茨戸もようやく初夏を迎えた頃でしょうか。最近僕は草花の放つ花粉にやられて酷い迷惑を被っていますが、何とかボートは漕ぐことが出来ています。
ブログでは散々述べてきたと思いますが、いつまでも忘れることの出来ない思い出があります。それは全力でA-Finalを目指した日、遠いようで未だに鮮明に覚えている2年前の新人戦の記憶です。その当時の想いは2年前の自分がブログに書いているので是非そちらを参照して頂きたいのですが、とにかくあのレースは僕の人生の中で最も全力を振り絞ったレースでした。あそこまで熱く、最後まで諦めずに漕いだ経験は後にも先にもあのレースだけです。
当時の僕は自分が一番になることが全てでした。どうすれば自分が強くなれるのか、どうすれば自分がタイトルを取ることが出来るのか。そういったことを考えながら練習すればするほどに伸びるエルゴタイムは僕にとって部活動を続ける大きな原動力でした。もし仮に僕よりもエルゴが回る人間が沢山いて、対校艇に乗ることが出来ないとなれば僕の部活に対するやる気は大きく変わっていたかも知れません。しかし、こういう言い方が正しいかどうかは分かりませんが、「幸い」なことに僕は選考をなんとかくぐり抜けて2年目からインカレに出場し、3年目では対校に乗ることが出来ました。4年目の自分もこのまま順調に競技を続けているだろう。そう思っていました。
ただ、そういったモチベーションでボート部の活動を続けることには頭打ちが来るということを身をもって学びました。
「こんなキツいこと、やりたくない。」
3年目の冬、初めてモチベーションに頭打ちが見えてきました。何故か練習も上手くなるためにやろうではなく、練習があるからやらなきゃいけない、部活があるから行かなきゃ行けない、主将だからサボるわけにはいかない。こういった考えに徐々に変化していきました。ボートに全力で集中できていた自分はどこかへ行き、何故この部活を続けているのか、何のために勝利を目指すのか。そういった果てしのない問いを延々と繰り返す日々が続きました。一番苦しかったのは、そうやって自分のモチベーションが安定しないにもかかわらず、周りに対しては練習にちゃんと来いよとか、遅刻するなよとか偉そうに注意していたことです。自分の言葉に全く重みが乗っていないことには薄々気がついてました。主将だから、自分がサボったらこの部活が終わるから、そんな受け身な考え方の自分に段々自信が持てなくなりました。
「自分が主将じゃなくても良いよな。」
何度もそう考えました。
部活動に対して目的意識がちゃんとある人がいたらそれは素晴らしいことだと思います。しかし、多くの部員は目的など何も考えずにただ新歓で釣られて入った無垢な人間ばかりなのです。僕もその一人です。全員が目的意識を持って部活動の理念を理解し、それに向かって突き進む素晴らしい組織であればどれほど美しいことだろうと想像しますが、現実的にはそれはかなり困難なことです。それでも主将だからこそ目的をハッキリと持っているべきであるという固定観念が自分の思考を更に縛り付けていきました。
僕は目的云々を考え続けていく中で「目的を持っていないから勝ちにこだわることが出来ない」、「目的がないから4年目まで続けることが出来ない」、そう考えていたのですがどうやらそれは少し早とちりだったようです。
成功を成し遂げる人間は、初めから天啓の様なものを受けてその仕事に意義を感じたり、目的を持って取り組んでいたりする人もいるようですが、多くの場合、自分が目的を持って仕事に取り組めるようになるまでに長い年月が掛かるといいます。つまり、部活動を4年間続けていく中でボート競技を続ける意味を本当に見いだせる人間などそう多くはないということが考えられます。ほとんどの場合、部活での楽しかった思い出や悔しい思い出などを残して意味や目的などは後付けにして卒部することでしょう。
目的を明確にしてから部活動に専念するにはあまりにも時間が掛かりすぎます。特に僕のような引退間際の選手なら尚更でしょう。
目的を見出すことよりもまず大切なことがあります。
それは脇目も振らずに自分が興味を持ったことに打ち込むこと。
継続していれば、いつかふと気がつく時が来ると思います。「何故自分はここまで続けて来れているのだろう。」「なぜ自分はここまで頑張ることが出来ているのだろう。」そんな時に頭に思い浮かぶ顔があると思います。苦しいエルゴを共に漕ぎきった仲間、お腹が空いたときにエッセンを食べさせてくれるスタッフ、どんなときも諦めずにコールしてくれるCOX、逆にメシを上手そうに食べる漕手や、コールに反応してくれる頼もしい漕手など。そういった顔が思い浮かぶときに初めて、「誰かの役に立ちたい」と思えるようになります。人の役に立ちたいと思ったとき初めて目的意識が芽生えます。逆に言うと、自分のためだけに頑張ってもボート競技を長く続けることは到底無理だと思います。
僕は目的云々で悩むことはもう辞めました。まだまだ僕は自分自身を向上させるために継続して努力する段階にいると思っています。より具体的かつ明確に誰かの役に立ちたいと思うフェーズはいずれやってくることでしょう。そう楽観的に考えることで今は切り替えることが出来ています。
そして、キツいことをやりたくないときに少しだけ意識することがあります。それは「結果を出すまでは」諦めないでやり続けようということです。諦めずにやり抜いた結果タイトルを手にした瞬間を想像しているから僕はいままでボートを続けてくることが出来ました。自分の可能性を信じて勝ち獲った瞬間は自分にとっても最高の瞬間ですが、出場した選手だけでなく、この部活動のために全力を注いでくれている漕手やCOX、スタッフ、コーチ、監督すべての人間の努力が報われる瞬間でもあります。だから諦めるわけにはいきません。
東北戦、インカレまで残された日数は僅かです。その中でも常に自分自身が、そして部員全員が部活動に打ち込むことの出来る環境を考えることにしています。何と言ってもシーズン入ってからの課題は、怪我と学業・バイトとの両立です。ボート部にいる時間は一日の活動時間の3分の1にすぎず、残りの3分の2は別なことをしています。だからこそ、モチベーションの波や生活習慣の乱れと要ったこなども常に課題になります。本人が悪いと言いたいわけではないです。どうすれば全員がボートに集中出来る環境を作る事が出来るのか全員で考える必要があります。
僕に出来ることは限られていますが、できる限りモチベーションを落とさないように沢山同期や後輩とコミュニケーションを取っていくことが自分の仕事だと思っています。それは冬の間もそうでしたし、今後も変わることはありません。
新人戦のあの日のレース以上に、自分の可能性を信じて全てを出し切り、勝利したい。
9月8日、全員「化ける」ぞ。
今後とも応援のほど宜しくお願いします。