉄という言葉は日本刀愛好家の間では有名だ。しかし日本刀における電解鉄について、正しい意味を知る者は少ないようだ。
 例えばこんな素朴な疑問がある。
 教えてgoo 質問番号:4537403 http://oshiete.goo.ne.jp/qa/4537403.htmlより

 「こんにちわ、
  日本刀素材についての質問ですが
  電解鉄を使った日本刀は、試し切りなどに
  耐えられないのでしょうか?
  現代刀はみな電解鉄を使用して作刀されているのでしょうか?
  玉がねを使ったものより品質は落ちるのでしょうか?
  電解鉄とは、どのようなものなのでしょうか?

  詳しい方おねがいします。

  質問番号:4537403」

 これに対する回答は引用URLを参照して頂きたいが、全て一般論であり、日本刀における電解鉄とは何かの回答にはなっていない。正解を言う前にJIS規格における電解鉄の定義を以下に示しておく。

 JIS規格番号:1101

 用語: 電解鉄

 定義:鉄塩水溶液の電解によって得られる純鉄。
    通常、含有される不純物元素は炭素0.005%以下、けい素0.005%以下、マンガン    0.005%以下、りん0.004%以下、硫黄0.005%以下である。
    対応英語(参考):electrolytic iron

 ここで言われている純鉄とは、

  JIS規格番号:1100

  用語: 純鉄

  定義:炭素その他の不純物元素が非常に少ない鉄。不純物元素の限界についての明     確な区分はないが、炭素含有量0.02%程度まで純鉄と称されている。
     電解鉄、アームコ鉄、カーボニル鉄、還元鉄は、純鉄として取り扱われてい     る。
     対応英語(参考):pure iron

 こうした定義から上掲URLでは回答者NO.1が、

 「電解鉄は純度が高い鉄です。純度が高いですから硬くない。刀は作るのは無理だ」

 NO.2が、

 「自分には刀剣趣味は無いので、刀剣の品質というモノが何を指すのか判りません  が、材質から考えますと・・・純鉄のヘナヘナ=腰が無いという性質では、合金鋼史 上屈指の高級鋼である玉鋼の足元にも及ばないでしょう。」

と回答し、更に次のような注目すべき指摘をしている。

 「尚、純鉄は磁気抵抗(磁束が磁性体内を通る時の抵抗)が極端に小さく、永久磁石 モータのバックヨーク(磁石が固定されている部分)に使うと永久磁石の磁力の経  時劣化(減磁)を軽くする効果があるなど、純鉄独特の『使い方』があります。刀  剣としては役立たずでも、純鉄自体が悪いワケではありません。」

 かかる性質がある故に、日本刀制作においては表現の自由度が飛躍的に拡大し、所謂電解鉄を使う者が後を絶たない。要するに電気抵抗が低い訳だから、熱伝導性も高く、熱によって鉄を操作する刀作りには向いているのである。

 これらに対してベストアンサーに選ばれたNO.3の馬鹿が得意げに薀蓄を披露し、

 「問題なのは、日本刀に関する虚構が世間の隅々に浸透していることです。刀剣界の 常識は殆ど嘘だと言うことです。洋鋼は不純で和鋼(玉鋼)が最も優れているとか、日 本刀は玉鋼で造られる言うのが虚構の典型です。ここでは紙面の都合で詳しいことが 書けませんが、下記のサイトをご紹介しますのでご覧下さい。」

 と言って例の軍装品マニアのHPを宣伝している。
 馬鹿は死ななきゃ治らないと言うが、日本刀の何たるかを知らない者が鉄を語ると質問者やNO.3や軍装品マニアのようになる。
 日本刀において、斬るとは殺すということだ。こういう馬鹿共は殺すということの何たるかも判っていない。
 人殺しに必要なのは武器ではない。殺すという強い意志だ。
 命が懸かった戦いには強い精神力が必要だが、道具に頼っていてはその強い精神力が育たない。戦い抜く強い精神力が先ずあり、武器は二の次だ。勿論実際に殺してしまっては殺人者になってしまう。だが、殺すという強い意志で向かってくる敵を撃退するには、それ以上の強い精神力がなければならないのである。そういう精神力は、身に寸鉄も帯びず、素手で人を撲殺できるだけの体力と気力があって始めて成り立つ。先ずは己の心身が鍛えられていなければならないのである。刀の切れ味に拘るのは腰抜けの証拠である。

 今日は結論だけ言っておくが、日本刀制作で重宝されている電解鉄とは、日本鋼管が薬師寺の修理に使う釘の素材として開発した電解鉄、商品名NKK-SLCM1990のことである。これは白鷹幸伯の依頼で作られた。
 
 白鷹の話。
 「古代の釘は、砂鉄を原料に、たたらという技法でつくられ、純度は99%以上あり、錆びにくい。しかし、高炉で大量生産される現代鉄には不純物が多く、腐食とともに 釘の機能を失ってしまう。また、炭素割合の加減で、硬すぎるともろく、軟らかすぎると木に打ち込めない。
  釘に適した高純度鉄をどうやって入手しようかと頭を抱えていたところ、大手鉄鋼メーカーNKK(現JFE)が、貴重な文化遺産を守る有意義な事業だとして、炭素の含有率が0.1%の古代鉄に近い高純度鉄(SLCM材)を製造し、採算度外視で用意してくれた。」http://irc.iyobank.co.jp/topics/close-up/no084.htm

 玉鋼に電解鉄の扱い易さが加わった鋼である。







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